「日本は米国にどんどん自動車を送り込んでくるのに、日本市場にはアメリカ車を締め出す構造がある。これは見直しを求めなければいけない。」
と言ったのは1980年代の政治家先生ではない。
先週就任したばかりのトランプ大統領だ。
日本が自国で製造した自動車をわんさか米国に輸出してくるのに、アメ車は日本でちっとも売れない。
日本市場には何らかの構造上の欠陥や米国に対する差別思考がありアメ車を締め出しているに違いないという主張だ。
そのまま聞いているとまるでタイムマシンで過去にタイムスリップしてしまったような錯覚に陥る。
1980年代に問題となった自動車の貿易摩擦を彷彿させる発言だからだ。
そもそもアメ車の売上が日本で振るわないのは日本のユーザーの心を捉える製品を出していないから。
それに尽きる。
米国で売れているからと言って日本へもってきてそのまま売れるわけはなく、そのことについては米国メーカーも十分に経験済みだ。
代表的なのがGMのサターン。
日本車に対抗した独特のデザインとアメ車にしては良好な燃費で1980年代なかば米国内では大ヒット。
それをそのまま日本へ持ち込んだら売れると思ったジェネラルモータース社の目論見は見事にはずれた。
これは新宿本店のコンセプトをそのまま持ち込んだら成功間違いなしと判断してものの見事に大阪で失敗した三越伊勢丹とビジネスモデルと極めて似ている。
日本の消費者が求めるもの。
日本の消費者が持つブランド志向。
イメージ戦略。
どれもこれも成功体験が失敗を導いた決定的な事例なのだ。
かといって外車が売れないかと言えばそんなことはなくヨーロッパ車は街の至る所見かけることができる。
ドイツのメルセデス、BMWは高級車の定番で、排ガスデータ改ざんがあったフォルクスワーゲンも堅調だ。
日産のおかげかも知れないがルノーもよく見るし、フィアットやアウディも少なくない。
外車で見かけないのはアメ車と韓国車ぐらいだ。
韓国車は在日でもない限り誰も買わないがアメ車が売れないのは別の意味があるのだろう。
多分、自動車メーカーもよく知っているはずだ。
ところで、アメ車でも飛ぶように売れているブランドがある。
この点、トランプ大統領は知ってか知らずか言及しなかった。
アメ車ブランド「ハーレーダビットソン」は二輪車の王者だ。
日本国内市場に於いて大型排気量の自動二輪の登録はハーレーがトップ。
私の記憶に間違いが有るかもしれないが、同等排気量の二輪車ではホンダもヤマハも抑えての一位だ。
ハーレーダビットソンは日本の市場にしっかりブランドを根付かせ、価値観を顧客と共有することに成功している。
大型排気量のバイクに乗りたい人はナチスのBMWよりもイージーライダーの自由なハーレーを選ぶ。
アメ車と日本人。
何も血管浮き立たせてぎゃあぎゃあ騒ぐ内容ではない。
イギリスの経済アナリストが「中国は19世紀型国家です」と言っていたが、アメリカのトランプ大統領は20世紀の人なのかも知れない。
21世紀の日本の周りは時代遅れな者たちばかりだ。
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