この春先にデジタル一眼のニコンのレンズが故障しているのに気がついた。
18-200mmのレンズなのだが、望遠側でピントが合わなくなってしまったのだ。
「おおお、えらいこっちゃ」
18-200mmのレンズは私が購入した5年ほど前は超人気レンズでなかなか入手困難だった。
当時私はデジイチを持っておらず、機会があったら買おうかな、と思っていたところだったのだが、ある時、近所のカメラ屋さんに寄って何気なく、
「ニコンの18-200mmのズームレンズって、あります?」
と訊いてみた。
するとカメラ屋さんの店長は麻薬の売人のように声を潜め、
「実は.......1本あります。」
と私の耳元でささやいたのであった。
インターネットでプレミアが付いているくらいに人気のレンズだったし、カカクコムの書き込みには予約してから手に入れるまで「3ヶ月はかかるレンズ」とも聞いていたので、
「うううううう.....それ、買います」
と、衝動買いしてしまったのであった。
清水の舞台から飛び降りるような間隔で購入したので、カメラ本体は当時最安のD40という機種だった。
ボディは標準レンズキットで18-200mmのズームレンズの半額なのであった。
その思い出のズームレンズが故障して修理をしなければならなくなったのだったが、修理にいくらかかるのかネットで調べると、どうも2万円ほどかかるらしい。
正直、ショックなのであった。
2万円なら、新しいコンデジが買えるような金額ではないか。
結局、何ヶ月間か修理することをためらい続け、その間、コンデジで対応していたのであったが、どうしてもコンデジでは対応できない写真があり、思い切って修理することにして、梅田にあるニコンの修理センターに持ち込んだのであった。
「すんません。これ、修理して欲しいんですけど」
「はい....ああ、な、緩んでますよね。ここが」
なんと、レンズの先端部分が緩んでビヨヨヨ~ンとバネみたいなものが飛び出しているのだ。
「おおお!ここまで、ボロボロになっとったんか」
と心のなかで叫んだ。
「2万円で済まんかも」
と続けて叫んだ。
「このゴムも、劣化していますね。交換したほうがいいですね。これ、500円ほどしますがいいですか。」
「......はい。」
そうか、2万円のうちの500円。大した影響ではないし、修理するなら徹底してもらって。
「悪いところはよろしくお願いします。」
「一時間ほどかかりますが、どうしますか。」
「ちょっと近くで所用を済ませて戻ってきます」
「ではお預かりしますね」
梅田界隈でウロウロしてもどってきた。支払いはクレジットカードを使用するつもりだった。
「修理できてますよ。ここ、交換しましたし、ご確認ください。」
「はい。」
「よろしいですか。」
「どうもありがとうございます。お幾らですか?」
「部品代ともで....12◯◯円です。」
「?」
「12◯◯円です。」
「そんなに、安いんですか?」
この瞬間私は「ニコンにしてよかった!」と心のなかで叫んだのであった。
簡単な修理は2万円もしなかったのであった。
たぶん、レンズにひびが入ったり、カビが生えたりした時は2万円以上の修理費がかかるのだろうが、今回の故障は超単純なものであったらしいのだ。
それにしても作業費も含めて1300円以下とは驚いた。
ビデオデッキの簡単なゴム部品の交換だけで技術料8000円を請求された大手家電S社とはエライ違いだと思った。
やはり本業に徹底し、創業者の意に反して保険業や銀行業に手を出すようなところの製品はいかがなものかとも思った。
やはり、帝国海軍の潜望鏡の製作以来、光学製品一筋のニコンはなかなか優れた、だてに世界一のカメラメーカーではなかったと感動することしきりなのであった。
同時に、修理が1200円ちょっとで済んだことは、嫁さんには内緒にしておこうとも思った私なのであった。
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