週刊文春にここ4週間ほど連載されている横田増生の「ユニクロ潜入記」が面白い。
ユニクロの内幕を見るということが面白いのではない。
業界でトップになる企業はどのようなマネジメントをしていて、どのような働き方を求めるのかということが面白いのだ。
とりわけユニクロのような急成長をした企業の労働条件はどれほどキツイものなのか。
電通がブラック企業だったらユニクロはどうなのか。
噂と現実を比較することができるのでとっても興味を持って読むことができる。
感謝祭での超激務。
本業の学校を休まざるを得なくなるアルバイト学生の勝手に決められるタイムテーブル。
超複雑で緊張を強いられるレジ入力。
外国人従業員は戦力なのか否か。
などなど。
潜入を試みたレポーターで筆者の横田増生は池袋のビックロで勤務中に文春のライターであることがバレてしまいクビになるのだが、そもそもそういうところにもユニクロの企業としての性格が現れていて面白い。
アルバイト身分の筆者が兼業でライターをしているからと言って咎められる筋合いは無いわけだし、内輪の事情でも知られて困るようなことは正直言って書かれていない。
しかし会社の内情を良くにしろ悪くにしろ公に向かって書いたもの「クビ」にするというところが会社の個性を表している。
こういうことは業務規約に書かれていないルールなのだろうと思った。
会社の内情を少しでも書かれると癪にさわるのか、恥ずかしいのか。
他人はなんとも思わなくても自分自身にとっては恥ずかしいことなのか。
ユニクロ社内では「よくぞ書いてくれました」という意見もあるかもしれない。
なんとなく私の大好きな「ジョージ・ブッシュはバカ野郎だー、とホワイトハウス前で叫んだ男が国家機密漏洩材で逮捕された」というアメリカンジョークになんとなく通じるものがある。
そういうバカバカしさと、やはり巨大企業の気持ち悪さとが相交えて記事の内容以上にユニクロの嫌らしさを感じてしまう。
それが今回の記事の魅力なのだろう。
しかし、急成長する会社というのは激務は当たり前なんだなとつくづく感じる。
学生時代、就職活動をしているといろんな有名企業の色んな噂が入ってきたものだ。
「神戸の○○○○というアパレル会社は自宅に帰れないくらい激務が続く」
「塗料大手の○○ペイントは最初の数年は大卒社員にドラム缶転がしの工場勤務をさせる」
「通販○○○○○は実はねずみ講」
などという今で言うブラック企業の噂だった。
今回の記事はユニクロの噂の事実の部分とそうでない部分が克明に描かれているが、読んだ印象は特別なものではなく、さもありなんというのが私を含めた多くの人の感想だろう。
ユニクロも他の急成長大企業に見られる「創業者の顔イコール会社」というイメージが先行するので柳井社長とユニクロのロゴが一体となり、超富豪が自分の会社の底辺の社員に何をどうさせているのか、という視点で見てしまう。
それが記事のユニクロに及ぼすマイナス要素になる影響力なのかもわからないと思った。
話は違うが実は私はユニクロの運命はダイエーとほぼイコールではないかと密かに感じている。
今回の記事とその流れは儚くもその予想をバックアップする要素がいくつもあり、それが最も面白い部分でもあった。
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