是枝裕和監督の「万引き家族」がカンヌ映画祭で最高賞を受賞したというニュースは大いなる喜びだ。
日本の映画ファンにとっては宮﨑駿がアカデミー長編アニメーション賞を受賞して以来のビッグニュースに違いない。
そこで思い出したのはいつ頃から日本映画に魅力が復活したのか、ということだ。
映画好きの私だが、一時期日本映画をまったく見ない時期があった。
なぜなら、めちゃくちゃつまらなかったからだ。
それは1970年代から1980年代。
私は中学生、高校生、大学生の年代だった。
その頃、ティーンの私には日本映画には正直言って魅力ある作品がほとんど無かった。
もちろん若かった私が大作主義、世界的な俳優が出ている米国映画へ憧れていたということもあったのだが、日本映画にお粗末なものが少なくなく、見たものほとんどが期待を裏切る内容であったことが大きく影響している。
例えば1977年のスターウォーズの大ヒットを背景に制作された日本のSF映画はどれもこれも拍子抜けするような代物だった。
東宝映画の「惑星大戦争」。
森田健作や浅野ゆう子が出演していた作品で面白かったのはタイトルの出し方だけ。
話題になった宇宙船轟天も糸で吊っている模型まるわかりのチャッチさでちっとも凄いと思えず期待していだけ大いに失望したものだ。
東宝がだめらな東映があるさ。
で、期待して見た「宇宙からのメッセージ」はもっとつまらなかった。
ウェディングドレスを着た志穂美悦子。
帆船型の宇宙船。
日本映画なのにTVシリーズ「コンバット」のビック・モローが主演しているし、特撮もそれなりに力が入っていて当時相当話題になっていただけに失望感も半端ではなかった。
SFが駄目なら他の映画ということで、大好きな高倉健が出演していたので観に行った「南極物語」は人の映画ではなく犬の映画だった。
オーロラを見て犬が「くーーーーん」と鳴くシーンに何で感動しなければならないのか。
腹が立った。
最後にタロとジロが救出されても感動はなかった。
学校で見た「太陽の子 てだのふぁ」は社会問題を扱っていたからか娯楽を求める子供にとっては面白くない。
それでは時代劇をばと観に行った「柳生一族の陰謀」はそこそこ面白かったものの、それに刺激されて登場した「赤穂城断絶」、黒澤明の「影武者」「乱」「夢」は作っている人や出ている役者が一流だけに、その内容は惨劇以外のなにものでもなく、これをきっかけに私は日本映画をほとんど見なくなってしまった。
尤も、大阪芸大の学生であった時は宮川一夫先生や依田義賢先生が撮影や脚本を書かれた作品は必ず見た。
今でも宮川一夫先生が撮影監督した「瀬戸内少年野球団」は私の撮影に対する構図や動きのキヅキを与えてくれた作品で、その他宮川作品にビデオなんかで触れることで大いに勉強をさせていただいたのは大いに感謝しなければならない。
とは言え、今考えてみるとそのつまらなさの最大の原因は巨匠先生方の威厳と映画会社の過去の成功体験へのシガミツキが大いに悪い影響を出していたと思われる。
常にイノベーションを起こさなければならない映画業界でイノベーションを起こすためにしてはならないいくつかの原則を率先して実行していたのが日本映画界なのだろう。
当時、大阪芸大にもそういう意味のことを言う先生もいたように記憶する。
この詰まらない日本映画を面白く見せてくれるようになったのは巨匠先生方ではなかった。
それは、無名の人々のエネルギーだったの違いない。
ポルノ映画出身の周防正行監督の作品であったり、俳優出身の伊丹十三監督であったり、或いはアニメの宮﨑駿監督であったりしたわけだ。
是枝監督の作品は未だ見たことがないがもしかするとそういう現在の日本映画を支える巨匠の次世代の面白さを作品に持っているのかもわからない。
公開したら観に行きたいと思っている。
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