ほぼ21ヶ月ぶりにヒコーキに乗った。
こんなにも長い期間ヒコーキに乗らなかったのはこの10年間ではじめての経験であった。
最後に乗ったのは確か昨年の2月。
埠頭に接舷されて物々しい雰囲気になっているダイヤモンド・プリンセス号を首都高を走る空港リムジンバスから目撃した時であった。
今回乗ったのは、ダイヤモンド・プリンセスを目撃したときに利用したのと同じ関空〜羽田のスターフライヤーの初発便と最終便。
私はちょくちょくこの便を利用する。
なぜならこれに乗ると朝一番に東京に入り、最終で大阪に戻ることができる。
出張の一日を有意義に利用することができる。
しかもスターフライヤーは黒い機体が印象的な美しいデザインと優れた機内サービスが魅力だ。
それにLCCとは正反対の余裕の座席。
リラックス性もピカイチで最もお気に入りでもある。
で、このスターフライヤー。
21ヶ月前まではその関空〜羽田便はANAとのコードシェアで羽田空港では第2ターミナルでの発着となっていた。
それがコロナ禍の間に第1ターミナルに引っ越しをしていたのだ。
もともと関空便以外は第1ターミナルに発着口のあるケッタイなANAグループの会社だったが、なぜだか関空便だけは第2ターミナルにあって、主にANAを多用している私には非常に便利な存在でもあった。
今回は第1ターミナルに到着。
少々驚いたがもっとびっくりしたことがあった。
それは第1ターミナルがゴーストタウンみたいになっていたことだった。
羽田への到着時間が朝7時半ということもあり売店その他はまだ開店前だったのかも知れない。
でもシャッター商店街みたいな風景は首都東京の空港にそぐわない一種異様な感覚を持たざるを得なかった。
まるで夢を見ているような感じだった。
薄暗い照明。
古臭い建物。
人気のない巨大な建造物。
ただし朝だったので救いはあった。
モノレールの改札前を通って京急の改札方面へ向かうとさすがに電車を降りてきたばかりの大勢の乗客がターミナルビルの方へ向っていた。
これから日本各地に向かうヒコーキ利用者なのだろう。
問題は夜なのであった。
真っ暗な羽田空港。
まるっきり廃墟のようになっている空港ターミナルは私を愕然とさしたのであった。
その日、新橋の烏森で古い知人と夕食をとった後、浅草線新橋駅から羽田空港行き急行に乗った。
久しぶりのいつもの東京の帰宅時間のラッシュアワー。
しかし少しばかり人が少ないように思ったのはコロナの影響なのだろう。
多くの乗客が京急蒲田で下車し、続いて糀谷、穴守稲荷と進むにつれて客数は減っていき、第三ターミナルに着いたときは回送車かと思えるほど車内は空いていた。
余談だがコロナでここへ来ないうちに国際線ターミナル駅は第三ターミナル駅に名称変更していたのだった。
第三ターミナルという成田空港の第三ターミナルを連想する不吉なネーミングだ。
電車が羽田空港に到着したのは午後8時。
私の乗る便は午後9:30発だったので1時間少しの待ち時間があった。
この間に私は家で待っているカミさんへ久しぶりの東京出張の土産を買おうと思っていたのだ。
だから新橋での知人との夕食も少し早めに切り上げた。
ところが、そんな流暢な状態ではないのが今の羽田空港だった。
京急を降りて第1ターミナルへ向かうと飲食店、菓子店、グッズ店などなど、店という店がシャッターを下ろして閉店状態。
ガラスのシャッターの向こう側で閉店後の作業をしている店員らしき姿もちらほらと確認することができたのだが、殆どが無人。
ただ電灯が灯っている。
そういう真夜中のブランド街というような状態だった。
薄暗く、人の姿もまばらなターミナル内でエスカレータだけが静かに動いていた。
なんとなく不気味だ。
スターフライヤーの搭乗口はどこかいな、と出発便の電光掲示板を見ると、
「大阪/関西 欠航」
とある。
背筋を冷たいものが走るのを感じた。
まさか。
今日の帰りの便がキャンセル?
関空行きだけではない。
他の数件の地方行きの便もすべて「欠航」サインが灯っている。
慌ててiPhoneのチケットを確認する。
チケットにはどこにも「欠航」などと書いていない。
よくよく掲示板を見ると「大阪/関西 欠航」と表示されているところに「JAL」とあった。
なんじゃい。
JALの関西行きか。
安心して掲示板を見直す。
欠航になっているのはすべてJALで私のスターフライヤー/ANA共同運航便は表示されていない。
ほっとした。
ほっとしたけどすぐに気づいた。
表示されていない。
ないじゃいこれ。
私の搭乗予定のスターフライヤー関西行きは表示されていなかったのだ。
まさか、第2ターミナルへ行かなあかんの?
少々焦り気味に再度iPhoneのチケットを確認する。
するとチケットにはどのターミナルビルかということは全く書かれておらず「搭乗口1」とだけ書かれていた。
不安感が旧に増してきた。
第一ターミナルの売店その他がすべて閉店しているのは午後8時をして出発便がすべて終了していることを意味していて空港ごと、
「今日はおしまい」
ということになっているのではないか。
スターフライヤーも出発は第2ターミナルであれば、これから第2ターミナルへ向かって移動しなければならない。
しかし、第1ターミナルに着いて第2ターミナルから出発なんてあるだろうか。
時間に余裕が少しあるのでこの目でスターフライヤーの搭乗口のあると思われる南の端の保安検査場方向へ向かうことにした。
なぜ南方向に向かったかというと、中央付近の保安検査場はすでに閉鎖されていたからなのであった。
人気がない薄暗いロビーを急ぎ足で歩く。
羽田空港は広い。
歩くうちに不安も増している。
歩くことようやく南の端のA保安検査場に到着すると、やった!
スターフライヤーのチェックインカウンターと保安検査場は開いていた。
係の女性が暇そうに1人ポツンと立っていた。
大阪関西行きが保安検査中ということも書かれている。
ホッとしたのもつかの間、土産物をどうするのか、ということを思い出した。
ふと上へ登るエスカレータの横にセブンイレブンの看板があり上方向の矢印が出ている。
もしかするとコンビニに土産物をいているかも知れない。
東京ばな奈ぐらいはあるかもしれないと思い、それでもあれば無いよりはマシなので買おうと思って店へ行った。
そしてまた驚いた。
土産物は何も置いていなかったのである。
第2ターミナルならローソンにちゃんと土産物をおいているのに〜。
しおしおとエスカレータを降り、早すぎることもないが保安検査場を抜け搭乗口へ向かった。
この間、他の客には1人も会わず。
ただししらシ〜〜ンとした空気が漂っていたのだ。
さすがに帰りの便が出発する30分程前には乗客が集まってきて搭乗口1番の前は少しはにぎやかになった。
飛行機の中は半分ほど座席が埋まっていて1グループには親子連れもいて少しはにぎやかになった。
それにしても羽田空港。
あ〜あ、で衝撃的な寂しさなのであった。