ザ・プラットホーム IT企業はなぜ世界を変えるのか?
尾原和啓著 NHK出版新書 780円+税

著者の尾原さんは、1970年生まれの45歳。
京大院工学研究科を修了され、マッキンゼーを振り出しに、グーグル、楽天、リクルートなど11社を転職。
日本のIT業界のメインストリームを駆け抜けた人物です。
(それにしても11社はスゴいです。2年に一回転職・・・IT業界のスピード感が伝わってきます)
今ではバリ島に住み、ICTを活用して仕事をされているICTのスペシャリストです。
いっぽうのワタシ・・・。
グーグルは、なぜあれだけの利益を生み出せるのか?・・・
FBやツィッターのビジネスモデルで、どうやって収益をあげているのか?・・・
何度、説明を聞いても分かりません(笑)。
マネタイズは、ビジネスの最終場面で最も重要な仕組みであり、仕掛け・・・。
著者の尾原さんは、前著「ITビジネスの原理」で、IT企業のビジネスモデルを分かりやすく解説しました。
今回の、このコンパクトな新書版では、さらに分かりやすくなっているように思います。
同書は、まず、プラットフォームの存在の意義を丁寧に説明、IT以後の世界ではプラットフォームへの参加のしやすさが圧倒的に高まったこと、そしてプラットフォームが私たちの生活を左右することを指摘しています。
この文脈でいうと、今までの世界最大のプラットフォームは、「国家」ということになります。
さらに、このプラットフォームで最も重要なのが、「共有価値観」Shared・Valueであるとします。
マッキンゼーの7Sモデルのまん中にくる「S」ですよね。
グーグル社 マインドフルネス
アップル社 ユア・ヴァース?(あなたの物語は何ですか?)
フェイスブック シン・リレーション・マネジメント
グーグル社がストイックな日本の禅(Zen)を志向しているのに対して、アップル社は米国化した禅(他人と違ってもいい。お前は強く生きられるのだ)を目指していると解説しています。
うまいレトリックです。
第2章のグーグル社、アップル社、フェイスブック社の解説は、まさに目からウロコ・・・。
尾原さんの説明に、思わず膝を叩きます。
現在、毎日のようにスマホやPCを使われている方には、ぜひとも読んでいただきたい一冊です。
◆目次
第1章 プラットフォームとは何か?IT企業、国家、ボランティア活動
第2章 プラットフォームの「共有価値観」 グーグル、アップル、フェイスブックを根本から読み解く
第3章 プラットフォームは世界の何を変えるのか? 3Dプリンタ、教育、シェアリングエコノミー
第4章 プラットフォームは悪なのか?ビジネスモデルの重力、ネットの倫理、現代のリベラルアーツ
第5章 日本型プラットフォームの可能性 リクルート、iモード、楽天
第6章 コミュニケーション消費とは何か?ミクシィ、アイドル、ニコニコ動画
日本で主流の「コミュニケーション消費」。
日本伝統の日記文学、連歌などから続くハイコンテキスト文化が下支えしていると説明。
ナルホドです。
これが、日本初の世界的なプラットフォームとなる可能性があると著者は指摘します。
第7章 人を幸せにするプラットフォーム
最終章では、リベラルアーツとしてのプラットフォーム、人を説明するプラットフォーム、誰もが起業家になれる、未来に楽観的であること・・・という節を設けて、明日に繋がるプラットフォーム論を展開していきます。
今回、なかなか良い本に出会うことが出来ました。
前著「ITビジネスの原理」も、AmazonのKindle部門総合で1位になりました。
今回も、ベストセラーになると思います。
悲観主義は気分によるものであり、楽観主義は意志によるものである アラン「幸福論」
贈与と交換は多様性を内包する 武邑光裕