山﨑 広子 (著)
人は言葉より、声によって動かされている?
私たちを支配する、その絶大な影響力の正体とは?
人の感情が動くときには必ず理由があります。
その大きな要因のひとつが、じつは「声」なのです。
正確に言うと「声という音」です。
人は声を時に目に見えたもの以上に心に残ることがあり、その声によって勇気と希望を送り、真心を送ることができる。
「声の響きこそが、人に勇気を送る」
なぜ人は録音した自分の声が嫌いなのか?
どうして「いい声」の人の言葉には、そうでない人より説得力があるのか?
私たちが普段何気なく使い、聞いている声には、じつは絶大な力が秘められている。
それは人の心を動かし、揺さぶり、自分自身の心身さえ変えていく力を持っている──。声という神秘的で謎に満ちた「音」の正体を、多彩な知見と豊富な事例からひもとく驚きの書。
著者について
■山﨑広子(やまざき・ひろこ)
音楽・音声ジャーナリスト。「音・人・心 研究所」理事。日本音楽知覚認知学会所属。
国立音楽大学卒業後、複数の大学で心理学・音声学を学んだのち、認知心理学をベースに人間の心身への音声の影響を研究。学校教材の執筆も多く手がける。著書に『8割の人は自分の声が嫌い─心に届く声、伝わる声』(角川新書)がある。
声のサイエンスの題名なのに、ワイドショーレベル。
DNAや染色体に声の周波数が影響するって?細胞や遺伝子の仕組みから勉強した方がいい。
なぜ心を揺さぶるのかの、心理学などの科学的な話が聞きたいのに、一般的な説明と非科学的な推測に終始している。反論可能性がなかったり、論評のような内容なのだ。
いや、サイエンスと書かれていないただのエッセイならいいんだよ。話は面白いと思う。でも声のサイエンスを期待して買ったんだ。クレームを言いたくなっても仕方ないよね。
自分の声に対する嫌悪感がずっとあったので、気になって購入しました。これはかなり目からウロコ。声への嫌悪感を放置するって思った以上の人生の喪失だとわかりました。いま、この本の内容に沿ってオーセンティックボイスを探している最中です。
声の魅力や威力を様々な観点から解き明かしていただいています。特に、自己肯定感と自分の声を好きか否かが大きな相関があることや、オーセンティックボイスの大切さは多くの方々に示唆に富んだ指摘だと思います。「コホン」の小技も有効でした。(笑)就活コーチ 廣瀬泰幸
タイトルは「サイエンス」と付いていますが、筆者の主観的な感覚でのお話が随所に登場し、ついていけませんでした。
書かれている内容は、声楽での発声法の本に書かれていることも多く、新鮮さはありません。
逆に根拠なく断定的に記述されているエピソードが多く、筆者の主観の押し売りのような気がしています。科学的な測定や根拠がないと、エピソードの披露は主観的なものとしか言えません。
48pの「オペラ歌手などはオーケストラにひけをとらない声量と表現を可能にします。」も大げさな表現で、科学的な音量の測定なしに書かれている記述でした。
オーケストラもソリストが歌うときは当然音量を抑えるから聞こえるのであって、オーケストラがtuttiで大音量を奏でられれば、ドミンゴでもパバロッティでも音量では負けます。一人ですから、当然です。
71pの「日本人女性の声は異常に高い」は350ヘルツ前後だそうで、科学的な根拠は理解できました。そしてその意味付けとして、声が高いのは「未成熟・身体が小さい・弱い」を表しているようです。
「女性がそのような声を出すのは、男性や社会がそういう女性像を求めていて、女性が無意識にそれに過剰な適合をしようとしているということなのでしょう。」と断じていました。この論理の飛躍、根拠を示さずに結論付けるのは筆者の文章の中で随所に登場します。統計をとり、ヒアリングをした結果、そのような結論になるのなら、一定理解できるのですが。
田中角栄氏の声は実に魅力的です。たたき上げのキャリアを彷彿とするものです。サッチャー氏の低い声も個人的には好きです。
ただ、116pに登場する2人の政治家についてはやはり個人の感想なのですね、これは。60代男性議員と60代半ばの女性議員のエピソードです。確かに政治家の声は大切です。話し方はもっと大事でしょう。男性政治家の能力は別として、話し方を好むかどうかは分かれると思います。好き嫌いの範疇に入る感想ですから。
150pの「人前で話すことの苦手意識と自己への無能感は比例する」は統計的な裏付けのある話でした。日本の若い人がこのような思いを背負っているのなら、気の毒なことだと思いました。学校教育の話題も登場しています。そこの教育が改善されれば良くなるのであれば嬉しいのですが。青年のプレゼンテーションの苦手意識とリンクしているように受け取りました。
「自分の声を好きになれない」「人前で話すのが苦手」という人が多く、自己肯定感の低さと相関しそう。
悪目立ちしたくない、というのはいかにも日本的。中学生の7割の人が「人前で話すことが嫌い」と答えているそうだ。アメリカでは自分の意見を主張することが重要視され、プレゼン能力も授業で課されるせいか「人前で話すことが嫌い」な学生は1割もいないそう。
自分の「本来の声」をとりもどしましょう、そうすると連鎖的に心身の健康も良くなりますよ、といったことが書かれている。
「本来の声」というのは、必ずしも可愛い声とか、美声とも限らない。本の帯の田中角栄氏のダミ声を動画で確認してみると、自分にはあまり声の魅力はわからなかったが、直接会って聞いたら違うのかも。
日本女性の声に関しては、アニメ声、高すぎる声が多いのだそう。本人たちは気づかぬうちにアイドルの影響を受けたり、若さや幼さが好まれる社会に無意識に媚びていたりするようだ。男女格差とも関係しており、日本はジェンダーキャップ指数は世界で114位(2017年)と格差が大きい国。
そういえば、欧米の女性は、現地のドラマやニュースを見る限り、落ち着いた普通の声で話す人が多い印象。
さて、自分の声を客観的に知る、そして本来の自然な声を取り戻すには、自分の声を録音するのが良いとのこと。耳障りな笑い声だったり、早口だったり、声が高すぎたり、ガサガサしていたり、、と発見があるそう。
電話で友人と話すとき、家族と話すとき、仕事でプレゼンするとき、雑談するときなど、色々な場面でスマホやICレコーダーを利用して録音し、後で自分で聞いてみる。
すると、こういう心理(緊張、リラックス、楽しい、イライラ)のとき、自分はこんな声を出しているのか!と発見があり、自覚できるそう。
それを分析し、なるべく落ち着いた気持ちの声、自然体な声に近づけていくと良いようだ。
本書の刊行直後に書いたレビューがなぜか消えていたので再度投稿します。
読み物としての質や論旨の評価以前に、
本書には参考文献や引用した先行研究データの出典が、
少なくとも読者が確認できる仕方ではひとつも(!)明記されていません。
大学1年生が初めて書いたレポートならまだしも、
「サイエンス」と銘打たれた書籍としてはあり得ないことです。
著者が「音楽・音声ジャーナリスト」を名乗り、
「声そのものについての研究が非常に少ない中で、」
「不足していた鎖を見つけ出す方が増えてくださるといいなあと思います。」
(本書、p.246)
精神療法では、「なにを言うか」ではなく「どんな声で言うか」が大切だ。
大御所の先生がそう仰っていた。
有名な精神科医であるサリヴァンも、
「Verbal therapy というものはなく、Vocal therapy があるのだ」
というようなことを言っていたらしい。これは、分かる人には分かる、ピンとくる説明である。
さて、本書では、各国の発声の違い、日本で好まれる声、聴覚フィードバック、有名歌手の声の分析など面白い話題を利用しながら、「声」について述べてある。それぞれ面白くはあるのだが、参考文献が記載されていないなど気になる点はあった。これは著者の主観じゃないかなぁ、と感じる部分もある。
とはいえ、「声」を意識する良い機会にはなった。これまで「声」には気を遣っているつもりだったが、録音して練習するというようなことまではやってこなかった。録音しないでやる声の練習はきっと効果も薄いだろう。それは、鏡やビデオでフォーム確認しないままだとスポーツが上達しないのと同じだ。
そういうわけで、スマホにボイスレコーダーアプリを入れた。
公私ともに、声に気を配ってみたい人にオススメ。
魅力的な声(歌声)を得るためのヴォイストレーニングの本は多く出版されている。そして、それに励む方は少なくないが、本書はもっと根源的な内容だ。ふだん発話する声そのものに注意が向けられる。そして、声そのものを魅力あるものとするための方法が示されていく。自分の声に自覚的であることによって、自分本来の声をもつことの大切さが示され、また、発話者のまるごとの人生をあらわす声の(自・他への)影響力のほどが示される。そうしたことどもが、脳科学などとの関係から、論じられる。
「適応障害」など軽度の精神疾患に悩まされている方にとっては、癒しのヒントを得るものとなるように思う。また、そうでないにしても、自分自身であり、自分の人生を生きることは、誰にとっても重要だが、そうするうえでの大きな助けとなるように思う。
少し引用してみる。《作り声や周囲に迎合する声は、頑張れば頑張るほど真実性から離れていきます。いくらかわいらしい声を出していても、あるいは誠実さをアピールしても、できる人ふうの声を出してみても、そこには必ず「真実性とかけはなれたもの」が透けて聞こえてしまいます。 / 言葉ではなく、容姿でもなく、声の真実性が判断を左右し、心を動かすのは、聴覚が受け取った「本物の声(オーセンティック・ヴォイス)」が、脳内で本能を司る旧皮質へと届くからです。それが聞き手の感情を揺り動かし「有無を言わせぬ影響」を与えるのです。 / 人の心に届かない声とは、大脳辺縁系(旧皮質)が無視、あるいは拒否してしまう声です。恒常性に適った真実性のある声は心を動かし、作り声や自分を生きていない声は、心に届かない。・・後略・・p175.176》
(以下、「目次」・章立て)第1部 声はあなたのすべてを晒す / 第1章 聴覚、脳の驚くべき仕組み / 第2章 病気になるとどうして声が変わるのか / 第3章 あなたの声は社会によって作られている // 第2部 人を「動かす」声の力 / 第4章 教会の天井はなぜ高いのか / 第5章 政治家の声はどこまで戦略的? / 第6章 ブルーハーツの歌はなぜ若者の心をつかんだのか // 第3部 自分を「変える」声の力 / 第7章 どうして人は自分の声が嫌いなのか / 第8章 私たちの「本物の声」とは / 第9章 自分の声を定着させるには / 第10章 声はあなたの人生の味方