著者について
私は、これまで高齢者医療に携わってきましたが、最初は、患者さんの病気が治らないと分かったり、亡くなられてしまうと、医師としての敗北感というか、残念な気持ちを抱いてしまいました。
でも、患者さんやご家族との関わりを通して、治すだけが医療なのではなく、死を受け入れ、最後まで豊かに生き切っていく人のお手伝いをする医療もあるんだと学びました。
そうした旅立ちを見送る穏やかな現場があまり知られていないことにもどかしさを感じ、多くの方に知ってもらいたいと思い、筆を執りました。
人生の最後をどういう形で迎えたいか、ご家族と相談したことはありますか。
ご両親に「病院がいい?施設がいい?それとも在宅にする?」という話をしても、縁起でもないと返されてしまうでしょうか。
私の父は89歳ですが、体が動かなくなったら母に頼ると言い、もし母が先に亡くなったらその時は「もう考えない」と笑っています。
同じような考えの人は、案外多いかもしれません。
ただ、死は誰にでも訪れます。
「自分はこう思うけれど、お母さんはどう思う?」などと話しながら、お互いの気持ちを整理する時間をつくれるといいですね。
終末期の医療は、医師の間で考え方に大きな差があり、教科書的に「この方法が正しい」という答はありません。
痛くてつらくて<もう終わりのしてくれ>と叫ぶ人に掛ける言葉は、「そんなこと考えるな。もっと頑張れ」だけなのでしょうか。
葛藤に苦しむ人がいるからこそ議論が必要だし、この作品が、そのきっかけになればと思います。
終末期医療というのは、決して患者さんだけを見ていれば良いというわけではなく、ご家族のことも含めてトータルに考えることが大切です。
「いのちのて停車場」でも、死の間際まで息子の到着を待ち続ける男性に、周囲の人間が一生懸命に声を掛けるシーンがあります。
目を開ける力がなくなり、話すことができなくなっても、聴覚は最後まで残るといいます。
実際に医療現場で「ご家族の方がもうすぐ来られますからね」と患者さんの声お掛けると心拍数が戻ったりすることがあるんです。
ご家族の力は本当に大きいと思います。
医療現場での篤実な経験に押し出された作品なのではないかと思いました。
物語は、大学病院救急医療の治療室、池袋の事故現場から次々担ぎ込まれ、のたうつ患者、秒を争う張り詰めた緊迫感からスタートする。そして一転、医師咲和子は郷里金沢の川の風情と街並みの中。この街で訪問診療の仕事を手伝うことになった。行く先は、老々介護の頑固おやじ、ゴミ屋敷の入浴婆ぁ、金沢の実家で死ぬことを選んだ元厚労省官僚、癌で余命宣告された6歳、ラグビーで身体不自由となってしまったIT社長等である。そこには強烈な匂いや色、音、ドラマがある。ところで作品中には以下のような文章が散りばめられる。
「目の前の患者を治すことだけが医師の役割と思っていたからだ。だが、患者にとってなにが幸せな死か」
「◎◎ならもう命などいりません。そんなことをはっきり口にしてしまう」
「現在は5割を保険料、4割を国や地方の税金で支えていますが、これ以上は若い働き手に負担を強いることも、財政に付けを回すこともできない。もうそんな余力は国にはないのですよ」(厚労省官僚であった宮嶋)
そして、「あろうことか、父は積極的な安楽死を、娘である咲和子に希望してきた。これまでの数日間と違い、ありのままの思いを伝える強く明確な口調で、」
この作品は映画になるらしい。是非ブームになってほしい!ラストシーンは一億みんなに投げかけられた問題。
南杏子のデビュー作『サイレント・ブレス・・看取りのカルテ』にそっくりでした。内容が改善されて修正版のような感じもします。でも明らかに、『いのちの停車場』の方が良いと思います。両方読んで比較するのも面白かも知れません。
今作品は一章から六章までありますが、その中で、特に五章と六章がとても良かった。五章での、小児癌患者で6歳の女の子、萌ちゃんには沢山の涙を流しました。また、六章での、父親への安楽死を行う医師への犯罪行為に対しては考えさせられます。この問題に対しては賛否両論、色々意見が分かれると思います。問題提起された終わりかたになっています。映画化したいと思われた事も何となく分かるような気がします。
五章・六章が良かった反面、一章から四章まではやや面白さに欠ける。この点で評価を下げている。
故郷で在宅医療を行う医師。様々な事例に真摯に向き合う姿は、心打たれました。特に身内の死に向き合う家族たちが学んでおかなければならない数々のこと。私自身もここに出てくる家族と同じく、全く知りませんでした。
家族の負担を考えると、安易に家で死にたいと言えないなぁ。何より加害者にさせてはならない‥
そして最終章はあまりにも辛かった。
もし万が一、法律の改正があれば、誰もが直面するかもしれない現実。人ごとととらえてしまってはいけない気がしました。
登場人物がみんないい人だったからこそ、ずしんと重いものを残してくれました。読んで良かった一冊です。
ディアペイシエントを、TVで観て、南杏子さんの作品が好きになり、映画化の決まった本を読んでみたくなり購入しました。在宅医療は、きれいごとではすまされない家族との問題などが、丁寧に分かりやすく書かれて、いかに病気の時や、高齢社会を生きていくかを考えさせられました。
映画を観にいくのが、楽しみになりました。
面白く読みました。死を面白く読ませて考えさせられた。また、痛みと医療について考える参考になりました。今、私は椎間板ヘルニアの痛みと闘っています、一刻も早く手術して痛みを除去して欲しいのに、痛みは命と関係が低いためか、諸事情により待っています。
映画化が決まってすぐに購入して読みました。
主人公の私生活の流れと平行して主人公の対する患者さんの話しがオムニバスで進んで行きます。
泣いてしまいました。
素敵なお話で映画も楽しみです。
大学病院の先生から、町医者の先生へ、どちらも人の命と寄り添った先生という話ですが、患者様の生きることをシッカリと見て書かれた小説です
舞台は金沢、そして富山と一見田舎とみられるようなところですが、作者・南杏子先生の心から患者様に寄り添った心のこもった小説と言えるでしょう。
私は介護相談員として、素敵な小説に出会ったなと思って、一気に読みました。