1932年、国際連盟がアインシュタインに依頼した。「今の文明においてもっとも大事だと思われる事柄を、いちばん意見を交換したい相手と書簡を交わしてください。」選んだ相手はフロイト、テーマは「戦争」だった――。
宇宙と心、二つの闇に理を見出した二人が、戦争と平和、そして人間の本性について真摯に語り合う。
養老孟司氏・斎藤環氏による書きおろし解説も収録。
【原本: 『ヒトはなぜ戦争をするのか』(花風社、2000年)】
目次
フロイトへの手紙――A・アインシュタイン
アインシュタインへの手紙――S・フロイト
解説1 ヒトと戦争――養老孟司
解説2 私たちの「文化」が戦争を抑止する――斎藤環
【原本: 『ヒトはなぜ戦争をするのか』(花風社、2000年)】
目次
フロイトへの手紙――A・アインシュタイン
アインシュタインへの手紙――S・フロイト
解説1 ヒトと戦争――養老孟司
解説2 私たちの「文化」が戦争を抑止する――斎藤環
内容(「BOOK」データベースより)
一九三二年、国際連盟がアインシュタインに依頼した。「今の文明においてもっとも大事だと思われる事柄を、いちばん意見を交換したい相手と書簡を交わしてください」。選んだ相手はフロイト、テーマは「戦争」だった―。宇宙と心、二つの闇に理を見出した二人が、人間の本性について真摯に語り合う。ひとは戦争をなくせるのか?
著者について
アインシュタイン,アルバート
Albert Einstein. 1879‐1955年。南ドイツのウルムに生まれる。両親はユダヤ系ドイツ人。スイス特許局技官として勤務する傍ら研究を続け、1905年に特殊相対性理論、1916年には一般相対性理論を発表。人々の宇宙観を変え、現代物理学を大きく動かした。1921年、ノーベル物理学賞受賞。1933年、ナチスの脅威により米国に亡命。「統一場理論」の構築に取り組むが、未完のままプリンストンにて死去。
フロイト,ジグムント
Sigmund Freud. 1856‐1939年。東欧のモラビアにユダヤ商人の長男として生まれる。3歳のときウィーンに移住。ウィーン大学で学位を取得後、パリへ留学。開業医として神経症の治療を行ないながら、精神分析の理論を構築。伝統的な人間観を揺さぶる革新的なこの理論は、精神医学という分野を超えて大きな影響を与えた。1938年、ナチスのオーストリア侵攻から逃れロンドンに亡命。
浅見 昇吾
上智大学ドイツ語学部教授。哲学、倫理学。
養老 孟司
1937年神奈川県生まれ。東京大学医学部卒業後、解剖学教室へ入る。1995年東京大学医学部教授を退官。現在、同名誉教授。
斎藤 環
1961年岩手県生まれ。医学博士。筑波大学医学医療系社会精神保健学教授。専門は思春期・青年期の精神病理学、病跡学など。
Albert Einstein. 1879‐1955年。南ドイツのウルムに生まれる。両親はユダヤ系ドイツ人。スイス特許局技官として勤務する傍ら研究を続け、1905年に特殊相対性理論、1916年には一般相対性理論を発表。人々の宇宙観を変え、現代物理学を大きく動かした。1921年、ノーベル物理学賞受賞。1933年、ナチスの脅威により米国に亡命。「統一場理論」の構築に取り組むが、未完のままプリンストンにて死去。
フロイト,ジグムント
Sigmund Freud. 1856‐1939年。東欧のモラビアにユダヤ商人の長男として生まれる。3歳のときウィーンに移住。ウィーン大学で学位を取得後、パリへ留学。開業医として神経症の治療を行ないながら、精神分析の理論を構築。伝統的な人間観を揺さぶる革新的なこの理論は、精神医学という分野を超えて大きな影響を与えた。1938年、ナチスのオーストリア侵攻から逃れロンドンに亡命。
浅見 昇吾
上智大学ドイツ語学部教授。哲学、倫理学。
養老 孟司
1937年神奈川県生まれ。東京大学医学部卒業後、解剖学教室へ入る。1995年東京大学医学部教授を退官。現在、同名誉教授。
斎藤 環
1961年岩手県生まれ。医学博士。筑波大学医学医療系社会精神保健学教授。専門は思春期・青年期の精神病理学、病跡学など。
「文化の発展を促せば、戦争の終焉へ向けて歩みだすことができる」フロイト
同時代を生きた天才二人の書簡です。わくわく感が止まりません。
「ひとはなぜ戦争をするのか」を知識人に問えば、科学者は科学者なりの、哲学者は哲学者なりの、文学者は文学者なりの、宗教家は宗教家なりの、芸術家は芸術家なりの答えがあると思います。
「ひとはなぜ戦争をするのか」を知識人に問えば、科学者は科学者なりの、哲学者は哲学者なりの、文学者は文学者なりの、宗教家は宗教家なりの、芸術家は芸術家なりの答えがあると思います。
お二人とも人類史に名を残す偉大な科学者ですので、さすがに理論的だなあと思います。
二人ともユダヤ系のため、この後ナチスドイツによるホロコーストのためそれぞれ米英への亡命を余儀なくされます。
二人ともユダヤ系のため、この後ナチスドイツによるホロコーストのためそれぞれ米英への亡命を余儀なくされます。
自らもそういった時代の中にあり、身近に危険を感じながらの思索であり、現代人のような安全な場所からの考証とは違います。
国際連盟から依頼を受けたアインシュタインが戦争をテーマに選び、相手にフロイトを選びます。
戦争をやめられない原因が人間の心にあるのではと考えたためです。これが慧眼でした。
これに対してフロイトは、人間の心には破壊欲動があること、文化の発展により解決されていくであろうことを述べていく過程はスリリングです。
また、各国家が主権の一部を譲渡することで超国家的機関を作り、大きな権限を持たせることが必要との共通見解が導かれます。
現代でいうと国際連合がそれにあたるのでしょうが、ウクライナを見ての通り残念ながら戦争を抑止するまでには至りません。
現代でいうと国際連合がそれにあたるのでしょうが、ウクライナを見ての通り残念ながら戦争を抑止するまでには至りません。
戦争をさせないために特化した機関が必要なのかもしれません。
アインシュタインの問いかけに対し、フロイトは人間個人に潜む心理を戦争の原因だと返していますが、
それだけでは説明が付かないように思います。
それだけでは説明が付かないように思います。
確かに心理的に戦争へ向かい易い傾向はあるでしょうが、
政治的な要因(指導者や大衆の考え方)や民族的な要因(不寛容さや他民族への敵意)、経済的な要因
(貧困や窮乏)なども合わせて考えないと戦争へ向かうプロセスを説明出来ません。
フロイトは自信の精神分析学を踏まえ最大限誠実な返答をしたのだと思いますが、疑問は解決されて
いないと感じました。ただアインシュタインが提案している世界政府への権力譲渡やフロイトの文化
を高めていけば戦争に対する抗力になる、と言う点には同意します。
兎も角戦争の無い平和な世界を望みます。
政治的な要因(指導者や大衆の考え方)や民族的な要因(不寛容さや他民族への敵意)、経済的な要因
(貧困や窮乏)なども合わせて考えないと戦争へ向かうプロセスを説明出来ません。
フロイトは自信の精神分析学を踏まえ最大限誠実な返答をしたのだと思いますが、疑問は解決されて
いないと感じました。ただアインシュタインが提案している世界政府への権力譲渡やフロイトの文化
を高めていけば戦争に対する抗力になる、と言う点には同意します。
兎も角戦争の無い平和な世界を望みます。
とは言え平和を唱えていれば良いとは思えません。戦争へ
向かう過程で必ず現れるアジテーターに惑わされないよう、憎悪や不寛容をグッと堪えたいと思い
ます。同時に残念なことではありますが、現実的な抑止力についても熟慮が必要でしょう。それらを
含めて考える切っ掛けになる本ではありました。
なお巻末にある解説は視点が狭すぎます。戦争の話をしているのに局所的な紛争やテロのことばかり
述べています。
向かう過程で必ず現れるアジテーターに惑わされないよう、憎悪や不寛容をグッと堪えたいと思い
ます。同時に残念なことではありますが、現実的な抑止力についても熟慮が必要でしょう。それらを
含めて考える切っ掛けになる本ではありました。
なお巻末にある解説は視点が狭すぎます。戦争の話をしているのに局所的な紛争やテロのことばかり
述べています。
テロが戦争に発展することもありますが、いきなり大規模戦闘が勃発することもある
ので、適切な解説とは感じませんでした。
ので、適切な解説とは感じませんでした。