「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2005・01・17

2005-01-17 06:00:00 | Weblog
 極楽も地獄もともにこの現世にあるのだという思いを強くしたのが、10年前の阪神淡路大震災です。

 神戸の街が燃え続ける傍らで、震災の当日もその後もお隣りの大阪の街は灯火が消えるどころか、繁華街のネオンも賑わいも常と変わりなく続いていました。私事ですが、阪神間に住んでいる親戚が何軒もあり、5000人を超える死傷者の中に知り人は居りませんでしたが、住まいが倒壊したところもありましたので、随分と安否を気遣ったものです。

 作家の五木寛之さんがその著「大河の一滴」の中で、「交通事故による死者が年間1万人余りであるのに対して、自殺者の数は近年2万人を下ることなく、命をとりとめた自殺未遂者まで含めると10万人にも及ぶのではないか、交通事故の多発状況を交通戦争と呼ぶなら、自殺の多発は心の内戦とでも呼ぶべき状況ではないか」と書いておられたのが6年前です。その後も状況は悪化の一途を辿っているように感じられます。自殺者の総数は1998年から3万人台に跳ね上がり、高水準が続いています。

 日本のように戦後の焼け跡から曲がりなりにも欧米の先進国の仲間入りをするところまで復興し、さらには西ヨーロッパの国々に比べて底の浅さはあるものの、成熟社会と呼ばれる段階に近づいた国で、物質的には恵まれた状況にあるにもかかわらず、精神面あるいは物心両面で行き詰まり、一線を越えてしまう人が増え、乳幼児以外のすべての年齢層に自殺者が現れていると言います。覚悟の自殺であるにせよ、単なる逃避行動としての自殺であるにせよ、一国の人口の0.1%を上回る人が毎年自殺するか、自殺を試みるというのは大変なことだと思います。老いも若きも強い「不安社会」の中にいるのだと思います。

 半面、国と国との戦争や国内の民族間の抗争、内戦で亡くなる、まさに人災によって亡くなる人々や、旱魃による飢饉により飢餓で亡くなる人々、毎年必ず発生する台風による水害、不時に発生する地震等天災で亡くなる人々の数も半端なものでなく、時に「心の内戦」で亡くなる人の数をはるかに上回ってしまう悲惨なこともあるのが現実のこの世界の有り様です。

 年年歳歳 花相似たり 歳歳年年 人同じからず
コメント
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