今日の「お気に入り」は、中原中也(1907-1937)の詩一篇。
桑名の駅
桑名の夜は暗かつた
蛙がコロコロ鳴いてゐた
夜更の駅には駅長が
綺麗な砂利を敷き詰めた
プラットホームに只独り
ランプを持つて立つてゐた
桑名の夜は暗かつた
蛙がコロコロ泣いてゐた
焼蛤貝(やきはまぐり)の桑名とは
此処のことかと思つたから
駅長さんに訊ねたら
さうだと云つて笑つてた
桑名の夜は暗かつた
蛙がコロコロ鳴いていた
大雨の、霽(あが)つたばかりのその夜は
風もなければ暗かつた
(角川春樹事務所刊「中原中也詩集」所収)
1935年8月12日の「此の夜、上京の途なりしが、京都大阪間不通のため、臨時関西線を運転す」と詩人の註が付いています。40年近く前の学生時代、南紀への旅の途次、乗り継ぎの夜行列車の待ち時間を、独りこの駅のプラットホームで過したことを思い出しました。
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