「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

敗戦記念日 2005・08・15

2005-08-15 05:50:00 | Weblog
   今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

  「我々が戦争や震災の渦中にあったことは事実だが、渦中にさえあれば、それを経験したと思うのは誤解である。しかも、

  老人は少年を説教するに、常にこの経験を以てする。

   八月十五日、新聞は『終戦』という言葉を採用した。昔なら負けいくさ、あるいは降参といったものをごまかしたので

  ある。経験して、やがて忘れたのではない。初めから経験しなかったのではないかと、私は敗戦直後書いたことがあるが、

  いまだにその疑いが晴れないのは残念である。」


  (山本夏彦著「茶の間の正義」所収)


  「老人はむかし自分は戦争の渦中にあったから、戦争を経験したというが怪しい。その渦中にあっても人は多く経験しない。

  経験はついに才能の一種か。」


  (山本夏彦著「世間知らずの高枕」所収)


 またこの日が巡りきて、山本夏彦さんのこの文章を思い出し、また一年過ぎていきます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする