「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2006・01・23

2006-01-23 07:15:00 | Weblog




 今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

 「 生きているからといって必ずしも生きているとは限らない、死んだからといって必ずしも死んだとは
  限らない。人は生きている人と死んだ人の区別をしすぎる。葬式をしないとその区別がつかないから、
  あれはしなければならない儀式なのである。きっぱり区別しないと両者の仲は、誰にとっても実はあい
  まいなのである。」

 「 冷蔵庫のなかった昔は、魚屋は今朝仕入れた魚を売りつくして、夕方は店のたたきに音たてて水を流
  して、ごしごし洗って無事一日を終った。
   魚屋のあるじはあとは枕を高くして寝るばかりである。まことに一日の苦労は一日で足れりである、
  明日のことは思いわずらうなとは至言である。」


  (山本夏彦著「世は〆切」文春文庫 所収)
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