今日の「お気に入り」は、養老孟司さんの「超バカの壁」(新潮新書)から。
「 中国や韓国が日本の戦争責任について言い募り、それに対して日本人が反発するという状況が続いて
います。額面どおりに受け取れば、彼らは被害者としての心情をぶつけているということになります。
また、戦略として反日を唱えているという説も一般的によくいわれています。
これに加えて、もう一つ心理的に複雑な問題があるのではないかと思います。実は中国、韓国、北朝
鮮は、結局過去の大日本帝国というものを、暗黙のうちにまだ一種の理想像として考えているのでは
ないでしょうか。特に北朝鮮はその典型です。
彼らは実は昔の日本のような国を理想としている。そのことは冷静に見ればおわかりになるはずです。
軍事力を増強させて、経済力を強くしようとしています。中国や韓国がやっていることはまさに戦前の
日本の富国強兵路線です。結局、彼らは日本の真似をしている。本来憎むべき相手をなぞっていると
いうことが暗黙の引け目となっている。それが、おそらく一連の反日の背景にあるのではないかという
気がしてならないのです。金正日あたりの本音は多分日本びいきでしょう。
暗黙の引け目をもう少し噛み砕いていえばこうなります。『我々ほどの立派な者たちが格下と思って
いたあの日本のまねをしているということが腹立たしい。先に富国強兵をやられちゃって、後追いせ
ざるを得ない』という気持ちです。当然のことながら富国強兵などという考え方はすでに時代遅れで
す。そういうナショナリズムは十九世紀のヨーロッパででき上がった国家概念です。それを東アジア
で相変わらず持ち続けている。この心理的な問題というのは結構大きいと思います。本質はここに
あるのではないでしょうか。」