今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。
「小学中学高校を通じてわが同胞は金銭についての教育を一つも受けてない。これは驚いていいことだと私はかねがね驚いている。金(かね)教育をなぜしないか、早くしたまえと何度も言ったが誰も耳を貸さない。
古くは保全経済会、ねずみ講、近くは豊田商事、ことにねずみ講はサギだと承知しているはずなのに、いまだによく似たものにだまされている。
だまされたものの集まりを、新聞は被害者友の会みたいに書くが、あれは被害者なんかではない。欲ばりの仲間の会である。取戻せる見込はまったくない。
読者のすべてがまかり間違えば手を出す可能性があるものだから、見込があるような記事を掲載するのである。迎合である。
『株』もまた欲である。底値で買って天井で売るなんて本職にだって出来ない。だから昔は素人は手を出してはならぬと禁じられていたのに出したのだから、二度と出さなければいいのである。」
(山本夏彦著「『社交界』たいがい」文春文庫 所収)
「小学中学高校を通じてわが同胞は金銭についての教育を一つも受けてない。これは驚いていいことだと私はかねがね驚いている。金(かね)教育をなぜしないか、早くしたまえと何度も言ったが誰も耳を貸さない。
古くは保全経済会、ねずみ講、近くは豊田商事、ことにねずみ講はサギだと承知しているはずなのに、いまだによく似たものにだまされている。
だまされたものの集まりを、新聞は被害者友の会みたいに書くが、あれは被害者なんかではない。欲ばりの仲間の会である。取戻せる見込はまったくない。
読者のすべてがまかり間違えば手を出す可能性があるものだから、見込があるような記事を掲載するのである。迎合である。
『株』もまた欲である。底値で買って天井で売るなんて本職にだって出来ない。だから昔は素人は手を出してはならぬと禁じられていたのに出したのだから、二度と出さなければいいのである。」
(山本夏彦著「『社交界』たいがい」文春文庫 所収)