「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2006・06・04

2006-06-04 07:50:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

 「私は作者のキャリアは詮索しない方がいいと思うものである。読んで感銘をうけたらそれだけで足りる。作者の経歴を知りたくなるのは人情だが、作品がすべてで、本人はぬけがらであり、カスである、私が半分死んだ人だというゆえんである。
 たとえば漱石は兄嫁に惚れていた、それが漱石の作品の謎をとく鍵だと、何かにつけて持ちだされては地下の漱石も迷惑だろう、よしんばそれが発見であったにしても。」

   (山本夏彦著「一寸さきはヤミがいい」新潮社刊 所収)
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