今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から、昨日と同じ「『戦前』という時代」と題した昭和60年の連載コラムの一節です。
「妻は家計簿なんぞつける性質の女ではないが、つけたノートが二三冊残っている。私がつけよと命じたというが、私が命じるはずがない。以来四十年つけないでそれに文句を言わないことによってもそれは明らかである。
けれども今にして思えば家計簿というものは貴重な手がかりである。配給がいくらで闇がいくらと書いてあればそれだけでも彷彿とその時代がわかる。よくNHKテレビは戦前からの家計簿を何十冊もつみ上げて驚いて見せるが、ただ驚いていないで中身に立ちいってくれ。」
(山本夏彦著「『戦前』という時代」文藝春秋社刊 所収)
「妻は家計簿なんぞつける性質の女ではないが、つけたノートが二三冊残っている。私がつけよと命じたというが、私が命じるはずがない。以来四十年つけないでそれに文句を言わないことによってもそれは明らかである。
けれども今にして思えば家計簿というものは貴重な手がかりである。配給がいくらで闇がいくらと書いてあればそれだけでも彷彿とその時代がわかる。よくNHKテレビは戦前からの家計簿を何十冊もつみ上げて驚いて見せるが、ただ驚いていないで中身に立ちいってくれ。」
(山本夏彦著「『戦前』という時代」文藝春秋社刊 所収)