川崎市在住、東京出身、各種賞を受賞している社会派?小説家島田雅彦さん(59)が執筆した西日本新聞、朝刊連載小説「パンとサーカス」が先日382回をもって終了した。昨今の日本のおかれた状況に一抹の不安を覚える私は毎朝、この小説を楽しみにコロナ禍をすごしてきた。
・・・・ タイトルの「パンとサーカス」は、古代ローマにユウェナリスという詩人がいて、彼の風刺詩集に「かつては政治や軍事のすべてにおいて民衆が権威の源泉だったのが、今は政府が与える「パンとサーカス」すなわち「食べ物と娯楽」に満足して政治に興味を失ってしまっている。そんな社会の退廃を批判、裏返せば政府の愚民化政策をあてこすったコトバに由来する。政治的関心を失った民衆には食糧(パン)と見世物(サーカス)を与え、盲目状態に置けば、支配は容易という考え、いわゆる衆愚政治。今回のコロナ禍の東京五輪開催に関して、開催して選手の活躍をみせれば国民は政府への不満など忘れてしまうよとアメリカの財界要人がうそぶいていた。戦争、祭典(オリンピックやワールドカップなど)、犯罪、天災、疫病(コロナ禍も)、どれもがサーカスにあてはまる。支配者は権力保持のためなら、民衆の不安、興奮、恐怖を誘うあらゆるサーカスを政治利用するものだというわけ。
この小説では人種を二つに分けて、一方は、この国を間接統治し、隷属させるアメリカとCIA、その忠犬として自国民に犠牲を強いる政治家、彼らに取り入り、権勢を振るう官僚、税金を逃れ、富を独り占めする資産家、彼らの犯罪を隠蔽したり、文書を改ざんしたり、市民を監視する法の番人らが、こぞって利権を貪(むさぼ)るインサイダーの天国である。
他方はそれら支配層に一方的に搾取されるアウトサイダーやまじめな国民達。両者を隔てる壁は厚く高い。暴動が起きる気配はなく、彼らはもう少しマシな生活を求めて、自発的服従を続ける。
この小説では 心折れるこの世界で孤立した者同士が出会うところから物語は始まる。凋落(ちょうらく)したヤクザの息子空也、その親友でCIA(米中央情報局)のエージェントになった寵児、空也の腹違いの妹マリア、弁護士、ジャーナリスト、刑事、政治家秘書になった女子四人組、怪しい人材派遣会社社長、組織から排除された内部告発者たち、懺悔(ざんげ)するフィクサー、ホームレスの元刑事…そんな怪しい面々が暗黙の共謀をして、実行するのは世直しか、テロリズムか? 武器もカネもない、地位も権力もない。
マリアが介護したフィクサーから資金を引き出す。エキスパートが綿密に計画した作戦を、義兵たちが志願し、実行する。支配層の弾圧は一層強まるが、叛逆(はんぎゃく)の連鎖は止まらない。独裁者も人である限り、必ず滅びる。今日、立ち上がり、明日、彼らを追い出せば、明後日には新しい国が出現する。すぐにバレる嘘(うそ)で固めた現実の政治は出来の悪いファンタジーに過ぎない。この小説では現実のディストピアを風刺しつつ、良心の革命の一部始終をあらゆる角度から描き出していた。おもしろかった。
人事権を武器に政界を我が物顔にしてきた菅首相が国民とまともに対話もせずに支持率を下げ続け、挙句の果ては身内に三下り半をつきつけられて辞職の事態に陥った。皮肉なものだ。
次の総裁は反主流だが国民支持トップの石破茂氏あたりがならないと、他の誰がなっても自民政治は変わらないのではないか。しかしながら半数はいると思われる政治無関心人間が眼を覚まして、野党議席を増やさない限り、自公政治の傲慢堕落は続き、パンとサーカスの衆愚政治が継続されると思われるが皆さんいかがでしょうか・・・・・・・・・
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