2014/02/04
「傍線を付けたるところに地名入れ歌の輪郭明らかにせよ(『地名をいれる』)」
「地名とは固有名詞で世の中にたった1つの存在なりし(例:銀色の露→嬬恋の露)」
「歌人でも与謝野晶子は『地名』好き多くの歌に取り入れたると()」
「歌枕これも地名を持ち込める平安頃の和歌の技法だ()」
「歌枕見た・見ないとは関わらず一定ルールで使用されおりない()」
「万葉は歌枕などないゆえに雑多な地名を人は詠えり()」
「天ざかる夷ヒナの長道ゆ恋ひくれば明石の門より大和島見ゆ()」
「例:清水へ祇園をよぎる桜月夜こよひ逢ふ人みなうつくしき()」
「例:夕ぐれを花にかくるる子狐のにこ毛にひびく北嵯峨の鐘()」
「例:ああ皐月仏蘭西の野は火の色す君もコクリコわれもコクリコ()」
2014/01/13_歌壇・俳壇(読売)
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10 冬雲雀ポケットに夢あった頃
11 厨房はわが城火伏札を貼る
12 神の留守社務所に入る会計士
13 シロフクロウ蓋のごとくに首回す
14 乗るバスに杖つき急ぎ息白し
15 冬の音とは往復ピンタの音
16 煮凝や飢餓体験を語り合ひ
17 言葉さえ失うほどに咳込めり
18 一枚の葉もくっきりと冬の水
19 水鳥の一羽追いつき群れの中
20 農務を来ての農務に消えゆく救急車
21 青森の雪摘み長距離バス発てり
22 しろがねのやがてこがねの干大根
23 俎板を日に干す勤労感謝の日
24 海鼠食ふわれを見てゐる海鼠かな
25 簡単に着きて離れぬ草虱
26 モノクロがカラーになりてゆく淑気
27 一葉もなき頂に烏瓜
28 あらたまの底なき天を鳶の笛
29 白障子眉をやさしく引きにけり
30 朝飯は爺の出番よ冬菜茹で
31 子のつくるAB型のゆきだるま
32 木の実落つ旅役者の子と遊びし日
33 水で指切りたると言ふ芦刈女
34 背を向けて首筋溶かす日向ぼこ
35 ほつこりと樹皮剥がれけり櫟炭
36 寒昴つまびらかなる島の夜
37 一枝を出して加はる焚火かな
38 連なりて重なりて山眠りけり
39 教室のうしろの隅や日向ぼこ
40 トラクター一両枯野動かしぬ
41 組む肩に湯気立ちのぼるラガーかな
42 幼には小さき杵あり持ちを搗く
43 六十年日記を続け年を越す
44 酒飲みは汁が肴や雑煮椀
45 背もたれの無き椅子五つおでん酒
46 白鳥の内股歩き見てしまふ
47 ひとところをみなばかりやくすりぐひ
48 枯木立山雀小啄木鳥四十雀
49 冬ぬくし真ん丸顔の女人俑
50 人真似て拍手をうくる猿は思ふ 人間といふはかく愚かしき
51 自然薯のすがるる蔓に赤き紐 むすびてゆきし里の子ふたり
52 終い弘法に終い天神なつかしきこころは今も京にあそべり
53 しとどなる露は葉先にきらめきて稲は一気に熟れてゆくなり
54 争いも貧困もなきこの国に年三万の自死は何ゆえ
55 草むらに朽ちし漁船は放置され復興おそし三度目の秋
56 大臼をリヤカーに据えて買いて来し終戦五年の父たくましき
57 栗のいが避けつつ登る峠道まえ行く人が小さき屁をひる
58 きっと来るとかはせみを待つ男らと寒風に立つわれも信じて
59 一日に一度は死の謎はなしあふ老いてホームに安けきわれら
60 「ただいま」と帰りし娘立ったまま職場での事いっきに話す
61 玄関に自分のスリッパそろへおく「おかへりなさい」を言つてほしくて
62 不合格だったと告げたタバコ屋の公衆電話に忘れた手袋
63 青銅の鍵を回して閉むるとき窓はひそかな断念をせり
64 少年の蹴りつつ歩むアルミ缶冬ざれの野に乾ぶ音たつ
65 ウエディングケーキのようにあたらしき鳥籠抱えて過る青年
66 一秒ずつすり減る怖さ覚えけり霜夜にひとり目覚めておれば
67 詩を書く人になるのと言ひし十一のわれを不良と母は叱りぬ
68 逝きし友こころに棲めばこの冬の山茶花の白はことさらに寂し
69 自らの訃報をまさに探すごとお悔み欄をわれはまづ見る
70 人間と河野時間の交差する橋に佇みオリオンを見る
71 じゃんけんの勝負に歓声湧き起こる老人会の不思議な力
72 これ以上無いと思える絶望を容易く手にしたクリスマスイブ
73 今回もボーナス出せぬ年末にもらいし歳暮のビールを配る
74 マシュマロのようにソープを泡立たせ逃れようなき老いの身洗う
75 閉店前冷めた天ぷら売る人の「風邪ひかないで」が響くデパ地下
76 憧れて憧れてわが一人娘にその名を付けしお千代さん逝く
77 鶴岡は墓所に花の絶えぬ町ゆかしき辻を巡りてをりぬ
78 スタバにて道ゆくひとを眺めをり足し算ばかりのひと世はあらじ
79 毎月のように病舎に会いに来る友は詩を書く警備員なり
80 ゆで卵の殻をカチンと割るように泣くきっかけになった一言
81 飛石のとおりに足を出すことの少し悔しく冬空仰ぐ
82 ヒシクイもマガンもマガモもハクチョウもみな黒く飛ぶ朝の伊豆沼
83 バレルとふ単位をつかひナノといふ単位つかひて職を退きたり
84 平成の時流に遠い寺跡の無心のブナの肌の手触り
85 抱くときややさからいて横を向くみどりごも男の子は男の匂いす
86 湧き出づるヤブ蚊のごときいぢめっ子に俳句の殺虫剤ひと吹きす
87 戦争を消せば平和なテレビなり平和も消して炬燵にねむる
88 ポッキーがほしいと言えば飽きるまで食べさせてやるばぁばというは
89 きつちりと畳まれてある我が下着今日の妻は機嫌いいらし
90 さて今日も青葉に負けずすごさむと施設の朝を深呼吸する
91 ハチミツがあふれるやうに蒲団ほす大マンションの春のベランダ
/* Takao Tsuji */