2014/02/03_歌壇・俳壇
#0174 兎ゆき狐あと追ふ山河かな
#0233 ヒソヒソと何やら浮き立つ食卓のリンゴに今朝は耳がついてる
#0369 括られて集団自決めく冬菜
#0426 この国を出でしことなし食卓にモーリタニアの蛸を噛みつつ
#0549 凹んでる君をメキシコ料理屋へ 励まし下手な私の秘策
#0648 能登牡蠣に甘海老並べ加賀米のパエリア料理高齢も善し
31 仮設でも今朝は賑やか餅まきが新成人の門出祝って
10 正月などなければいいと思ってる嫁がいることそろそろ気づこう
11 日溜りの縄飛びの輪の速まりて縄の球体姉妹を包む
12 日本を取り戻すってどのくらい昔に戻せば気か済むのだろう
13 原発の輸出を約し握手する総理テレビに笑みを浮かべて
14 デジタルもよいのだろうけど朝刊のインクの匂いに身体目覚める
15 元旦のぬるい体にフランスの硬水を飲む喉が目覚める
16 目を閉じて開けてまた閉じすっと寝る毛糸みたいな黄色いひよこ
17 割り算の余りのようなここちして分かちあうひとなき径辿る
18 争える日本海側の島ありて太平洋には新島生るる
19 喉もと過ぎ秘密保護法反対の意思の程度を試される民
20 廃鉱の街に住みにし歳月を廃炉の地にて思えば小雪
21 白鳥の鳴き交わしゆく空残し原発被災地枯野となりぬ
22 冬に咲くパンジーのよう鳩笛は色鮮やかにホーホーと鳴く
23 フクシマの傷ざっくりとあくごとし人住まぬ家の窓窓の闇
24 生きにくき未来とならん子や孫にセシウム禍はた秘密保護法
25 寂聴の「遠い声」読む秋水やスガ子や寒村の明治の呻き
27 休み時間星成君にさそわれ将棋指す友らのぞき込むよし頑張ろう
28 ひとつかと見れば雀のつがひなりまぐはひ落ちて土けぶり上ぐ
29 一度は皆落ちたと今は笑いいる屋根職人の休憩時間
30 「スピード」か「同意」かでゆれる立ち退き地仮堤防をうつ波さむし
32 白鳥の鳴き交わしゆく空残し原発被災地枯野となりぬ
34 目を閉じてひらけてまた閉じすっと寝る毛糸みたいな黄色いひよこ
35 高楊枝意地もどこ吹く武士われは鯖の煮つけの値引き札待つ
36 海を来る吹雪が拒む灯りを向けて海苔解禁の波を確かむ
37 冬の鯉ときにのたりとうごめきぬ隠しおほせぬ秘密のごとく
38 汚染水タンク1000基の建ち並ぶ画像が今はではない
39 陽のあたるワジャンキ公園手の像のおよびをなぞりショパンと呟く
40 日溜りの縄跳びの輪の速まりて縄の球体姉妹を包む
41 山茶花の花をこわさぬように降り一花一花を雪はつつめり
42 薄氷張る朝二回洗濯もの干す我れ今日も生きてる生きてる
43 もうすでにないかもしれぬ星々の光を見つめ年あらたまる
44 脊椎管狭窄症の名戴いて大姉付けたら戒名にもなる
45 動悸して立ち止まるたび待ってくれまた引いてくれるブンは愛犬
46 陽のあたるワジャンキ公園手の像のおよびをなぞりショパンと呟く
47 は死語となりつつひっそりと聖書の中に隠れていたり
50 雑踏にまぎれて安堵宵恵比寿
51 清貧の庭に千両万両も
52 こんな夜は祖母の話の雪女郎
53 胸のうち一寸ふくらむ日向ぼこ
54 描かんとして雪原は白ならず
55 鶴万羽会へし昴り抱く帰路
56 成人の日を待つ躾糸を抜く
57 風花や地上に影をもたざりし
58 小豆煮て母在すごと小正月
59 浮寝鳥羽を忘れてゐる睡り
60 山眠る妻二十年睡る山
61 白息の核の牛連れ生きている
62 崇高を死語とはさせじ寒満月
63 北風つのる砂丘を削るものに砂
64 地上には秘密とふ縛冬銀河
65 臘梅や孫に居りけり恋敵
66 雑兵のごとき冬濤立ち上がる
67 子の嫁に出す有り丈の暖房器
68 飴配り日向ぼこりの仲間入り
70 日本を二つに分けてゐる障子
71 松過ぎてもとの徒然のあけくれに
72 一人とは自由のことよ梅ひらく
73 薺粥神官箸を卸しけり
75 冬晴れや遠くの人を待つごとく
76 一閃の女神のひかり初神楽
77 顰めつ面しつつ野良猫日向ぼこ
78 乳呑児の唇に乗せ寒の紅
79 寒晴や光の玉となる雀
80 大戦と大戦の間の日向ぼこ
81 冬晴や遠くの人を待つごとく
82 図書館に文学老女冬ぬくし
83 水を見に枯野の中を進みけり
84 汲み置きのバケツに遠き冬の空
85 砂山の砂に埋もれし余寒かな
86 終点に近づく席の冬日向
87 民宿を鶴の越えゆく羽音かな
88 名を問はず炉辺に語らひぬ
89 布団干す太平洋を眩しみて
90 散る桜残る桜散る桜
91 初春や遠く聞こえる軍靴の音
/* Takao Tsuji */
2014/02/10
「十四首の歌でおかしいルビのもの九首を選び正しくせよと(『ルビの使い方』)」
「本により『総ルビ』のものありたるが一般的には『ぱらルビ』をふる()」
「漱石の小説なども当て字ありルビ見てはたと膝を叩けり()」
「漢字フェチ日夏は硬い漢字にてルビで示せりその読み方を(日夏愀之介)」
「池波も会話の自然さ保つため漢字にルビをふりたるという()」
「短歌では音数あわせで強引なルビを見るけど行き過ぎの感()」
「いいルビは適切なルビと創意あるルビがよかれと著者はいいたり()」
「例:同宿アイヤドに窪田通治の歌めでて泣く人みたり浪速江の秋(与謝野鉄幹)」
「例:生アるることなくて腐クえなん鴨卵カリノコの無言の白のほの明かりかも(馬場あき子)」
「例:失踪の結末と言うな脱ぎ捨ててあるスリッパの緋の人魚印マーメイド(永田和宏)」