1951年9月。5歳の夏。
夕方になってもツクツクボウシが喧しく鳴いている。風呂の木戸窓からは出はじめた稲穂の向うに沈む夕日がよく見えた。俺は風呂桶に浸かりながらこの景色を見るのが好きだった。
棟続きに納屋があり、その一角に牛小屋がある。納屋とは屋内で行き来ができるようになっているせいか、牛に集る蚊が俺らの方にもやってくるので、やたらと蚊が多い。
牛は目を瞑って(寝てる?)いても尻尾だけは鞭のようの動かして、蚊を追い払っている。一晩中やっているのか?不思議だ。
晩飯時はいつも蚊とのたたかいだ。風が入ってくる窓際にかんてき(七輪)を置き、そこで杉の枝葉を燻べる。煙がムクムクで蚊はどこかへ逃げていくが、俺らは煙たくて煙たくて涙ぽろぽろ、飯を食ってるどころではない。(蚊取線香はなかったの?)
晩飯の後は蚊に食われないようすぐ蚊帳の中に入った。
この蚊帳に入る時、一匹でも蚊が入ってしまうと夜中に「蚊たたき」をやらなければならないので注意が必要だ。
まず、団扇でパタパタと入るところの蚊を追い払い、サッと蚊帳の裾を最小限まくって入るのがコツだ。
布団に横たわると少し冷ゃーとして気持ちよい。極楽極楽。
俺は腹這いになって脚をバタバタさせ手を交互に大きく旋回させクロールの練習をした。
ラジオからはNHKの「アチャコ青春手帖」が聞こえてきた。
俺は蚊帳の中から「もうちょっと音を大きくして!」といった。
夕方になってもツクツクボウシが喧しく鳴いている。風呂の木戸窓からは出はじめた稲穂の向うに沈む夕日がよく見えた。俺は風呂桶に浸かりながらこの景色を見るのが好きだった。
棟続きに納屋があり、その一角に牛小屋がある。納屋とは屋内で行き来ができるようになっているせいか、牛に集る蚊が俺らの方にもやってくるので、やたらと蚊が多い。
牛は目を瞑って(寝てる?)いても尻尾だけは鞭のようの動かして、蚊を追い払っている。一晩中やっているのか?不思議だ。
晩飯時はいつも蚊とのたたかいだ。風が入ってくる窓際にかんてき(七輪)を置き、そこで杉の枝葉を燻べる。煙がムクムクで蚊はどこかへ逃げていくが、俺らは煙たくて煙たくて涙ぽろぽろ、飯を食ってるどころではない。(蚊取線香はなかったの?)
晩飯の後は蚊に食われないようすぐ蚊帳の中に入った。
この蚊帳に入る時、一匹でも蚊が入ってしまうと夜中に「蚊たたき」をやらなければならないので注意が必要だ。
まず、団扇でパタパタと入るところの蚊を追い払い、サッと蚊帳の裾を最小限まくって入るのがコツだ。
布団に横たわると少し冷ゃーとして気持ちよい。極楽極楽。
俺は腹這いになって脚をバタバタさせ手を交互に大きく旋回させクロールの練習をした。
ラジオからはNHKの「アチャコ青春手帖」が聞こえてきた。
俺は蚊帳の中から「もうちょっと音を大きくして!」といった。