運動なんて、まったくしなくてもいい。
そう思っている人は、ほとんどいないだろう。
実際、健康診断で医師に運動をすすめられたり、メタボの自覚がある人は、
いつも「明日からは」、「今週末からは」と考えているのではないだろうか。
けれど、ついつい「時間がない」、「キツいのはイヤ」、
「どうせ続かない」と後回しになってしまう・・・。
【図でわかる】たった3秒、スキマ時間でもできるスゴい筋トレ
そんな人たちのために、どこまで運動のハードルを下げられるか。
研究に研究を重ね、ついに科学的効果が実証された運動が現れた。
実証したのは、西九州大学の中村雅俊先生。
その効果には『ニューヨーク・タイムズ』紙も驚いたというのが、
これからご紹介する「3秒筋トレ」だ。
中村先生の著書『たった3秒筋トレ』から、
「なぜすべての人に、筋トレが必要なのか」をお伝えする。
☆世界最短時間で効果最大!
「3秒筋トレ」とは、その名の通り、
1回3秒かけて、ゆっくりブレーキをかけながら、カラダを動かす運動。
世界でもっとも簡単な筋トレだ、と自負しています。
使うのは、どこの家庭にもある普通の椅子のみ。
ダンベルなどの道具を買う必要もありません。
1畳ほどのスペースさえあれば、自宅ですぐに行えるので、
お金を出して、スポーツジムに通う必要もないのです。
そんな簡単すぎる筋トレで、本当にちゃんと効果があるのか。
そんな疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。
でも、安心してください。
効果があることは、私たちの研究で科学的に実証済みです。
60代から80代の高齢者に、「3秒筋トレ」 を10週間続けてもらったところ、
平均すると10%前後筋力がアップしました。
なかには約30%アップした方も。
普段は運動習慣のなかった60~80代の方々も、わずか10週間で、
筋肉量(筋肉の厚み)や下肢筋力、歩くスピード、握力までアップ。
血圧も下がるという結果が得られています。
30代以降、運動不足だと1年に1~2%の割合で、
筋力は低下すると言われています。
仮に筋力が30%アップしたとするなら、
10週間で筋力年齢が、30歳も若返ったことになります。
10%でも、10歳若返ったことに。
どうでしょう。さっそくやってみたくなりませんか?
☆あなたの筋肉はないのではなく、眠っているだけ
佐賀県太良町にて、中村先生が指導する「3秒筋トレ体操教室」。
60~80代の方々が、3秒筋トレの基本種目に取り組んでいる。
ここで自己紹介をさせてください。
私は九州・佐賀県にある大学で、「理学療法士」を目指す学生たちを育てています。
私自身も理学療法士です。
理学療法士とは、怪我や病気、老化などによって、
衰えたカラダの機能を維持・改善し、起き上がる、立ち上がる、歩くといった
日常生活に欠かせない基本的な動きが、スムーズにできるようにサポートするのが、
おもな仕事。
日常生活に欠かせない基本的な動きをスムーズにこなすためには、
筋力が必要であり、筋力を高める運動が欠かせません。
そこで運動をオススメするのですが、実際に自分から運動できる人は、少数派。
「時間がない」、「つらそう」といった答えが返ってきます。
そこで考えたのが「3秒筋トレ」だったのです。
どんなに忙しい人でも、3秒の時間なら取れるはず。
「3秒筋トレ」は、シンプルなので、誰でも行えますし、つらくもありません。
前述の研究で60代から80代の高齢者に指導した際には、
運動経験がまったくない人でも、難なく続けることができました。
むしろ、「これで本当に筋トレ? こんな簡単な筋トレで本当に効果があるの?」
という不安の声も出たくらい。
それでも前述したように、10週間で最大約30%の筋力アップが達成できたのです。
80代後半の参加者も無理なく続けられて、筋力はアップ。
筋トレするのに、遅すぎることはありません。
筋力が衰えたとしても、筋肉自体がなくなったわけではありません。
あなたのカラダの奥には、磨けば輝き出す (つまり筋力が上がる) 筋肉という“原石”が眠っているのです。
その“原石”を磨いて輝きを取り戻してくれるのが、「3秒筋トレ」。
「いまさら筋トレなんて」と諦めないでください。
☆人生100年時代に必須なのは筋肉への投資
筋力が低下すると、日常生活が不自由になるだけではなく、
高血圧、糖尿病といった生活習慣病やメタボのリスクが高まります。
筋肉が減るということは、基礎代謝が落ち、1日の消費エネルギーが減るということ。
それはそのまま、食ベすぎていなくても、
無駄な贅肉(体脂肪) が増えてしまう「隠れ肥満」につながるのです。
筋力の低下は、将来要支援・要介護になるリスクの1つであり、
自立した健康的な生活が送れる「健康寿命」を短くします。
また、筋力が低下すると、結果的に認知症にもなりやすくなります。
筋力の低下は、自覚しにくいにもかかわらず、ネガティブな影響が大きいことから、
私は 「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」 と呼んでいます。
サイレントキラーは、元来高血圧のことですが、
筋力低下は、高血圧と同じくらい恐れるベき問題なのです。
「私はまだまだ大丈夫」とタカをくくっている間に、筋力低下は静かに進行します。
筋力低下のサインを下にリストアップしていますから、ぜひ参照してください。
1つでも思い当たる人は、筋力が衰えている恐れがあります。
【あなたの筋力をチェック!】
□手すりに頼らないと、階段を上れない。
□手すりに頼らないと、玄関の上がりかまちに上がれない。
□自宅のカーペットの縁や廊下の段差などでつまずきそうになる。
□縁や手すりを持たないと、浴槽に入れない。
□反動をつけないと、寝床から一気に起き上がれない。
□青信号で横断歩道が渡りきれない。
□横断歩道の白線をまたいで歩けない。
□洗濯物を頭より高い位置で干せない。
□5kg入りの米が持ち運べない。
□和式トイレでしゃがむのがつらい。しゃがんだらなかなか立てない。
□椅子から、片脚で立ち上がれない。
□片脚で30秒以上立っていられない。
老後に備えた貯金は、少しずつ減っていきます。
それは筋肉も同じ。
貯金ならぬ“貯筋”で、筋肉が減らないように維持・増強を心がけること。
何歳になっても自分の足で歩き、好きなところで好きなことをする筋力をキープすること。
それが幸せな10年後、20年後につながります。
そのために役立つのが、「3秒筋トレ」での筋肉への投資なのです。
「医師に運動をすすめられた」、「メタボを解消しなければまずい」、
「血圧が気になる」、「血糖値が気になる」、「一生、要介護にはなりたくない」・・・
そんな人は、今日から3秒でできる筋肉への投資を始めましょう。
*本記事の抜粋元『たった3秒筋トレ』では、
3秒筋トレの効果を上げる詳しいメソッド、
日常に気軽に取り入れられる3秒筋トレなども紹介している。
中村 雅俊(西九州大学 准教授/理学療法士)・・ 》
注)記事の原文に、あえて改行など多くした。