Jリーグの初代チェアマンであり、今もなお多様な“スポーツ改革”に邁進する川淵三郎氏。
同じく“高齢者の医療・生き方改革”に励む和田秀樹氏。
両者を突き動かすエネルギーの源泉とは。
『80歳の壁』著者・和田秀樹が“長生きの真意”に迫る連載。
川淵三郎対談2回目。
【写真】川淵三郎×和田秀樹、対談の様子
☆好奇心旺盛な人は若い
川淵三郎
(略)僕は新聞や本を読みながら、
「ああ、これは読めるけど、書けないなあ」という漢字を見つけたら、
書くようにしています。
例えば「矍鑠(かくしゃく)」。
よく見ると「ひとつという意味の隻の上に目が2つ。金の横に楽しい」とある。
「独り(隻)で目がよく見えて、金があると楽しい」なんて覚えるんです。
そんな楽しみ方もありますね。
和田秀樹
僕は精神科医なのに、鬱病の「鬱」の字をすぐ忘れる(笑)。
川淵三郎
そう言えば、孫から「鬱の書き順わかる?」と聞かれたことがあります。
「左の木からだろ」と答えたら
「違う。真ん中の缶から書くんだよ」と言われて。
ただ覚えるだけじゃなく、文字にまつわる話をするのも楽しいですよ。
和田秀樹
学びって、新しいことだけじゃなく、古いことも含めて、
自分の興味が、原動力になると思うんです。
川淵三郎
仰る通りですね。
和田秀樹
年を取れば取るほど、経験知が増えるので、
物事への感動は薄れてきます。
さらに、脳の前頭葉も縮んでくるんです。
その結果、最初に衰えるのが、興味・好奇心・意欲です。
そこをどう保っていくか。
これは元気に長生きするための大事なポイントだと思います。
川淵三郎
「知識は、絶えず磨かれ鍛えられ、そして育まれなければならない。
怠れば衰退あるのみ」というドラッガーの言葉がありますが、
確かに、興味を持つことで、新しい知識や知恵が増え、楽しいことも増えていく。
それは、体を動かすことにも、つながっていくと思うんですよ。
☆常に変化し続ける
和田秀樹
川淵さんは、常に新しい世界に飛び込んで、
興味・好奇心・意欲を持ち続けてこられました。
ところが多くの人は、一定のところに安住しようとします。
変化を嫌うんですね。
あることを「正しい」と思ったら、それがずっと正しいとなる。
川淵三郎
そうなんですよね。
和田秀樹
僕らの世界もそうで、いまだに多くの医者が、
「コレステロールが高いのはダメだ」と言ってる。
本当は、まったく逆なんです。
調査した結果「コレステロールの高い人のほうが、長生きしている」
と明らかになったのに、昔に決めた基準を今も信じているんですよ。
川淵三郎
塩分も、そうでしょ?
和田秀樹
はい。最近では、熱中症ひとつとってみても、
「塩分は、控えないほうがいい」と言われています。
17ヵ国10万人を対象にした調査で、
「食塩の摂取量が、1日10~15gの人は死亡率が低い」とわかった。
なのに日本の基準は「7.5g」のまま変わっていません。
卵とかも「いくつ食べても、いいよ」っていう話に変わったんですけど。
川淵三郎
以前は女房に「卵は1日1個よ」と言われてたんだけど、
今は、もっと食べていいんだよね。
和田秀樹
そうなんです。
世の中って、そうやって、答えが変わっていくんですよ。
だから僕は、やはりずっと現役でいないと、いけないと思うんです。
川淵三郎
なるほど。
和田秀樹
答えは変わっているのに、昔のまま留まっていたら
"浦島太郎状態"になってしまう。
川淵三郎
現役でいれば、変化を肌で感じられる。
だから変化し続けることができる。
和田秀樹
ところが、問題は、今の子たちです。
みんなスマホを持ってるから「新しい答え」を知ってるんです。
でも、「新しい答えが、正しいとは限らない」ということを知らない。
川淵三郎
鵜呑みにしてしまうんだよね。
和田秀樹
そう。新しい答えを知っただけで、満足してしまうんです。
本当は「答えは変わることがある」とか
「今の答えで満足したら、進歩がない」ということがわかったうえで、
「次の答えを探す」ぐらいならいいのに。
川淵三郎
そうですね。
和田秀樹
スポーツの世界のことを僕はよく知りませんが、
勉強の世界は、絶対そうだと思います。
日本では、東大を出てると優秀と思われてますが、
それは18歳の時点での話です。
その先も賢いとは限りません。
サッカーでも野球でも、18歳でプロになり、
それで満足してるような選手は、それ以上伸びないですよね。
それと同じことだと思います。
川淵三郎
大器晩成型もいますからね。
若いうちは目立たなくても、努力してグングン伸びていく選手がいますよ。
和田秀樹
そう考えると、学歴や肩書きとかって、
もう時代に合わないのかもしれませんね。
その人の過去に対する評価なわけですから。
それを外したうえで、どれだけ努力するかとか、伸びるか、
というのが、本当の価値だと僕は思いますけどね。
※3回目に続く
和田秀樹/Hideki Wada 精神科医。
1960年大阪市生まれ。東京大学医学部卒業。
立命館大学生命科学部特任教授、和田秀樹こころと体のクリニック院長。
老年医学の現場に携わるとともに、大学受験のオーソリティとしても知られる。
『80歳の壁』『70歳の正解』など著書多数。
川淵三郎/Saburo Kawabuchi 日本トップリーグ連携機構 会長。
1936年大阪府生まれ。早稲田大学サッカー部を経て、
1961年より古河電工サッカー部でプレイ。1970年に現役引退。
1991年にJリーグ初代チェアマンに就任。
2002年に日本サッカー協会会長に就任。現在は相談役。著書に『独裁力』(幻冬舎)ほかがある。・・ 》
注)記事の原文に、あえて改行など多くした。
和田秀樹さんが“長生きの真意”に迫る連載に於いて、
今回は川淵三郎さんと対談される中、
《・・元気に長生きするポイントは、興味・好奇心・意欲をどう保つか・・》、
和田秀樹さんが発言され、80歳の私は、具体的に解説を学びながら、
多々教示されたりした・・。
私は年金生活の中で、何かと自由きままに
このような日常生活を過ごすことが多く、読みたい本、
幾度も観たい映画作品、或いは聴きたい音楽を、とりとめなく過ごしたりしている。