CHINESE RESTAURANT「虎穴」(フーシュエ)
担々麺の美味しさには定評の高い当店。
かねてから訪問してみたかったが、機会を逸していた。
その評判の良い担々麺の単品オーダーは平日昼間のランチのみの提供で、
夜は「麺飯類のみ」もしくは「麺飯類と点心のみ」のオーダーはできないとのこと。
今回、ディナーを予約するにあたり、
コース料理(6,000円、9,000円、12,000円)の〆に汁なし担々麺をリクエストすることは
可能かを尋ねると、快諾をもらえたので、6,000円でお願いした。
場所は、馬喰横山町駅のA3の出口をでて、清洲橋通りを渡り、ガソリンスタンド脇の道を入って
直進した左手側。連れ(寝太郎さん)の話だと、このあたりは問屋街だとか、夜は人通りも少ない。
時間より少し早く到着したが、引き戸を開け入店。BGMには洋楽が流れ
無機質な壁には、虎や竹の絵などが描かれるスタイリッシュな室内空間。
客席は、カウンター席とテーブル席を含めても20席ほどという話だが、夜の時間帯は
シェフとフロアサービスの男性、2人での切り盛りなので、これぐらいの席数で丁度良いと思う。
テーブル・セッティングは、箸置き、箸(横置き)。
着座後、タオル地のおしぼり(トレー置き)とドリンクメニューをもらう。
卓上には、コース料理のお品書きなし。
料理全8品は、一部を除き、各自分での提供で、サーブ時に口頭説明を受けられる。
ドリンクメニューを広げるとワインの種類が豊富だったが、
私達は、生ビール(ブラウマイスター)@670×3からスタートし、
陳年紹興貴酒5年(ボトル)@3,400×2に進行した。
カラスミの月餅
自家製のカラスミの月餅は、手でいただく。さくほろっとした皮を噛むと
カラスミのぷちぷちとした食感と塩気が口の中に広がる。酒と好相性の大人の月餅だ。
(寝太郎) へえ!面白いね。フレンチやイタリアンの最初の1品みたいだ。
グラスシャンパンに合いそうな味だよね。嬉しいなあ。
前菜盛り合わせ
①白アスパラとアヒルの卵・・・素材の美味さをダイレクトに伝え、鹹蛋の風味がコクをつける。
②生ホタルイカの老酒漬け・・・店のHP(ブログ)によると、本来ホタルイカは内臓に
寄生虫がいるため生食はできないそうだが、マイナス50度の業務用冷凍庫で
しっかり冷凍して虫を殺したうえで漬けこむのだそう。
この時期の食材でもあり、タレの味もナチュラル感があり、美味しくいただけた。
③うるいの胡麻油和え・・・春の訪れを感じさせる山菜。
歯触りの良いうるいはクセがなく、軽いぬめりも胡麻油と調和をみせる。
④叉焼・・・肉々しく、男っぽさを感じさ、絶品感の漂うビジュアル。
⑤冷菜のレバニラ・・・鶏の白レバーとフォアグラのテリーヌ。
舌の上で味わうと、まろやかな旨味と蜜のような甘さ広がるピュアな美味さ。
上の黄ニラでレバニラという庶民的なネーミングなのだろうが
ワインの恋人になり得る味だ。
⑥うどの間にとんぶりを挟んだもの・・・瑞々しくシャキッとした歯触りのうどを
とんぶりのプチプチ食感に合わせて。
⑦百合根2種・・・下は生食、上は蒸したもの。甘みの違いがわかるため、
生から先に食べることを推奨される。
生食できる百合根はシャキシャキとしてえぐみのない爽やかな甘さ。
蒸した百合根はホコホコとして、甘味が強い。
ダイナミックで骨太感のある前菜の盛り合わせは、丁寧に作られ面白味もたっぷり。
叉焼は八角がしっかり効いており、甘みがあって噛みしめるほどにジューシー。
肉質も良いが焼き加減も上々で、見た目を裏切らない味の良さだった。
九十九里産の蛤と大根の揚げ出し
これも春の食材、蛤を盛り込んだ1品。
目に飛び込むグリーンのお野菜使いも素敵だ。
なんと大きく凛々しいハマグリであろうか。
ぷりぷりとして肉厚の蛤は、美味しいエキスがたっぷりと蓄えられ、その旨味が強い。
(寝太郎) 大根はステーキ的な存在感があるよね。リッチだよ。
フレンチでフォアグラに大根を付けあわせたりするけど、それよりも豊かさを感じるなあ。
聞くと、大根は長崎県産“究極の大根”と呼ばれるものを使用。
小ぶりだが、甘味は強く、繊維が少し短く歯切れが良いとのこと。
これを干しエビ、干し貝柱などの出汁で、おでんのように味を含ませ
下味をつけた後、片栗粉をつけ揚げる、という工程を経ているのだそう。
また、揚げる際にも、はじめは中が冷たい状態なのでゆっくり時間をかけ、
最後に温度を上げて香ばしく仕上げているのだ。
この美味さには、素材を吟味するところから始まり、我々を納得させるだけの丁寧な仕事有り!
かりっと香ばしさの残る衣の魅力も捨てがたく、和的な要素も感じられるが、
コース料理の中でもその味は強く印象に残った。
(寝太郎) 細やかな仕事に、メリハリが効いて、料理に色気があるんだよなあ。
サワラ(鰆)自家製の豆板醤を使ったチリソース
サワラ(鰆)は千葉県産。春の食材を惜しみなくコースに盛り込んでくれている。
程よく脂ののったサワラはしっとりとして最高のコンディション。
これをチリソースに絡めていただくのだが、ソースは辛味の中に砂糖の甘みを感じ、
そのものの味は良いけれど、主役である魚を引き立てるものではなく、味の一体感が乏しく思えた。
蝦夷鹿の黒胡椒炒め
野菜は、オニオンヌーボー、肉厚のシイタケなど。仕上げには黒胡椒を散らしている。
肉質も良く、赤身の美味さを味わえるものだが、味つけは単に塩、胡椒だけではない。
当店のシェフは調味料を手作りされると聞いたことがあるが、これもそうなのだろうか、
濃厚でこってりとした甘みが口に残り、勿体ない話だが、自身は食傷傾向に陥る。
さて、料理の進行を聞くとこの後は、食事とスープ、デザートなのだそう。
まだお酒も残っているので、フロアを担当する男性に単品追加を検討すべきか相談したところ、
当店の汁なし担々麺は、おつまみ力もあるとのこと。
先に食事を出し、お酒が終わるころにスープを出す形にしましょうかとの提案も受けた。
担々麺は辛さの調整のリクエストもお願いできる。
(寝太郎) はじめて食べるんだから、お店の味、スタンダードでお願いしないと!
汁なし担々麺は、2名分一皿で出され、シェアするため、辛さの足並みを整えなくてはならない。
先の料理が甘く感じたためか、辛くししたい自分と寝太郎さんの意見が対立。
スタッフさんが間を取り持つ感じで、基本はオーソドックスで手もと調整できるよう
山椒オイルと辛味オイルを置いてくれた。(辛味オイルは辣豆醤と聞こえたけれど…)
「よろしかったら……。」
食事に際し、紙エプロンを用意してもらえた。心遣いに感謝です。
汁なし担々麺(2名分)
汁なし担々麺は、お腹の具合で量の調整可能。普通でお願いした。
麺の頂には、手切りしているのかな?と思うほどのゴツゴツとした極粗ミンチ。
その色味からもわかるように、甜麺醤などで調味され、濃い目の味付けで、炸醤肉の存在感大。
ソースは下に敷いてあるので、かき回し作業。
麺は角ばった感じで、もちっとしたコシのある太麺タイプ。
自身の好みだが、芝麻醤が濃く、甜麺醤の効いた炸醤肉とともに口にしていると、
甘さが先に立ち、もっさりとして重たく、ズシンと腹に溜まる感じ。
山椒の痺れも感じられないため、お手もとオイルを活用するが、ベースの味が濃すぎて
軌道修正が不能。くどい。残念ながらギブアップだ。ごめんなさい。
評判の担々麺を楽しみにしていたのですが、私の苦手とする味の傾向。
“汁あり”であれば、また印象は変わるのだろうか……。
コースに組まれている料理は、様々な顔を持ち、担々麺はパワフルな男っぽさを感じさせた。
金華ハムと薬膳の蒸しスープ
「スープの方どうされますか?」声掛け後にサーブ。
大きくカットしたレンコン、はすの実、淮山、貝柱などがたっぷり。
すでに出汁で力を使い果たしているとは言えど、まだまだ具材力あり。
食感も楽しめ、旨味が凝縮された贅沢な味わいのスープだ。
ここにきて、まさかの上昇気流が吹いた
これは、担々麺をいただく前、できれば食事の前半に提供してもらいたかったなあ。美味いよ。
なお、デザートに入る前には、おしぼりの差し替えを受ける。
ココナッツ風味の焼きプリン
クレームブリュレ。スプーンを差し込む際の、表面のばりっとした手応えが嬉しい。
口に運ぶと中は滑らかな舌触りで、仄かなココナッツの香りに、たまご感もしっかりとして
濃厚な味わい。真面目に作っていることが伝わる味です。
(レンタロー) 中国茶ももらえたんだ!
会計は、1人当たり10,000円(千円未満四捨五入) テーブルチェックにて。
当店、ディナータイムは、もちろんアラカルトでも利用可能である。
当店のオーナーシェフ、小松仁氏は化学調味料を極力使わず、素材の持ち味を
生かすことに努めているのだという。
当初、自身は勉強不足で“虎穴”という店名と担々麺が美味いという評判から、
真っ向勝負の四川料理店をイメージしていたけれど、
こだわりの食材を生かし、季節感を大切に、丁寧な仕事を成す、
独創性に富んだ小松シェフ式の創作中華がコース料理に体現されていた。
「ありがとうございました。おやすみなさい。」
帰り際には、そのシェフが厨房から出て、丁寧にお見送りをしてくれた。感謝です。
虎穴 (フーシュエ)
東京都中央区東日本橋3-5-16 仙石ビル 1F
TEL 03-6661-9811
営業時間/ 11:30~14:00 17:30~22:30(L.O.22:00)
定休日 月曜日 -店舗情報「食べログ」より-
※中国料理満足度数は、4.0~5.0