ほんの些細なことから自分の弱さを嫌というほど思い知らされることがあった。弱さは自身の境遇・前途を破壊して顧みない危うさを内包している。その淵を覗くところまで容易に転がり落ちてしまった。そんな私を救ってくれたのは、やはり女房どのであり、子供たちであった。
大切な人ほど辛く当たってこなかったか。愛する人ほど悲しい思いをさせてこなかったか。
何を大事にすべきか分かっているのに、それをおろそかにしてきた愚かな私がいた。
大切な人たちのために、愛する人たちのためにもう一度、生きなおしてみたい。
23日、有紀さんが大学を卒業した。
前日、徹夜したまま卒業式に臨むために午前5時過ぎ我が家を発った。女房どのは、あいにく仕事を休めず私1人出かけた。途中、二度三度と高速道のサービスエリアに車をとめ、心身を休めながら古賀インターまでたどり着いた。古賀インターから国道3号線に出たところでコンビニの駐車場に車をとめ、女房どのが用意してくれたサンドイッチを頬張った。
ひと息ついた後、有紀さんが髪を結い、着付けをしてもらっている美容室へと向かった。
赤間に着いてほどなく、美容師さんにエスコートされ有紀さんが美容室から姿を現した。ピンク地の着物とダークグリーンの袴に身を包み、髪はきれいにセットされ、メークも施されている有紀さんは、見違えるばかりに美しく輝いていた。
美容師さんたちに見送られ、いったん有紀さんの部屋に寄った後、大学へと向かった。駐車場から卒業式の式場となっている武道館までの道すがら、また式場入り口で、先日、我が家に寄ってくれた有紀さんの友人のみなさんと声を交わすことができた。
卒業式の間、有紀さんの幼かった頃のことを思い出していた。
姉の絵理子さんのように、有紀さんもまた独自の道を自ら切り開き力強く歩き始めている。よく育ってくれたと感謝したい。
卒業式の後、有紀さんはゼミやサークルの集まりに参加し、その後、謝恩会に出席する予定になっていたので式終了後、そのまま有紀さんと別れ、絵理子さんと天使のもとに車を走らせた。
絵理子さん宅で天使と共に昼食をとり、天使と積み木で遊んだ。
穏やかで温かな家庭を絵理子さんはしっかりと築いている。