家族そろっての夏休みをいつにするか、またどのように過ごすか。例年のことだが、絵理子さん・有紀さんがそれぞれ家庭を持ってからというものそこそこ頭を悩ます。それぞれの仕事・勤務先の事情であったり、研二くん・和也くん、それぞれのご両親の許への帰省であったり、子供たちの体調であったりと当然だが色々ある。
ところが、今年のそれは週末に決まって行うくるみさんとのラインのビデオ通話中、アルコールの入った勢いで発した私の思いつきから、その前後の計画も含め、とんとん拍子に進むことになった。
昨年10月、くるみさんの赴任先である徳島を女房どのと2人で訪ねた。
徳島市のシンボル的存在として市民に親しまれているという眉山に上り、そこからの眺望を楽しんだり、その規模で国立新美術館に次いで日本で2番目を誇る大塚国際美術館では、オリジナル原寸大の陶板で再現された1000点以上もの西洋名画の迫力に圧倒されたり、また翌日の昼食では瀬戸内海を180度見渡せ、鳴門海峡を一望できる絶好のロケーションに建つ鳴門パークヒルズ・カリフォルニアテーブルのテラス席で贅沢な時間を過ごしたりと、くるみさんの事前の手配と案内で徳島・鳴門の観光を堪能することができた。次は阿波踊りだねと徳島を後にしのだったが、その機会は思ったより早く訪れることとなった。
ただ、くるみさんとのビデオ通話中、今年の夏休みをどうしようかという話になった際、みんなで阿波踊りを見に行くことにするからあれこれよろしく頼むねとその場の乗りで言ったものの、後から考えてそれが現実のものになるとは実は思っていなかった。
家族それぞれの現在の住まいは長崎、福岡、北九州、そして昨年からくるみさんが徳島の人となった。それまで、みんなが集まるのは長崎か福岡か、遠くても熊本止まりだった。
長崎・徳島間は、高速道路を利用してノンストップで車を走らせたとしても9時間余りかかる。くるみさんは帰省する際、飛行機を利用しているが、幼児を含めての11人での移動となれば、何かと車の方が便利だろう。しかし、大人はともかく幼い子供たちにとってそれは過酷なものとなる。
その場の勢いでくるみさんに話した徳島行きだったが、子供たちのことを考えると少なくとも今夏は難しいねと女房どのと話していた。
そんなことで、この計画にすっかり消極的になっていた私だったが、くるみさんは私の提案に応じ積極的に動いてくれていた。
研究所の先輩や同僚などから阿波踊りに関して様々な情報を仕入れ、最終的に前夜祭の観覧が最善だろうという結論に至り、ついては席を確保するためにはなるべく早く前売り券を購入する必要があるから、その人数を早めに確定させてほしいとある日のビデオ通話で迫られることになった。
つづく