51.嗤う伊右衛門/京極夏彦
■ストーリ
幽晦との境界が破れている。内部の薄明が昏黒に洩れている。
ならばそこから夜が染みて来る。生まれてこのかた笑ったこともない
生真面目な浪人、伊右衛門。疱瘡を病み、顔崩れても凛として正しさを
失わない女、岩。「四谷怪談」が今、極限の愛の物語へと昇華する。
■感想 ☆☆☆☆
不器用な男と不器用な女の愛の物語。
読み終わって、人間が理解しあい、愛し合うことの難しさを思って
切なくなった。当たり前のことだが、人間はみな異なる。その異なる
人間同士がお互いを理解し、お互いの気持ちを伝え合うことは
所詮、不可能なのだ。それでも、理解したい、気持ちを知りたい
と思ってしまうのが愛情なのだろう。
思えば思うほどすれ違ってしまう。思い合い、思い遣り合うことが
ふたりの距離をどんどん遠ざける。その切なさが人間らしくて
四谷怪談というおどろおどろしい物語の原型を見事に忘れることが
できた。思いは言葉にしなければ伝わらない。けれども言葉にしても
伝わるかどうかは分からない。それでも、誰かを愛さずにいられないし
愛して傷ついたり傷つけられたりして生きてしまう。お岩さんと
伊右衛門を身近に感じることができた一冊。
機会があれば、本家本元の怪談としての四谷怪談を再読したい。
日本語の美しさ、日本人の心情の細やかさ、そして日本人であれば
説明されずともなんとなく理解できる愚かだけれど、いとおしい
武士道精神の凛とした美しさ。そういったものを余すことなく
楽しめる作品だった。
■ストーリ
幽晦との境界が破れている。内部の薄明が昏黒に洩れている。
ならばそこから夜が染みて来る。生まれてこのかた笑ったこともない
生真面目な浪人、伊右衛門。疱瘡を病み、顔崩れても凛として正しさを
失わない女、岩。「四谷怪談」が今、極限の愛の物語へと昇華する。
■感想 ☆☆☆☆
不器用な男と不器用な女の愛の物語。
読み終わって、人間が理解しあい、愛し合うことの難しさを思って
切なくなった。当たり前のことだが、人間はみな異なる。その異なる
人間同士がお互いを理解し、お互いの気持ちを伝え合うことは
所詮、不可能なのだ。それでも、理解したい、気持ちを知りたい
と思ってしまうのが愛情なのだろう。
思えば思うほどすれ違ってしまう。思い合い、思い遣り合うことが
ふたりの距離をどんどん遠ざける。その切なさが人間らしくて
四谷怪談というおどろおどろしい物語の原型を見事に忘れることが
できた。思いは言葉にしなければ伝わらない。けれども言葉にしても
伝わるかどうかは分からない。それでも、誰かを愛さずにいられないし
愛して傷ついたり傷つけられたりして生きてしまう。お岩さんと
伊右衛門を身近に感じることができた一冊。
機会があれば、本家本元の怪談としての四谷怪談を再読したい。
日本語の美しさ、日本人の心情の細やかさ、そして日本人であれば
説明されずともなんとなく理解できる愚かだけれど、いとおしい
武士道精神の凛とした美しさ。そういったものを余すことなく
楽しめる作品だった。