太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

なにもない島

2015-11-10 22:45:04 | 日記
だいぶ前に読んだ本に、なにもない島のことが書いてあった。

それを書いたのは、地図に載っていないような場所に行くのが好きな人で

その島も、もちろん地図には載っていない小さな島だ。


その島は船でしか行くことができない。

彼は島に辿り着いたものの、よそ者に慣れていない島人は遠巻きにするばかり。

最初に近づいてきたのは子供らで、彼はおもしろい動作をしながら彼らと打ち解け、

子供の中の一人が、彼を家に連れていって、初めて島の大人と話すことができた。


単語を少しずつ覚えながら、そこでの生活が始まった。




あるとき、何人かが集まっているところで、一人が

「ちょっとタバコ買ってくるワ」

と言ってその場を離れた。

ところが何日たっても、彼は戻ってこない。

気になって、その人の奥さんに聞いたところ、

もうそろそろ戻ってくるのではないか、と特に心配するふうでもなく言った。

聞けば、タバコを買うために小船を出して、延々と漕いでどこかまで行くのだという。



また、あるとき、

今夜は天気が大荒れになるから、大事なものを持って避難するようにと言う。

どこに行くのかと思えば、それぞれに高い椰子の木が割り当てられており、

そのテッペンに体ごと縛り付ける。

彼もみんなのように椰子の木のてっぺんに縛り付けられ、果たしてその夜、

大きな嵐がやってきた。

椰子の木は大揺れに揺れ、右に左に翻弄されて、生きた心地もしなかったが

無事に嵐は去って、翌朝みんな無事で椰子の木から下りてきた。


海抜が低いその島は、たいていの建物は流されてしまっていたが、

誰もそれを嘆く様子もなく、淡々と建て直しにかかった。




私はこの本をもう一度読みたいと思うのだけれど、

作者もタイトルも失念してしまった。



電話もゲームもテレビもない。

島民みんなが家族みたいなもので、そのことの煩わしさもあるかわりに、

失業することも、野たれ死ぬこともない。

ひとつの袋に収まるぐらいの所持品で、生涯をすごす。

持たないから、失うこともない。

今更、その島で暮らすことは難しいかもしれないが、

そこには私たちが、今欲しくても、もう手に入れられないものがたくさんある。






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