太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

怖かったはなし

2016-10-10 18:42:54 | 日記
今までの人生の、怖かった話に順位をつけるとしたら、

堂々の1位はトイレに落ちかけたことだろう。



幼稚園の頃だったと思う。

当時は一般家庭で水洗トイレの設備があるのは珍しかった。

私の家も汲み取り式で、足の下は空洞なのだと思うと高所恐怖症でなくてもゾっとして

なるべく穴の下は見ないようにしていた。

その日、トイレにある大人用サイズのスリッパを履いて便器をまたいだのだが

大きすぎるスリッパが便器に引っかかって、着地するべき床を素通りした足が、

スローモーションのように宙を浮き、あっというまに体ごと便器の中に落ちた。

とっさに両肘を便器に引っ掛け、すんでのところで持ちこたえた。


しかし、いつまでもこのままでいられはしない。

母は留守で、祖母だけが家のどこかにいるはずだ。

何とか祖母を呼びたいのだけれど、声が出てこない。

「おーばーーちゃーー・・・・ん」

弱ったガチョウのような声しか出ないのだ。

足がぶらぶらと浮いている。


(もし、落ちたら)


衛生車のおじさんが汲み取りに来たのはいつだったろう。

私の身長よりも浅かったら助かるけど、そうじゃなかったら・・・

・・・・・・・死ぬだろな。

ずっとずっとあとになっても、あの子はお便所に落ちて死んだって言われるな。

子供ながらに自分の死んだあとのことまで考えた。


腕がしびれてくる頃、弱ったガチョウの声を聞いたか、祖母が来てくれて

私はお便所で死なずに済んだのだった。








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