太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

怒る人

2016-11-15 11:35:08 | 日記
昨日の記事に引続く。(昨日の記事はコチラ

これでも私は、ずいぶん怒れるようになった。

「怒りを表現することができる」ようになった、のほうが正しいか。

長いこと、私は自分に「怒る」ことを許してこなかった。

怒ることは恥ずかしいことであり、それを表現するのはもっと恥ずかしいことであると私は信じて生きていた。

私にどんな仕打ちをした人にでも、砂をかけるようなことをしてはいけない、

と母に言われて育ったこともあるかもしれない。

母は「怒るな」とは言わなかったから、私が勝手に解釈していただけかもしれない。




とにかく、私は怒りが沸いてきても、それを認めずに押し殺すことが上手になった。

生まれた怒りの行き場は、

『こんなことを我慢できる(怒らない)のは私ぐらいのものだ』

という変なプライドとなって君臨し、

怒っている人を心の中で思い切り見下すことでバランスを保つ。

私はひたすらそのプライドを守るために観音様のフリをしていたのだった。

その集大成が、前の夫と出会ってから離婚するまでの17年間なのだが、

しかし観音様じゃない私は爆発して、フツーのニンゲンに戻った。



今の夫に会ってからは、私は堂々と怒り、不機嫌をあらわにし、

時折、観音様のフリをしていた頃を思い出したりしているのだが、

まだまだ私の怒り方は控えめであると思う。




職場にやってくる中国の旅行者たち。

彼らはいとも簡単に怒り、それをあらわにして憚らない。

税金が加算されるのが許せないといって怒り、列に並びたくないといって怒る。




先週の、アメリカ大統領選挙。

その翌日、仕事から帰ると夫の両親の車がなかった。

しばらくして、シュートメが帰ってきた。

ドカドカと足音をたてて、ガレージから私達の住まいに入ってきて、

「このベーグル、あげるわッ!!」

とベーグルを差し出した。

夫が、よせばいいのに「調子はどう?」と聞いた。

調子がいいわけないじゃないか。

「MUCH BETTER!(すっきりしたわよっ!)」



トランプ氏が当選したことで怒っていたシュートメは、

近所の誰かが、トランプ氏の名前を書いたプラカードを立てているのを見て怒り心頭。

車で近所をまわって、すべてのプラカードを引っこ抜き、バキバキに折ってトランクに放り込んできたというのだ。



「信じられない信じられない!明日それを立てた人達と話さなくちゃならないわッ!」



ちなみにベーグルは関係ない。

それは私達におすそ分けしようと思っただけだったが、怒りのあまりに乱暴になっただけ。



どうも、シュートメがあまりに怒っているので夫の父と喧嘩をしたらしく、

父はプイと出て行ってしまったということのようだ。



そういえば、何年も前に夫の父が洗濯室の水道を出しっぱなしにして浸水したとき、

仕事に行っていたシュートメは、すごいスピードで車で戻ってきて、急ブレーキをかけ、

「Let me see!let me see! (見せて見せてどうなってんのよッ!)」

と叫びながら飛び出してきて、惨状を見るなり、あらん限りの責め言葉で父をなじり、

「この落とし前はアンタがつけるのよっっっっ!わかってるわね!」

と叫んだ。





あんだけ怒れたら気持ちがいいだろうなァー




私は感心してしまい、観客席でそれを眺めている。


もしこれが私と、私の夫だったら・・・・・

大変なことになったー、とは思うが、うっかり水浸しにしてしまった夫はじゅうぶん反省しているはずだし、

それを思うと責め立てることなどできない。

でも、

あんなふうにしてみたいとは思わないが、

あんなふうにできる人は羨ましいと、どこかで思ってもいる。



映画の中で、怒って家の中をめちゃくちゃにする人を見ると、

あとで片付けなきゃならないのに、なんでそんなことするかなあと思うけれど、

そうやって怒りを出してしまうことが、本当は大事なのかもしれない、とも思う。




私はずいぶん怒れるようになったとはいえ、

約束を破って平気でいるMに対して、怒ってもいい承認を何度も自分に確かめてみるようでは、

まだまだまだまだ怒り足りないのではないかと、中国人やシュートメを見て思うのである。












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