太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

アナログ

2019-02-25 15:09:28 | 日記
楡周平氏の小説の主人公は、日本版ジェイソン・ボーンのような男で

しかし彼は犯罪と知っていて立ち回る、悪のヒーローだ。

彼は、犯罪によって作った資産をオーストリアの銀行に預けている。

その銀行は、すべてが手作業と紙。

つまり、インターネットバンクもなければ、電子データも何もない。

すべての取引は紙とペンで、すべての記録もまた紙。

まるで100年前さながらのこのシステムでは

ハッカーが入りこんで操作することも、記録をネットで調べることもできないから、ものすごく安全というわけだ。

小説の中だけなのか事実なのかはわからないが、

本当だとすれば、マフィアたちがスイスの銀行に預けるというのはもう古いということか。



私は、まったくのアナログ派だ。

スマートフォンやアイパッドなどでスケジュール管理をする人が多い(殆どかも?)中で

私は手帳にこだわる。

住所録も手書きだ。

電話番号も、電話の中にもあるが、手帳の最後のほうにまとめて残しておく。

機械は壊れたり、なくしたりしたらそれまでだ。

それに私は機械を信用していない。

といって、自分自身は機械よりも信用に足るのかというと、けしてそうではないのだが

機械に任せて何か起きたとき、私には手も足も出ないけれど

私が管理できる範囲内で起きたことには、なんとかしようがあるのではないかと思うのだ。


日本の銀行には、通帳という便利なものがある。

通帳を見れば、お金の動きが一目瞭然。

ハワイの銀行には通帳など存在しない。

じゃあ銀行に任せておけば安心かというと、どうだろう。

夫がキャッシュカード作成を頼んだが、忘れられ、

1ヶ月以上かかってできたキャッシュカードの、引き落とし先口座が間違っていた。

この口座から、と、ちゃんとデスクで担当と面と向かって書類を書いたのに、できてきたのは別の口座だったのだ。

面倒なのでそのままにしてある。

ハワイに住み始めて、のっけから銀行のお粗末さに呆れかえった経験から、私は銀行も信用していない。



私の絵が売れた代金が、ギャラリーから小切手で届く。

それを銀行の窓口に出して、口座に入れたり現金にしたりするのだが、

銀行があいている時間に行くのが、なかなか難しい。

それで夫に頼んで、ATMから入金してもらっていた。

ATMに小切手を差し込むと、機械がそれを読み取って画面に表示し、口座に入れる、を押すだけ。

先日、新しく取引を始めたギャラリーから、最初の小切手が届いたら

私の苗字に、余計なアルファベットが入っていた。

相手先に印字し直してもらわなくては、という私に、夫はその必要はない、と言う。

スペルが違ってるぐらい大丈夫だというのだ。

「だって前の職場でもらってた小切手、ずっとぼくの名前間違ってたし」

日本じゃありえない。

鈴木敏夫が、木敏夫だったら認められないに決まってる。


試しにそれをATMに入れてみた。

するりと小切手が飲み込まれる瞬間、背中がゾッとする。

このゾッとするのが嫌で、私はキャッシュカードを持っていない。

吸い込まれたカードが出てこなかったら、と思うと気が気ではないのだ。

もちろん、これが日本ならゾッとはしない。

機械が小切手を読み込むのに時間がかかり、やっと画面に小切手が映し出され

「金額を入力してください」という表示が出た。

いつもなら、小切手に書かれた金額が表示され、確認するように言ってくる。

「割り増しして入力したらどうなるのかねえ」

正直に金額を入れたけれど、釈然としない思いが残った。

ちゃんと口座に入ったかどうかも不安だ。



便利さに負けて、ATMを使うのはもうやめようと思う。

小切手は、窓口で現金に換えよう。

口座に入れたければ、あらたに現金を窓口で入れればいい。

今日、溜めておいた2枚の小切手を現金に換えてきた。

銀行を信用していなかった、夫の祖父は、地下室の瓶の中に大量の現金を貯めていたそうだ。

祖父が亡くなったあと、家を片付けていた子供達(夫の父とその姉)が地下室の瓶を見つけて

おじいちゃんらしいや、とみんなでおおいに笑ったという。

しかし私は夫の祖父を笑えないのである。

















にほんブログ村 海外生活ブログ 海外移住へにほんブログ村