寝ている間にみる夢の、その突拍子のなさはどうしたことだろう。
記憶をベースにしたものならともかく、夢の中だけで友人であるとか、行ったこともない場所で夢の中では当然のように暮らしているとか。
子供の頃から、変な夢をよくみた。
学校から帰ると、近所の人たちがみんなチョンマゲに着物を着ていて、その一人に包丁を持って追いかけられたことがある。
荒れ果てた土地で仲間数人と何者かから逃げていて、迷い込んだ廃墟のような病院には、階段や廊下にゾンビのような人たちがたくさんいたこともある。
今朝の夢は、夢の中だけの友人の家にいて、家に帰らなくてはならないのだが車がない。
すると友人が250ccのバイクを貸してくれるという。
バイクは乗ったことがないと言うと、簡単だから乗り方を教えるというので乗ってみる。
「アクセルは、ここ」
そう言って、座面シートの横にある黒い蓋を開けたところにあるボタンを指す。
「ブレーキは、ここね」
アクセルとは反対側の横にあるボタンを指す。
「えー、手のグリップについてるんじゃないのー?」
「そんな、スクーターじゃないんだからさ」
とにかくアシはそれしかないので、試しに外に出てみる。
外は暗く、雨が降っていた。前に進むには、横のボタンを押し、止まるときには反対側のボタンを押すので、運転している間中、片手運転ということになる。
雨の中をヨロヨロと運転してみるが、危なっかしくて家まで辿り着ける気がしない。そこで友人の家に戻ると、友人と家族が集まっている。
「ああ、そうだった。あなたのお父さん、今日亡くなったんだったよね」
そこで目覚ましが鳴って目が覚めた。
夢の中ではよく知っている、あの人は誰?
いったい夢のアイデアはどこからやってくるのだろう。
そしてふと、思い立つ。
夢は私の、ひとつのパラレルワールドなのではないか。
パラレルワールドが実在するかどうかは知らないけれど、同時に並行展開しているパラレルワールドのひとつが、夢として出てくると考えたら、この現実世界では知らない人が友人でも納得がいく。
そうだとしたら、どこかの世界の私は、今この現実世界を夢にみることもあるだろう。
その話を夫にしたら、
「なんか知らないけど変なガイジンがダンナでさー、南国みたいなとこが出てくるんだよねえ、何だろう?って言ってるかもよー」
と言って笑った。
それにしても、シートの左右にアクセルとブレーキボタンがあるバイクを運転しなきゃならない世界に住んでいる私は難儀なことである。