太平洋のまんなかで

南の島ハワイの、のほほんな日々

めんどりの中のめんどり

2024-03-19 07:16:17 | 日記
私の職場は、広大な自然の中にある。
一応、ちゃんと管理も手入れもされているのだが、1日の大半は人間の気配がない。
さきごろ管理者がマングースを駆除したかなにかで、今はニワトリのベビーラッシュである。ヘビがいないハワイでは、鳥の天敵はマングースなのだ。
1羽のママに、9~12羽のちっこいヒヨコという家族が、いくつも走り回っている。

まだ尻尾もないような小さいヒヨコたちは可愛くて、癒されるのだけれど、好奇心が強いあまりに兄弟たちとはぐれてしまうヒヨコや、具合が悪そうなヒヨコを見ると胸が痛む。

先日、お店を施錠して帰るとき、1羽の黒っぽいヒヨコが母親を探して鳴いている。
1時間ほど前から、声だけは聞こえていた。
まだ尻尾もない小さいヒヨコなのに、高くてよく通る声で鳴く。
このまま見過ごして帰ることなどできようか。
建物の反対側にまわってみたら、同じような大きさのヒヨコをたくさん連れたニワトリを発見。
きっとそれが家族に違いない。鳴いているヒヨコを捕まえようとするが、怖がって逃げ回る。
「おかあさん、みつけたよ。みんなアッチにいるから連れていってあげるよ」
声をかけながら追いかけて、やっとのことで捕獲した。手のひらの窪みにすっぽりおさまるほどの小さな命。
家族のもとにヒヨコを戻し、晴れて今夜は眠れるぞと帰宅した。


数日後、同僚が

「あのヒヨコ、違う家族のヒヨコだったみたいよ」

と言う。
動物好きの同僚は、どのニワトリにいくつのヒヨコがいる、というのを把握していて、私がヒヨコを返した(と思っている)ニワトリのヒヨコの数が1羽多いというのだ。

「でもね、あのママは偉い。ちゃんと面倒みてるもの」

一般的に、ニワトリはよそのヒヨコには冷たく、くちばしで突っついて追い払ったりする。
それなのに、そのママは、よそのヒヨコを自分の子供と同じに羽の下にいれたりしているというのだ。
ニワトリにも個性があって、情が厚いのもいれば、そうでないのもいるのだろうか。

私はそれを聞いて感動し、そのニワトリのママに走り寄った。

「アンタは偉い!めんどりの中のめんどりだよ!ありがとう、ありがとう!」

しゃがんで拍手を送った。
ニワトリのママはどこ吹く風だったけれど、私はそのママにめんどり界のMVPを送ってあげたい。