いよいよ僕らの夏休みがやって来ました。
かねてから計画していたスノーカントリートレイルの4日間連続ハイクを実行することにしました。
さて天気は?
『おお、なんと全部雨じゃ』
普通の山行ならばやめてしまうところですが、僕には「ある狙い」がありました。
『雨ならば涼しいはずだ』
前回の熱中症によって脚がつってしまい、さらにふらつきや秒速5センチという歩行スピード、そして声が出なくなってしまった経験から、猛暑恐怖症になっていたのです。
さらに持参した「塩」を紛失してしまう決定的な失態を犯し、事態を悪化させた反省もありました。
ある時から頻繁に脚がつるようになってしまい、大量の汗をかく時は「塩」を舐めながら登るという猛暑対策を試すようになり、これがかなりの効果を上げていました。
『迷うことはない、行くのみ』
固い決心のもと実行を決断しました。
まずいつも通り前夜に出発します。
今回は赤城高原SAで夜を明かしました。
日付をまたいで30%割引を賢く利用します。
なんてったって5,000円が3,500円になっちゃいますからね。
ちょっと早起きして「上毛高原駅」の駅前駐車場に停めました。
1日1,000円で5日まで連続駐車できます。
あとで気がついたのですが、道を挟んだところに1日500円というところもありました。
うーん、気がつきませんでした。
4時30分起床。
トイレ、朝食を済ませ車を走らせます。
6時に「上毛高原駅」に到着しました。
天候はやはり雨。
猿ヶ京行きのバスで「逆桜」までアクセスします。
始発は7時30分です。
しっかりとした雨支度ではなく、足元を濡らさないための極薄レインパンツにとりあえずのトレッキングシャツ、その下に撥水性の下着、帽子は雨用だと蒸れ過ぎるので軽く撥水スプレーを施した一番つばの大きなものを身につけました。
乗客は僕と部活に行く高校生3人組だけです。
途中で高校生達が降ります。
ところが、両替せずに料金箱に乗車賃以上を入れてしまいました。「差額を友達に払ってね」とバスの運転手さんが言っています。
その友達というのも自分の料金を入れてしまい「あーだめだよ、だから入れすぎた分を引いて料金箱に入れて、あとで差額をさっきの子に渡すんだよ」と。
結局返金の手続きをするためにしばらく停車し、バスは大幅に遅れてしまいました。
自動販売機みたいにお釣りが出てくると思ったのでしょうかね。
23駅の乗車で「逆桜」のバス停に到着しました。
東屋があるのはここを起点にした南下するコースを歩いたので知っています。
ここでシャツを濡らさないように脱いでしまいまい、撥水性下着のシャツのみで歩き始めました。
8時03分「逆桜」スタート。
すぐに赤谷湖が現れます。
低い雲が周辺を漂い、無風でグラッシーな湖面が灰色の空を怪しく映し出しています。
とりあえず空からはまだ雨が降っていません。
9時55分、およそ2時間歩いて「三国自然歩道」の入り口に立ちました。
ここからは山道になります。
三国峠を目指します。
その延長線上に本日の目的地「平標山の家」があります。
スノーカントリートレイルのマップによると「長岡藩士の墓よりも低標高の場所にはヤマビルが生息していますのでご注意ください」とあります。
『そうだった。塩水スプレーを用意するのを怠った』と思いましたが、あとの祭りです。
よく「ズボンの裾を靴下の中に入れるといい」とか、「厚手のストッキングを履く」とかいろいろ対処法がありますが、どれも確実ではないので『その時はとの時さ』とばかりに突っ込んで行きました。
やはりヒルが気になってズボンの裾を時々確認しながら歩いて行きました。
『なんか動いてる、うわっヒルだ』
ついに這い上がって来ました。
カッパのズボンをクネクネと動く薄茶色の物体がいました。
ストックで叩き落とそうとしてもなかなか落ちてくれません。
さらにストックで擦り落とそうと思いましたが、よく見ると頭を突っ込んでいます。
『てめぇ、カッパを突き破ろうってか?』
すごい奴らだ。
そうだアレ、アレを使おう。
ディート2倍の虫除けスプレー噴射。
ポロっと落ちてくれました。
『よっしゃ効いたぞ』
その後、靴に3匹足首に2匹のヒルが僕を襲いました。
足首に付いたヒルは僕の血を吸っていたようですが、吸い始めだったのか溶血作用のある物質を僕の体内に送り込む前に僕にスプレー攻撃され、あえなく堕ちていきました。
もう1匹は丸々としてドリルのように頭を入れてくるところを僕に見つかり、スプレーを浴びて朽ちていきました。
11時16分、そんな中「大般若塚」に到着しました。
ついに空から雨が容赦なく激しく降り始めました。
ちょいと探しましたがスノーカントリートレイルの道標が見つけられず(まだ取り付けられていないのかな?)石碑を入れてチェックポイントの写真を撮りました。
ヒルに警戒しながらも「長岡藩士の墓」に到着です。
時刻は12時07分。
『ヒルはここまでだといいなぁ』
雨が強くなったり弱くなってりしています。
増水した沢が僕の足を止めました。
『足を置くところがないな、参った』
仕方がないので、水を被った岩に足を突っ込むことにしました。最小限のダメージで済みました。
12時35分三国峠。
ここから三国山に向けて低木の急登を行くことになります。
雨は土砂降りになり、容赦なく僕を襲います。
さらに雷鳴が⋯。
ついに前線が南下しはじめたようです。
風も強くなり、もう身体全体がぐっしょりと濡れました。
乾いているところはもう1箇所もありません。
ここからは稜線歩行となります。
さらに激しい雷鳴が僕の心の強さを試すように何度も脅してきます。
風も強くなり、薄いカッパを羽織りました。
びしょ濡れの身体に着るカッパといったら、生肉をビニール袋に入れるかのような感覚でした。
低い樹木の下で身を潜めること数回、さらに頻繁に雷鳴が響き急に冷たくなる空気が僕の不安をさらに掻き立てます。
『これは少し停滞した方が良いな』
スマホを取り出し「山の家」に連絡を入れます。
『もしもし、雷が酷いので少し停滞ようと思います。ちょっと到着が遅れます』と言うと『今日は降ったり止んだりですねぇ、気をつけて来てください。高い木の下にいないで下さいね』
割とのんびりした声に落ち着きを取り戻しました。
15時30分、雷の隙を縫って「三角山」の山頂を通過しました。
三角山は展望が良く、こんな天気じゃなければザックを降ろして一休みしたいところでしたが、 今はその展望の良さが逆に恐ろしいぐらいです。
三角山を越え、大源太山に向かうところでついに前線が真上を通過したようです。
雷鳴音は真上を通過中です。
そして僕は低木の中に身を寄せ姿勢を低くして待機することにしました。
その2へ続きます。
かねてから計画していたスノーカントリートレイルの4日間連続ハイクを実行することにしました。
さて天気は?
『おお、なんと全部雨じゃ』
普通の山行ならばやめてしまうところですが、僕には「ある狙い」がありました。
『雨ならば涼しいはずだ』
前回の熱中症によって脚がつってしまい、さらにふらつきや秒速5センチという歩行スピード、そして声が出なくなってしまった経験から、猛暑恐怖症になっていたのです。
さらに持参した「塩」を紛失してしまう決定的な失態を犯し、事態を悪化させた反省もありました。
ある時から頻繁に脚がつるようになってしまい、大量の汗をかく時は「塩」を舐めながら登るという猛暑対策を試すようになり、これがかなりの効果を上げていました。
『迷うことはない、行くのみ』
固い決心のもと実行を決断しました。
まずいつも通り前夜に出発します。
今回は赤城高原SAで夜を明かしました。
日付をまたいで30%割引を賢く利用します。
なんてったって5,000円が3,500円になっちゃいますからね。
ちょっと早起きして「上毛高原駅」の駅前駐車場に停めました。
1日1,000円で5日まで連続駐車できます。
あとで気がついたのですが、道を挟んだところに1日500円というところもありました。
うーん、気がつきませんでした。
4時30分起床。
トイレ、朝食を済ませ車を走らせます。
6時に「上毛高原駅」に到着しました。
天候はやはり雨。
猿ヶ京行きのバスで「逆桜」までアクセスします。
始発は7時30分です。
しっかりとした雨支度ではなく、足元を濡らさないための極薄レインパンツにとりあえずのトレッキングシャツ、その下に撥水性の下着、帽子は雨用だと蒸れ過ぎるので軽く撥水スプレーを施した一番つばの大きなものを身につけました。
乗客は僕と部活に行く高校生3人組だけです。
途中で高校生達が降ります。
ところが、両替せずに料金箱に乗車賃以上を入れてしまいました。「差額を友達に払ってね」とバスの運転手さんが言っています。
その友達というのも自分の料金を入れてしまい「あーだめだよ、だから入れすぎた分を引いて料金箱に入れて、あとで差額をさっきの子に渡すんだよ」と。
結局返金の手続きをするためにしばらく停車し、バスは大幅に遅れてしまいました。
自動販売機みたいにお釣りが出てくると思ったのでしょうかね。
23駅の乗車で「逆桜」のバス停に到着しました。
東屋があるのはここを起点にした南下するコースを歩いたので知っています。
ここでシャツを濡らさないように脱いでしまいまい、撥水性下着のシャツのみで歩き始めました。
8時03分「逆桜」スタート。
すぐに赤谷湖が現れます。
低い雲が周辺を漂い、無風でグラッシーな湖面が灰色の空を怪しく映し出しています。
とりあえず空からはまだ雨が降っていません。
9時55分、およそ2時間歩いて「三国自然歩道」の入り口に立ちました。
ここからは山道になります。
三国峠を目指します。
その延長線上に本日の目的地「平標山の家」があります。
スノーカントリートレイルのマップによると「長岡藩士の墓よりも低標高の場所にはヤマビルが生息していますのでご注意ください」とあります。
『そうだった。塩水スプレーを用意するのを怠った』と思いましたが、あとの祭りです。
よく「ズボンの裾を靴下の中に入れるといい」とか、「厚手のストッキングを履く」とかいろいろ対処法がありますが、どれも確実ではないので『その時はとの時さ』とばかりに突っ込んで行きました。
やはりヒルが気になってズボンの裾を時々確認しながら歩いて行きました。
『なんか動いてる、うわっヒルだ』
ついに這い上がって来ました。
カッパのズボンをクネクネと動く薄茶色の物体がいました。
ストックで叩き落とそうとしてもなかなか落ちてくれません。
さらにストックで擦り落とそうと思いましたが、よく見ると頭を突っ込んでいます。
『てめぇ、カッパを突き破ろうってか?』
すごい奴らだ。
そうだアレ、アレを使おう。
ディート2倍の虫除けスプレー噴射。
ポロっと落ちてくれました。
『よっしゃ効いたぞ』
その後、靴に3匹足首に2匹のヒルが僕を襲いました。
足首に付いたヒルは僕の血を吸っていたようですが、吸い始めだったのか溶血作用のある物質を僕の体内に送り込む前に僕にスプレー攻撃され、あえなく堕ちていきました。
もう1匹は丸々としてドリルのように頭を入れてくるところを僕に見つかり、スプレーを浴びて朽ちていきました。
11時16分、そんな中「大般若塚」に到着しました。
ついに空から雨が容赦なく激しく降り始めました。
ちょいと探しましたがスノーカントリートレイルの道標が見つけられず(まだ取り付けられていないのかな?)石碑を入れてチェックポイントの写真を撮りました。
ヒルに警戒しながらも「長岡藩士の墓」に到着です。
時刻は12時07分。
『ヒルはここまでだといいなぁ』
雨が強くなったり弱くなってりしています。
増水した沢が僕の足を止めました。
『足を置くところがないな、参った』
仕方がないので、水を被った岩に足を突っ込むことにしました。最小限のダメージで済みました。
12時35分三国峠。
ここから三国山に向けて低木の急登を行くことになります。
雨は土砂降りになり、容赦なく僕を襲います。
さらに雷鳴が⋯。
ついに前線が南下しはじめたようです。
風も強くなり、もう身体全体がぐっしょりと濡れました。
乾いているところはもう1箇所もありません。
ここからは稜線歩行となります。
さらに激しい雷鳴が僕の心の強さを試すように何度も脅してきます。
風も強くなり、薄いカッパを羽織りました。
びしょ濡れの身体に着るカッパといったら、生肉をビニール袋に入れるかのような感覚でした。
低い樹木の下で身を潜めること数回、さらに頻繁に雷鳴が響き急に冷たくなる空気が僕の不安をさらに掻き立てます。
『これは少し停滞した方が良いな』
スマホを取り出し「山の家」に連絡を入れます。
『もしもし、雷が酷いので少し停滞ようと思います。ちょっと到着が遅れます』と言うと『今日は降ったり止んだりですねぇ、気をつけて来てください。高い木の下にいないで下さいね』
割とのんびりした声に落ち着きを取り戻しました。
15時30分、雷の隙を縫って「三角山」の山頂を通過しました。
三角山は展望が良く、こんな天気じゃなければザックを降ろして一休みしたいところでしたが、 今はその展望の良さが逆に恐ろしいぐらいです。
三角山を越え、大源太山に向かうところでついに前線が真上を通過したようです。
雷鳴音は真上を通過中です。
そして僕は低木の中に身を寄せ姿勢を低くして待機することにしました。
その2へ続きます。