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『本格的木造建築は、鉄骨造より堅牢で長寿命を寺院・城郭が証明』 ―木造建築の普及には、無垢の木材では無理、新建材 CLT のコスト削減を―

2024-09-19 09:13:27 | 技術

『本格的木造建築は、鉄骨造より堅牢で長寿命を寺院・城郭が証明』
『木造建築の普及には、無垢の木材では無理、新建材 CLT のコスト削減を』

 

 先ずは、表題の寺院・城郭の長寿命の一例の紹介です。 天武天皇が皇后(後の持統天皇)の病気回復を祈り創建した奈良市の薬師寺・東塔は 730 年の完成から、幾度も修理を繰り返したが、全解体は 2006 年始まった今回の『大修理』が令和 2 年春に終わった。 約 1,300 年以上も『もって』いる。

          ウエブ情報から引用

 期待の画期的な新建材 CLT(Cross Laminated Timber)の普及には、日本の林業の現状では、多々困難な面がありそうです。 ましてや、林業大国のロシア・ブラジル・カナダ・アメリカ等とコスト面で競合できることが条件になります。

 平野よりも山野、それも急傾斜地の多い日本でも、期待が持てそうなのは、比較的適合した樹木があります。 代表的な樹木は、杉や檜で、傾斜地でも、まっすぐ伸びる木で、成長も早く、建築材として、新建材 CLT の材料としても、優れています。 しかも、杉や檜は円錐形に育って場所あまりとらず、植林の効率も良いと言われています。

 数年前に、新建材 CLT について開発・実用化された発表されました。 この時、久々のヒット製品だと感激したのが下記ウェブ情報です。 再度確認します。

 ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料です。 厚みのある大きな板であり、建築の構造材の他、土木用材、家具などにも使用されています。

 その強度は『鉄筋コンクリートに匹敵』する。 オーストリアで最も進み、すでに 9 階建てまで許可され、ロンドンでも 9 階建てが実現している。 この新建材 CLT はベニヤ板とは区別されている。

 新建材 CLT は、救世主のように思われますが、日本の林業の弱点である;

『森林所有が小規模で、土地が急峻である。 伐採搬出が旧態依然でコストが高すぎる。 外材のように大量安定供給ができない。 木材の流通ルートが複雑すぎる。 乾燥させた木材が少ない。 品質がバラバラで使いづらい。』
 
 これをカバーできるか疑問が多く、更に単層人工林・人手不足・山林の地主不明問題まである中で、林業大国のロシア・ブラジル・カナダ・アメリカ・中国等が、新建材 CLT の生産、輸出を始めたら、原木輸出より輸送効率も良く、新建材 CLT の国際競争力は日本には、分が無いように思われます

 前置きが長くなりました。 先日(20180725)テレビ民放某局がワイドショーで、新建材 CLT の超高層ビルの紹介がされました。 その概要はウェブにありました。 早速ウェブ情報からです。

 住友林業は、2 月 8 日、2041 年までに木造を主部材とした超高層ビルを都内に建設する構想「W350」を発表した。 高さ 350m、地上 70 階建ての複合施設で、総工費は約 6000 億円。 同社が日建設計の協力を得て計画をまとめた。 実現すれば、現在三菱地所が東京駅北側の常盤橋街区で建設を進める高さ約390
メートルの超高層ビルに次ぐ高さとなる。 新建材 CLT の耐用・耐久年数は、50-70 年と言われておりますが、鉄筋コンクリートビルとの正確な寿命比較はデータがなくできません。

     

ウエブ情報から引用

 因みに、
あべのハルカスの総工費は、1,300 億円(高さ 300ⅿ、60 階)、
横浜のランドマークは、総工費は、2,700 億円(高さ 296ⅿ、70 階)です。

 さて、この新建材 CLT 工法の優位性;
① 建築期間の短縮、工場で製造・加工できる。
② 断熱性が高く、省エネ効果、木材は多孔質材料で断熱性大。
③ 優れた耐震性、PC コンクリートに対して、四分の一の重量。

 この新建材 CLT と CO2 削減について;
一部は、先の備忘録『木を植えよう』に重複します。 森林は、言わば CO₂の一時貯蔵庫で、樹木がすべて枯れ、完全に分解してしまえば、樹木が吸収したCO₂がすべて放出される。 しかし実際には、枯れ死した樹木の全てがすぐ分解されるわけではありません。 その多くは、有機物として土壌中に長く蓄え
られます。

 一方、伐採した樹木すべてが、すぐに燃やされて、 CO₂になるわけでなく木材として住宅や家具になります。 長く使うほど CO₂が長く固定されます。 ここで新建材 CLT は再利用もできます。 因みに、昔の木造の神社仏閣・城郭は数百年の寿命(これは鉄筋コンクリートより長寿命)です。 名古屋城の完成
1612 年、1945 年空襲で焼失から判るように、優に 300 年以上持ちます。

 然しながら、現在の戸建て木造住宅の平均耐用年数ですが、日本では約 30-40年、米国約 40-50 年、英国約 50-70 年と言われます。 田舎には今でも築後 100年以上の木造民家が多々あります。 『エコの本質』を、昔の人は感覚的に知っていたが、現代人は、『安価最優先』でした。

 日本は森林大国で、狭い国土にすでに沢山の森があるので、大規模植林の余地はあまりないと言われます。 更に課題は沢山あります。 傷んだ森を、木、亜高木、低木、下草、そして土の中のカビやバクテリヤで構成される『本物の森』に戻さなければなりません。 『本物の森』でない、単層人工造林(杉、松、カラマツ等)では最近の異常な豪雨や津波には耐えられません。 今では、開発で激減、細々と残っている、日本の『鎮守の森』が将に『本物の森』です。

 偏見ではありますが、『鎮守の森・本物の森』は、多神教(自然の造物、何にでも神は宿る)の賜物です。 余談ですが、今の三大宗教(一神教)は奇しくも、森ではなく砂漠で生まれています。

 『京都議定書』には、先進国が発展途上国に援助して植林などの CO₂削減策を行った場合、その先進国の削減として認めようとする『グリーン開発メカニズム」があります。 『森が泣いている』先進国日本は、日本の木材大量輸入に起因する森林伐採跡地のある国の植林支援は元より、足元の日本の森林回復
も必須です。

 『本物の森』には、必ず直根性・深根性の照葉樹、楠、シイ、椿があります。楠は、葉が全部焼けても再生しますし、シイ・椿は潮風や津波に強いです。 松は、横根性で、津波に弱く、油分が多く火にも弱いことは、東日本大震災でもよく判りました。

 新建材 CLT の利用・活用をベースに、日本の林業と住宅事情が改善されることを期待しています。 新建材 CLT の材料、杉・檜をいかに輸入材より安くできるか、無花粉杉は十分足りているか等、問題も山積みですが頑張りましょう。
(記事投稿日:2020/09/22、最終更新日:2024/09/19、#225) 


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