原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

今年はラデツキーが聴けるか?!

2008年01月02日 | 音楽
 我が家の元旦の夜の恒例行事は、NHKの「ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート」を聴くことである。
 毎年世界的に著名な指揮者が、音楽の都ウィーンの“ウィーン楽友協会大ホール”においてウィーンフィルを指揮するこのニューイヤーコンサートを聴くことなくして、我が家の1年は始まらない。

 個人的には大トリの「ラデツキー行進曲」が大好きである。(いつもいつもド素人好みで恐縮ですが…。)アンコールのクライマックス「ラデツキー行進曲」で最高に盛り上がり、“ブラボー!!”の歓声が会場中にこだまして幕を閉じるラストシーンを観ては毎年涙を流している。

 ところが、この「ラデツキー行進曲」が演奏されない年があった。2004年12月26日に起きたスマトラ島沖巨大地震による津波のため、30万人にものぼる尊い命が失われた。あの大惨事のあおりを受けて、2005年のニューイヤーコンサートでは「ラデツキー行進曲」が指揮者の判断で犠牲者の冥福を祈るために割愛されてしまったのだ。あの大惨事の直後に、まさか快活な行進曲を演奏して一部の人間が盛り上がる訳にはいかない。それは十分理解しているし不謹慎であることも重々承知ではあるが、「ラデツキー行進曲」を聴けないニューイヤーコンサートほど欲求不満を募られるものはない。
 そういう経過もあるため、またまた不謹慎ではあるのだが表題の通り“今年はラデツキーが聴けるか?!”昨年末に相当気をもんだ。なぜならば、昨年末にパキスタンでブット元首相暗殺事件が起き、現在パキスタンは内紛で多数の犠牲者が出ているだめだ。 パキスタン国民の皆さんには大変申し訳ない思いであるが、今年は「ラデツキー行進曲」を堪能できた。

 ニューイヤーコンサート歴代指揮者の中で私の一番のお気に入りは、2001年、2003年のオーストリアのニコラウス・ハノンコート(アーノンクール)氏である。この方、ご年齢にもかかわらずとってもお茶目な指揮者でいらっしゃる。そしてサービス精神旺盛で客席との一体感がいいのだ。指揮に抑揚があるのが特徴だが、ハノンコート氏の「ラデツキー行進曲」は脳裏に焼きついている。観客席に向かって観客のために手拍子で指揮をしたのは、未だかつてこの方だけであろう。

 さて、昨日放送された2008年ニューイヤーコンサートを振り返ろう。
 今年の指揮者はフランスの名匠ジョルジュ・プレートル氏であった。フランス出身の指揮者は歴代初めてのことであるらしい。83歳の高齢でいらっしゃるにもかかわらず、精力的に指揮をされていた。
 まず、第一部。「ナポレオン行進曲」からの快活なスタートである。「オーストリアの森つばめ」「ラクセン・ブルク・ポルカ」「パリのワルツ」「ベルサイユギャロップ」「天国と地獄のカドリーユ」「ギャロップ小さな広告」と続く。さすがにフランスの指揮者だけあって、フランスにゆかりの選曲が目立つ。
 そして、第二部に入ると毎年バレエも楽しめる。「ワルツ人生を楽しめる作品340」では宮殿風の建物の中の部屋や回廊を舞台にして、そこを移動しながら繰り広げられるバレエが圧巻であった。そして、太陽の下の屋外でもバレエが繰り広げられるのであるが、これは普段はなかなか観ることができない。 その後ポルカが続き、「ポルカパリジェンヌ」では白馬数頭がすばらしいダンスを披露した。そして今年開催される北京オリンピックを意識した「中国風ギャロップ」、アンコールの「スポーツポルカ」、前後するが超有名な「皇帝円舞曲」と続き、毎年恒例の「美しく青きドナウ」では歴代初めての試みとして会場内でダンスが披露された。あの狭い会場のどこで踊るのか興味を持っていたのだが、観客席の通路や階段がダンスの舞台となった。これがまたすばらしく粋な演出であった。 そしていよいよ大トリの「ラデツキー行進曲」であるが、今年のラデツキーはややゆっくり目のテンポであったが無事演奏され、会場のブラボーの歓声の渦の中、今年のニューイヤーコンサートは無事幕を閉じた。

 この1年も何とか平和に経緯して、来年のニューイヤーコンサートでも「ラデツキー行進曲」が演奏されることを祈りつつ、本年は第一本目の当記事から「原左都子エッセイ集」を開幕しよう。
   
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