原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

ブラボー!! ライサチェク!

2010年02月20日 | 芸術
(写真はバンクーバーオリンピック男子フィギュアスケート金メダルに輝いた米国のエバン・ライサチェク選手   -朝日新聞2月19日夕刊記事より転載-   写真は私の映し方が悪いため、ライサチェク選手の理想的体型が横長にデフォルメされている点をお詫び致します。)


 オリンピックのフィギュアスケート競技において、ショートプログラムとフリー2本共にこれ程完璧な演技を見たのは、私は今回が初めてのことである。
 米国代表の金メダリスト・ライサチェク選手に魅了され続けた今回の五輪の男子フィギュアスケートだった。
 
 身長が188cmとフィギュアスケート選手としては長身のライサチェク選手がリンク上で手足を広げると、両腕両足がリンクの端まで届きそうなほどに長い。 そして精悍な顔つきと風貌の中にも繊細な雰囲気が交じる。 ショート、フリー共に黒の衣裳で登場したライサチェク選手であるが、そんな恵まれた肢体と雰囲気に全身黒の演出がよく映えて存在自体が芸術的でさえあった。
 その外見だけでも圧巻であるのに、これに完璧なまでのスケーティングの技術力及び芸術表現力が五輪本番の大舞台で全開して、昨日金メダルを勝ち取ったライサチェク選手だった。


 日本時間17日のショートプログラムでは、ライサチェク選手は完璧な演技ならがも僅差でロシアのベテラン・プルシェンコ選手に1位を譲る形となっていた。
 ただ、プルシェンコ選手の場合、いきなり4回転ジャンプを難なく決めジャンプに関しては完璧で他を寄せ付けなかったものの、ステップやスピンのスピードや勢いがなく精彩を欠いている印象を持った。  一方のライサチェク選手は4回転ジャンプこそなかったものの、その他の要素に関しては芸術面も含めて非の打ち所がなく、ド素人の原左都子審判員による判定では、ショートプログラムの勝者はダントツ1位でライサチェク選手との判定を下していたのだ!

 上記のごとくショートプログラムで早くもすっかりライサチェク選手に魅了された私は、昨日(19日)のフリーでの同選手の演技を心待ちにしていた。 最終滑走グループのトップバッターで登場したライサチェク選手にさらに感嘆の声を上げることとなる。 なんと神がかり的に、4分数十秒間のフリーの演技をショート同様にノーミスで完璧に演じ切ったのである!

 その後登場した日本代表の高橋大輔選手も銅メダルに相応しいすばらしい演技だった。 冒頭の4回転ジャンプで回転不足と転倒の失敗がなければ、もう少し点数が上がったであろう。
 実は私は高橋選手の演技をまともに見たのは今回のオリンピックが初めてだったのだが、世界一と評されるステップの見事さが評判通りであるのに加えて、この人の芸術性に唸らされた思いである。 私にはクラシックバレエ観賞の趣味があるため、フィギュアスケートにおいても技術面のみならず芸術面での重要性を重々認識しているのだが、これ程までに感性豊かな表現力のある選手だとは知らなかったのだ。 とにかく、高橋選手も堂々のメダリストとして褒め称えたい。    高橋選手はまだ23歳の若さ。今後益々の活躍を楽しみにさせていただきたいものだ。

 そして、最終滑走のプルシェンコ選手。 やはり4回転ジャンプは確実に決めてきた。 解説によると、プルシェンコ選手はここ8年間公式試合においてジャンプでの転倒が皆無だそうである。そんな偉業を遂げられる天才ジャンパーのプルシェンコ選手が主張するには、もう3回転は過去のもので、今後は4回転を飛ばねばフィギュアとして認められないとのことである。 それをベテランの自らが実証するべく、このオリンピックでもショート、フリー共に4回転ジャンプを難なく成功させたのには脱帽である。 ただ、その他のジャンプの軸がずれたり、倒れそうなのを強引に着地する等の、プルシェンコ選手にしては珍しいミスが続いたのにも時の流れを感じさせられたものだ。 結局プルシェンコ選手は銀メダル獲得で、これは順当な結果と原左都子審判員も判断する。

 ついでに触れると日本代表の織田信成選手であるが、試合終了後のインタビューで、靴紐がとれたのは全て自分の責任だと言って泣き崩れていたのが印象的である。 靴紐は元々切れていたのを感覚重視のためにあえて新しい靴紐に変えず、そのまま切れた所を結んで本番で使用したとのこと、その織田選手の微妙な感覚にこだわるプロ意識を私はむしろ評価したい思いだ。 そして、靴紐アクシデントの後の演技もすばらしかったし、観客席からの応援も感激的だった。 自己責任による演技中断の大量減点にもかかわらず7位に入賞できる力がある選手だし、まだ22歳という若さでもある。今後の活躍を十分楽しみにさせていただこう。


 それにしてもオリンピック観戦の醍醐味とは、世界のトップアスリートによる高度な技や芸やスピードや身体の美を堪能できることにあると実感である。
 特にフィギュアスケートという種目は、それらに加えて“高度な芸術性”を誇る競技であることを再認識した上で十分堪能させてもらえたが故に、今回の記事はあえて「芸術」カテゴリーに分類した。 
 今期五輪で堂々たる金メダルを獲得したライサチェク選手に関しては、アスリートとしての総合評価において今回特別の思い入れを持った原左都子である。 ライサチェク選手も未だ24歳の若さとのことで、どうか今後もフィギュアスケートの国際舞台で活躍されて、トップアスリートとしての総合力を披露し続けられることを期待申し上げたいものである。
     ブラボー!! ライサチェク!  
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