原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

参院選前に総理は普天間問題を直言するべき

2010年06月24日 | 時事論評
 昨日(6月23日)沖縄糸満市の平和記念公園を会場に開催された戦没者追悼式典に於いて、沖縄県民を代表して高校生が朗読した詩の中で語られた“平和を思う願い”に、一体どこにその救いを求めていいのやら一国民としてやるせない心境になり、止めどなく涙が溢れた私である。
 それ程に、普天間に住む高校3年生女生徒の昨日の「変えていく」と題する朗読詩は、普天間で生活する人々の何気ない日常の中に理不尽に存在する米軍基地の描写がリアルであった。 そして、沖縄がその地理的定め故に過去の戦争において多大な犠牲となってきた県民の置き場のない悲しさを思い知らされるインパクトがあった。


 上記高校生の詩「変えていく」の中で、原左都子が特に感情移入した部分を以下にピックアップして紹介しよう。
  今日もまたはじまる / いつもの日常 / 当たり前に基地があって / 当たり前にヘリが飛んでいて / 当たり前に爆弾実験が行われている / そんな普通の一日
  一見「平和」に思えるこの小さな島 / そこにいつの間にか当たり前ではない / 当たり前であってはならないものが / 入り込んでしまっていた / 普通ならば受け入れられない現実を /  当たり前に受け入れてしまっていた    (中略)
  忘れてはならない / この島であった悲しい記憶 / 目を背けてはならない / 悲しい負の遺産 / それを負から正に変えてゆく / それがこの遺産を背負い生きてゆく / 私たちにできること   (中略)
  こんな悲惨な出来事は / もう繰り返してはならない / だから… / 「一度あったことは二度ない」に / 変えてゆこう  平和で塗りつぶしてゆこう  その想いはきっと届いているはずだから


 この高校3年生による沖縄県民の思いを真摯に適切に綴った詩の朗読の余韻で静まり返っている会場に於いて、何ともバツが悪いことに、その直後に新政権の菅総理が登場してしまったのである。            
 未成年である高校生がこれ程にインパクトのある詩の朗読をした直後にマイクの前に立たねばならない国民の指導者的立場に置かれている大人の役割とは、まずはその感性のすばらしさをねぎらい、それに相応するべくコメントを述べるのが常識であろうかと私は考え、この私も即座に私なりのコメントを考慮したりもした。
 ところがどうしたことか、菅総理は直前の高校生の朗読を全面的に無視して、冒頭から自ら持参した“通り一遍”の至ってつまらない原稿を読んで場を濁し続けたのである。
 これには大いに落胆させられた原左都子である。 ましてや沖縄県民にとってはおそらくその落胆の度合いは私の比ではなく、あの場における菅氏の何とも貧弱な“ビジネスライクの対応”にはとことん失望させられたのではあるまいか??


 菅総理は首相就任当初の所信表明演説において、既に今回の沖縄の戦没者慰霊祭に出席することを公言していた。 前鳩山政権時代より普天間問題に関して一切触れたことのない菅氏は、所信表明演説においてすらそれに関して言及しない一方で、沖縄戦没者慰霊祭にだけは出席するとの意向を示していた。 
 菅氏にとっては参院選を2週間後に控え多忙な中での今回の沖縄訪問であったはずだ。 そんな貴重な時間を割いて“公費を使って”沖縄を訪れたにもかかわらず、何故に鳩山政権“滅亡”の一つの根源であった「普天間問題」を遠方の沖縄の地において少しでも前進させるべく努力を怠ったのか? 
 (本音を言ってしまうと、参院選への悪影響が避けられないから「普天間問題」を新総理の沖縄訪問のみでごまかしたのが見え見えで、民主党は返って墓穴を掘ったとも言えるよね~。)

 「普天間問題」が国政にとって至って困難な課題であることは一国民として理解できる気はする。  ただし、その進展こそが“党首をすげ替え”てまでも生き残ろうとしている新政権に今後国民が立て直しを期待する最重要課題(「政治とカネ問題」も含めて)であることを、菅氏は新総理の立場で理解できているのか?  少しでも沖縄県民の置かれている立場やその虐げられ続けてきた過去の歴史を考慮しようと努力する方向性が、新政権内に本当にあるのであろうか??

 沖縄県民(あるいは徳之島の住民も)をないがしろにしたまま、参院選で一番票が集め易い東京都心で参院選公示直後の今朝一番、大声を張り上げて演説することにどれ程の意味合いがあると考えているのか?? 
 結局、今回の菅氏の沖縄訪問は民主党内の参院選での票取り作戦の一環でしかなかったことを暴露しただけのお粗末な結末でしかなく、再度民主党には失望のみが募る私である。


 朝日新聞6月22日の社説においても記述があったが、鳩山首相が辞任した後その不始末が菅内閣において何一つ解決していないのが現政権の実態である。 
 特に沖縄普天間移設問題に関しては上記朝日新聞指摘の通り、単に“振り出し”に戻ったに過ぎないのだ。 菅首相は今回の沖縄慰霊祭出席を、昨年秋に「最低でも県外」と豪語した公約を新政権が果せなかったがために深く傷ついている沖縄県民との関係を再構築する足がかりとするべきだったはずだ。
 それさえも出来ず何の進展もないまま昨日沖縄からとんぼ返りに帰京直後、今朝票取り目的で東京都心で参院選に向けて大声を張り上げている菅氏が操る新内閣の行く末を虚しく思うのは、原左都子だけなのであろうか??  
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