原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

洪水の都度水没する学校を現存させてはならない

2015年07月18日 | 時事論評
 徳島県阿南市立加茂谷中学校。

 義務教育課程である当該公立中学校が、昨年に引き続き今夏も大型台風11号による洪水被害を受け、グラウンド及び校舎の1階部分が浸水した。

 以下にネット情報「去年浸水の中学校グラウンドが再び浸水」を要約引用して、その状況につき記そう。
 昨年8月の台風で広い範囲で浸水被害が出た徳島県阿南市加茂谷地区では、土砂災害のおそれがあるとして一部に避難指示が出た。 住民によると、昨年2階まで浸水した加茂谷中学校のグラウンドが浸水し始めているということだ。
 7月16日午前1時20分ごろ中学校を撮影した写真と映像によれば、照明に照らされたグラウンドの水面が光り、サッカーのゴールとみられる設備が半分ほどまで泥水につかっているのが分かる。 阿南市の災害対策本部によると、中学校のグラウンドは午前6時現在も3メートルほどの深さまで浸水しているという話だ。
 写真を撮影した中学校の近くの住民は、「日が変わったくらいからグラウンドが浸かり始めるのが自宅の窓から見えた。 これからどうなるか不安で眠れない。 去年のような被害がないことを祈るばかり。」と話した。
 また、近くを流れる那賀川を管理する国土交通省那賀川河川事務所は、災害対策支部を設置して、警戒に当たっている。 当河川事務所によると、阿南市の堤防のない地区の一部では、去年と同じように水があふれている箇所も確認されていることで、今後雨が続けば、阿南市や那賀町の一部で浸水被害が出る可能性もあり、引き続き厳重な警戒をしている。


 ここで、私事及び私論に入ろう。

 教員経験がある我が身として昨年の浸水時から気になっているのは、当該中学校が近くの川の洪水氾濫により浸水する恐れが高いことが明らかな低地に建設されているとの事実である。
 何故このような地を敢えて選んで公立中学校を建設したのか?
 その経緯を知りたく思いネット情報をあれこれ検索してみたのだが、有用な情報は得られない。

 とりあえず、阿南市立加茂谷中学校に関するウィキペディア情報を以下に紹介しておこう。
 阿南市立加茂谷中学校(あなんしりつ かもだにちゅうがっこう)は、徳島県阿南市加茂町にある公立中学校。
 沿革[編集]
 1947年(昭和22年)4月1日 - 加茂谷村加茂谷中学校を創立。
 1955年(昭和30年)1月1日 - 那賀郡加茂谷村が那賀郡富岡町に編入し加茂谷村が消滅。富岡町加茂谷中学校と改称。
 1958年(昭和33年)5月1日 - 那賀郡富岡町と橘町と合併し両町が消滅。市制施行し阿南市が発足。阿南市立加茂谷中学校と改称。
 2014年(平成26年)8月10日 - 台風11号による大雨で那賀川が氾濫し、校舎の2階まで水に浸かった。
 2015年(平成27年)7月17日 - 台風11号による大雨で那賀川が氾濫し、校舎の2階まで水に浸かった。
 教育目標 …… ふるさとを愛し、心豊かにたくましく生きる生徒の育成。
           (  以下  略  )


 上記情報からは、加茂谷中学校建設の沿革は一切把握できない。

 それにしても、子供の生命を預かる公教育現場に於いて、校舎(及びグラウンド)水没なる大災害直面との同じ失敗を二度も繰り返すとは一体どうしたことか?
 幸いな事に、今年も昨年同様夜中の時間帯の浸水であったため、生徒をはじめとする教職員の被害者は一人として出ていない。 だから水没しても後片付けすれば済むとの安直な対応は如何なものか?

 一昨日からテレビニュース映像にて、水が引いた直後に学校教職員がその後片付けをしている場面を幾度も見せられて思う事がある。
 もしも学校現場や自治体の教委が、全国放映されているその映像を「美談」として捉えているとするならばとんでもない“勘違い”である。
 学校の教職員には、子供の生命を守り抜く使命はあれども、不意の災害の後片付けをする義務はないのではなかろうか?  いやもちろん、このような災害が発生すれば人道的観点から誰しも自分こそが後片付けをしよう!と志すであろう。
 この私とておそらく急いで勤務校に駆けつけ、後片付けの一端を担ったことと察する。(と言うのも、その行動を取らない事には後々教職員間での鬱陶しい仕打ちに遭う故だ。 あいつは来たがあいつは来なかった等々、組織内には必ずやせせこましい価値観をうだうだと表沙汰にする懐の小さい奴が存在して、いつまでも内輪もめにてバッシングされないとも限らなかったものだ。 その鬱陶しさを避けるためには、片付け作業に加わるのが一番手っ取り早いのが本音だ!) 

 さらに憂慮するべきは、昨年の浸水後の映像である。 
 浸水被害後片付けのために学校へ駆けつけて、教職員に交じり後片付けを手伝っている“生徒達の映像”が全国放映された。
 あれを見せられて教職経験がある私が一番に懸念したのは、夏季休暇中に学校へ出向いた生徒と、その行動を採らなかった生徒間での“校内評価”が二分してしまったのではなかろうか?なる観点だ。
 昨年の洪水被害の場合、上記の通り、生徒が後片付けする場面が“全国放映”されるに至っている。

 その辺の生徒間での行動の差が自ずと発生するであろう事態に関する、教職員間での憂慮が一切なかったのであろうか?  それ程に、加茂谷中学校内の治安は良いのであろうか?? 
 都会に暮らす私の懸念だが、こういう些細な事態が学内の“いじめ”の引き金となる事は大いにあり得ると考察するのだが…。


 最後に、原左都子の私論でまとめよう。

 如何なる災害が発生しようが、義務教育課程学校に通う子供達の生命は最優先して守られるべきである。
 これに関しては、誰しも異論はないものと思われる。

 次に議論するべきは、教職員の職務範囲だ。
 特に義務教育現場に通う子供の命を守る責務下にある学校教職員にとって、どこまでが職務範囲であるのかを確実に規定し直すべきであろう。
 少なくとも、昨年も今年も台風の洪水により水没する学校に勤めている教職員が、毎年その片付けを強要される事がその責務である訳がない。
 その責任の本体とは、学校を運営している自治体及びそれを統括する都道府県にある事実を明確にすることから出直すべきだ。

 これに関しては、現地中学校教職員氏の皆さんが言い出しにくいであろうことを想像し、当該自治体を統制する都道府県出身者の原左都子が、現地の教職員氏達及び生徒の皆さんに代わって、改善案を提示した今回のエッセイ内容である。

 もういい加減、洪水により毎年水没する公立中学校を本気で別の場所へ早期に移設して、全生徒の生命の安全及び安心して学業に励める環境を保障しては如何だろうか?!?