原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

高齢の母が娘に感謝や謝罪の言葉を発する可能性は低い

2019年05月25日 | 人間関係
 冒頭より、先週末に起った我が郷里の実母との「事件」に関して、2019.05.19 付バックナンバーエッセイ「郷里の高齢者施設に暮らす実母からの驚愕訴えに唖然!」の一部を、以下に再掲載させていただこう。


 昨夜の事だった。 郷里の高齢者自立支援施設に暮らす実母より、珍しく夜7時過ぎに電話が入った。 こちらはちょうど夕食中で酒も入っている。
 (こんな時間に鬱陶しいなあ…)と思いつつ電話口に出るなり…  「大変な事になった! 助けて欲しい!」と実母が叫ぶ。 
 一体何が起きたのかと思いきや…  実母が切羽詰まりつつ早口で続けるに、「米国の姉が(事実婚中の4度目の米国人亭主と一緒に)この施設へ私に会いに来たいと言って来た。 始めは私に米国へ来るように言われたが、とてもじゃないがこの高齢では無理だ。 それを姉に訴えると、それならば姉達がここに来ると言う。 それだけは絶対にやめて欲しい! (4度目のご亭主はともかく)あんな恥晒しの長女にここに来られたものならば施設中の笑い者だ! あの娘に来られるならば、私の方が思い切って米国へ行こうと思うがどうか?!?」
 ( 途中、我が一家が抱えている米国在住の姉とのトラブルや現状に関し記載した部分を割愛させていただくが。 )
 冒頭の実母からの電話の続きに戻ろう。 
 私応えて、「貴方がその高齢身体で米国へ行くには付添人が2人必要だ。 要するに単独渡米など絶対に無理!! せっかく姉夫婦が貴方に会いに来ると言っているならば、来てもらえばいいんじゃないの?」
 実母応えて、「頭が痛い問題だ…、あの姉から現在の写真が届いたりするが、とんでもなく老け込んで見るに忍びないし。 元々の異常性格に加えて、今となってはあのみすぼらしい風貌でここに来られても私の立場が……、どーのこーの……」
 私が内心で思って、(それにしても身勝手な実母だ。 おそらく施設内では、日々米国在住の姉自慢で花を咲かせているのだろう。 そりゃそうだと思うよ。 下の娘はたかが東京暮らし、それに比し長女は米国在住と言っただけで過疎地の年寄り達は驚き賞賛してくれる事だろう。 しかも、おそらく実母は姉が若き頃ミスインターナショナル県代表に選出された事実も自慢しているに違いない。 その後英語力を活かし、米国日本総領事館にて仕事をしている事実も自慢の種にしていると想像する。 ところが、いざ本人が来るとなった暁に! 姉のみすぼらしい実態をやっと思い浮かんだに違いない。 あんな娘に来られ本性を晒されたものでは、私の立場がすべて否定されてしまう! と、とことん焦った挙句、私に電話を寄越したのだろう。)
 それでも私は、昨夜の電話では「せっかく来ると言う姉の意向もくんでやったら」と締めくくると、実母は、「明日、もう一度米国の姉に電話をかけて相談してみる…」と何だかとても辛そうに言って電話を切った。
 本日朝になり、少し考えを変えた私から再度実母にメールを入れた。
 その内容とは、「姉の件だが、姉が貴方の施設へ来るのがどうしても嫌ならば、正直にその旨を伝えたらどうか? 私が想像するに、実際姉が日本の貴方の施設へ来て直接貴方に会うと、大喧嘩になりそうな予感がする。(これには前例がある。 姉が子どもを産んだ時に実母が米国へ行った際、両人が日々大喧嘩を繰り返しつつ、両人それぞれが日本の私宛に電話を掛けて来ては、アイツが悪い! いやアイツが悪い!の愚痴の言い合いだったものだ…。 そんな事を今更繰り返すならば… ) 高齢域の貴方の寿命こそが縮まる事を懸念する。」とメールに書いたのだが… 
 その後、実母からの連絡は途絶えている。(少し、その精神状態の程が気にかかる…。) 
 当然ながら、既に縁を切っている米国の姉からの連絡は一切無い。(これには心底安堵しているのだが…。) 

 (以上、本エッセイ集バックナンバーより一部を再掲載したもの。)

 
 と、ここまで書いたところで、地震だ! 
 早速テレビを付けて地震速報を確認すると、私が住む東京23区は“震度4”との速報!
 津波の心配は無しとの報道で一安心。 


 気持ちを入れ替え、エッセイ執筆に戻ろう。 

 その後一週間経過したが、実母からの連絡は一切無い。 これを「吉」と読むか「凶」と読むかの判断が出来ずにいるのだが…
 ただそもそもこの事件、あくまでも実母と米国の姉との二者関係間の問題だ。 私が口を挟む必要もお節介を焼かねばならない責任も無いだろう。 その我が結論に基づき、引き続き放置することとしている。


 さて、本日2019.05.25付朝日新聞“悩みのるつぼ”の相談は、50代女性による「母と音信不通のままでいい?」だった。
 
 回答者であられる社会学者 上野千鶴子氏のご回答のみを要約して以下に紹介しよう。

 熟年離婚した母を支え続けてきた相談者女性。 その母と音信不通だというが、それは母側が選んだことのようだ。 結果として貴女の妹の元へ去った母であり、貴女には遺産が残らない代わりに、介護の負担もかからない。 そのままそっとしておいては如何か。
 「本当にこれでいいのか?」と自問する貴女の気持ちを腑分けするに、「娘としての義務」「母への愛情」「母から感謝や謝罪が欲しい?」「母が妹を選んだことに対する嫉妬心?」…
 世に愛し合えない親子など沢山いる。 貴方の高齢の母が貴方にありがとうやごめんなさいを言う「奇跡」」が起きる確率は低そうだ。 貴女にとって母が負担であった事実は文面からも読み取れる。 このまま母から静かに忘れ去られることが貴女にとって平穏、と推測する。
 今後会うか会わないかはお互いの選択。 もしもあなたが次に母に会うのが「死に顔」だったとしたら。 それが母の選択だったと、肩から“母という名の重荷”を下してやりましょう。
 (以上、上野千鶴子氏による回答の一部を要約引用したもの。)


 最後に、原左都子の私論に入ろう。

 我が母娘関係に於いては、本エッセイ集バックナンバーに於いて幾度となく記載している通り。
 
 私側の感覚としては、20代前半期に単身上京して自立した時点で“郷里も親も捨て去った”気持ちに揺るぎが無い。
 実際問題、上京後は実親どもより一切合切の経済支援を受けず、心理面での支援も最小限にとどめつつ、私は独立心旺盛にこの世を堪能して来ている身だ。

 表題に掲げた通り、実母に対し(参考だが実父は60代の若さで突然死を遂げている)何の感謝も謝罪も要求せずして、一方的にあちらから押し寄せる次女である私に対する要望や相談には快く乗っている立場でもある。
 表向きの「感謝」や「謝罪」を聞かされるよりも、実母として現在の施設にての余生を楽しんでくれる方がよほど嬉しいのが現実だ。
 実際、今回の電話相談に際しても、(何でこの事件に無関係の次女の私に電話を寄越すの??)の思いが正直なところだった。
 我が実母に関する「相続問題」は既に解決済のため、上記朝日新聞相談のような苦悩が一切無い事に助けられる思いもするが…

 それにしても、殊 「母」と「娘」に関する人間模様とは、一生に於いて“鬱陶しい”事実を実感させられるのは、この原左都子とて例外ではない……。