礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

東洋民族は白色人種から搾取されてきた

2020-05-22 00:47:29 | コラムと名言

◎東洋民族は白色人種から搾取されてきた

 志賀哲郎の『日本敗戦記』(新文社、一九四五年一一月)を紹介している。本日は、その二回目。
 本日、紹介するのは、「戦争は誰の手で計画されたか」の節で、これは、昨日、紹介した「戦争犯罪者とは何か」に続く節である。なお、これ以降、特に断らない限り、節の順番に紹介してゆく。

    戦争は誰の手で計画されたか
 先づわれわれの知りたいのは、大東亜戦争は誰の手で計画せられたか、といふことである。
 われわれが今日まで教へられて来たところによれば、東洋民族は白色人種のために数百年に亘つて搾取され、虐げられ〈シイタゲラレ〉、だまされて来た。そこで此の白人の搾取や圧迫から解放されなければならない、人類は平等の権利があり、各々に特徴ある歴史と風俗とを持つてゐる、だからこれを全面的に生かし、各々その処を得しめ、平等に、兄弟相携へて行かねばならない、つまり八紘一宇〈ハッコウイチウ〉の精神で世界を光被しなければならない――これが大東亜共栄圏樹立の理念であつた。一言にして尽せば東亜諸民族の解放である。
 もう一つの理由は、われわれ日本人は非常に多産な国民で、年々百二十万人の人口増加を見てゐる。然も国土は非常に狭く、その上耕地に至つては全面積の一割五分にしか当らない状態では、マルサスならずとも到底生きて行くことが出来ない。現に農村では人口が過剰になり、農村の疲弊は年と共に増大して行きつゝある。だから何としても国外に安住の地を求めねばならぬのに、米国は移民法によつて日本人を閉出すし、支那もまた抗日思想を鼓吹して日本人の平和的入国を拒まうとしてゐる。人間には生存権がある。この権利によつて満洲や北支に先づ安居楽業〈アンキョラクギョウ〉の地を求め、延いては〈ヒイテハ〉東亜の諸地域にも及ぼさうとするのである。然るに米英両国は支那を使嗾〈シソウ〉して抗日運動を助け、事毎に〈コトゴトニ〉我を圧迫し、終には〈ツイニハ〉経済断行〔経済断交〕をして日本を窮地に陥らしめた。よつてこの圧迫を排除するために止むを得ず鉾〈ホコ〉を執つて起つたのである――かういふのである。
 その言たるや誠に美しい。だが事実は、さういふ美しい理想や、止むに止まれぬ生存権の叫びによつて戦争が初められたのではなく、一部の好戦的軍閥、政権慾に血迷つた軍閥の陰謀によつて計画されたものであることは、各方面から実証があげられてゐる。

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