礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

宗教団体は国家社会の為に十二分に御活動を願いたい

2019-06-18 04:22:46 | コラムと名言

◎宗教団体は国家社会の為に十二分に御活動を願いたい

 松尾長造述『宗教団体法解説』(仏教連合会、一九三九)を紹介している。本日は、その五回目で、「二、制定の理由」の続きを紹介する。ページでいうと、一二ページから一四ページまで。

 第五の理由は、宗教団体を保護しなければならないと云ふことであります。教派・宗派・教団にしても寺院・教会にしても、国家社会に対して相当活動をし貢献をして居る。固より私共に云はしむれば、宗教団体の活動は十分とは云ひ難い、まだまだ余力がある、此の上一つウンと国家社会の為に十二分に御活動を願ひたい。殊に貴衆両院を通じて宗教家は眠れりと云ふ説が多い、それで私も考へて居るのでありますが、覚めて居る坊さんも相当ございますが、やはり眠つた方も相当ございます。それで、さう云ふ方々を私は揺り起し、さうして大いに活動してもらふ様に鼓舞激励しようと思ひます。斯の如く一面に於て国家社会の為に活動してもらふからには、他面之に対して相当の保護を与へると云ふことは当然であります。所が現下の状態は何うかと云ふと、此の点に於て相当欠くる所があると思ひます。それ等の点も能く考へねばなりませぬ。宗教団体法案を作る場合に、其の点に付て十分考慮すべきだと云ふので、本法に於て相当考へられて居ります。例へば税金問題に付ては、現に府県制・市制・町村制等に於て若干の規定はありますが、更に範囲を拡めて税の減免と云ふことを考へても宜いぢやないか、宗教団体は国家発展の為に働くのであるから租税減免の範囲を拡張するのは必要ではないか――と云ふ訳で茲に若干規定が置かれた次第であります。それから行政処分の救済規定でありますが、之も亦今日甚だ不充分なのであります。現行法規に於きましては、例へばあなた方行政処分に関して不服があるとか、或は感服しない点がある斯うもして貰ひたい、あゝもして貰ひたい、と云ふ場合には請願令に依つて請願が出来る。よく皆さん陳情書を出しますが、あれは陳情書と書かうと、請願書と書かうと、上申書と書かうと悉く請願令に依つてする請願であります。請願令に依つて意思表示が出来る。所が請願令に依つて請願はしたが、何年経つても請願の趣旨が実行されない。それは請願令の第十三条を見ると、請願が出ても指令を与へずと云ふことが規定してある。だから若し悪体な役人が第十三条があるから請願が出ても放つて置け放つて置けと放任して置いでも抗議の仕様がない。文部省は親切でありますから、請願が出れば味のある色よい返事を丁寧にするが、之はやらなければやらないでも済む訳であります。之は考へて見れば実にソツケない話であります。一生懸命になつて三人も五人もが判を捺してエツチラ、オツチラ持つて来て、指令を与へずと云つて放つて置かれては堪らない〈タマラナイ〉。それで本法に於ては、場合に依つては訴願の途〈ミチ〉も開かれて居るのであります。訴願法に依つて訴願をすると、裁決を与へなければならぬ。更に一歩進んで行政裁判所へ出訴する途も開いたらどぅか、行政官庁に取つては相当痛い所でありますけれども、斯う云ふ途を開いて置くことも一種の保護ぢやないか、まア斯う云ふ点も考慮される訳であります。それから差押禁止の規定であります。現在、民事訴訟法や国税徴収法の中にも若干ありますが、此の差押禁止の範囲を拡張して置いた方が宜いと云ふ考へも浮ぶのであります。之も宗教団体を保護する一つの明瞭な方法だと思ふのであります。【以下、次回】

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