九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

僕の生涯投資法  文科系

2023年01月05日 16時54分13秒 | 国内政治・経済・社会問題

こんなこともおおいに役に立ちそうな世の中とて、標記のことを書いてみる。岸田首相が、「(預金などよりも)投資へ」と叫んでいる世の中とて。

僕は貧乏な社会福祉関連の仕事についたので、自分の老後を若い内から考えざるを得なかった。幸い親から名古屋の中心にほど近い35坪ほどの宅地の家を一軒もらって新婚生活を始めたので、以下の投資に早期から踏み切ることができた。

新婚後間もなくこの土地いっぱいに家を建て増しして、そこの家賃を高くしたその結果として、それを他人に貸すことを前提に、家を買うことにした。市の住宅公社がポンプ場をつけて郊外の湿地を住宅地に換え宅地部分だけをかなり高くもした55坪のテラス住宅を買った。それが41歳の時。

その後間もなく、同じ名古屋市内に住む長男である兄が一人っ子であるお嫁さんの実家に家を建てることになって、両親と喧嘩。結局両親の敷地内に新家を建てて入ってくれと僕が頼まれ、最初の家を兄に譲ってここを終の棲家と定め、新家の返済は二番目の家の家賃を充てることに。これが49歳の時。二番目の家自身の返済が済むまでは兄に譲った家の家賃も貰うことにも、事情柄兄は同意してくれた。

同居2年で病がちの父が死に、同居8年に母が脳内出血、これを僕主体で看病した5年間が僕の現役末期で、最も苦しい時だったと言える。母が亡くなると同時にその古家を手直しして移り、新家の方を人に貸した。これがほぼ、定年退職の直後。家賃があるからすっぱりと仕事をやめようと準備していたが、最後にもう一つ大きな企画を立てた。共働きの連れ合いと僕の退職金や預金を文字通り叩きつくして50坪の土地付き新家を一軒、全額を現金で買った。現金など持っていてもインフレなどで仕方ないだろう、土地付きの家があればいつでも借金はでき、それも三つの家の家賃で返せるだろうなどという見通しだった。なお、退職後の車は軽自動車の主として中古しか乗ったことがない。今現在はアルトワークスの四輪駆動ミッション車、前席レカロシートというものだ。

 

以上に関わる僕らなりのノウハウを書いてみよう。途中で気付いたことも多いものなのだが。

・多少無理しても高級住宅地や交通便の良い戸建てだけ、その都度夫婦で懸命に探した。返済はなるべく現役の内にと、かなり無理をした。連れ合いが教員だったので、共働きの苦労もあった。

・家賃は他よりも2割は安いだろう。戸建ての根強い人気もあって、10年20年と長く住んでくれるから。ちなみ最後の家の最初の店子さんは、子育てが終わり故郷へ帰るまでの一時父がしばらく単身赴任していたほどだ。お隣の新家の方は、もう20年近く住まわれ、子育てもここで終わりかけておられる。ここは間もなく故郷、両親の元に帰られるが、後の2軒は部屋数が多いので、現在三世代とかが、ずーっと住んでくれそうな成り行きになっている。最後の家は5LDKと広いからか、今は親子3家族になって住んでおられる。転勤もない家庭のようだし。家が広いのに家賃が安いと、進んで居続けてくれるということのようだ、家賃トラブルなどもあったためしはない。

・ちなみに、賃貸斡旋業者は戸建ての斡旋には熱心でないように僕には思えたから、自分で良い入居者を見つけるほどの気持ちで気長に待つことはあった。それまで半年程度の空きに焦ってはいけない。良い家庭を見つければ先は長いのだと。ただし、そんなに長く待ったのは一度だけだったが、

・土地付き優良戸建ては、息子の商売の担保などにも大いに役立ってきた。

・今50歳近くになる娘も僕らのまねをして、今2軒の戸建てを持っている。市中心部住宅地の地下鉄駅のすぐそばなど、僕らと同じように家を選んだので、最初の家の家賃は20万円。これでも他よりも2割は安いはずなど、僕らのノウハウを実践している。2軒目の返済が10万円ほどだから、すでに10万円の副収入がある。

・戸建ては、かなり高くなる修繕費の積み立てなどが必要だが、家賃が安いからか、少々のことは自分でやってくださる。

・いくら少子化でも、駐車場付きの戸建て高級住宅地人気は根強く、正規職の転勤族はますます増えているように思う。最近は賃貸マンションもせっせとサービスに努めているようだが、戸建ては庭造り、野菜作りなども含めて遙かに自由度が大きく、長く住んでくださるものだ。ちなみに3軒はそれぞれ、築40年の鉄筋、築30年の軽鉄骨、築20年弱のNTT関連住宅会社の優良住宅というものだが、原価はずっと前に払い終わってしまい、以降の家賃すべてが預金などであれば全て利子分ということになっている。

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とうとう朝日が書いた「現資本主義の終わり」  文科系

2023年01月03日 07時57分43秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)

 新年早々、朝日新聞が書いた。「次の資本主義 東芝から考える」。『次の資本主義』? まず何よりも、今のそれが終わったということだろう。この年始年末も含めて、このことをこそここで告発し続けてきた僕には、「とうとう・・」という感慨が深い。こんなことは既にアメリカ自身こそ認めて来たのであって、何を今更なのだ。この何を今更はすぐ後で示すが、だからこそアメリカは、己をここまで落とし込んだ中国を「これでもか・・・」とたたくしか道がないのである。中国に味方するわけではないが、このことを知らずに「ウクライナが負けたら、次は台湾だ。中国の権威主義、専制主義を潰せ!」と躍起になっている人々もおかしい。自由主義経済を捨てて、自らが憎みさえしてきたはずのブロック資本主義経済に日米、G7も堕して来ているのに。

 「今の資本主義ではない」「権威主義でもない」、新たな民主主義的資本主義って一体何なのか。「民主主義」と言ってもその元々が「この程度のもの」でしかないとはチャーチルも語ってきたところだが、今はすっかりその欠点、ポピュリズムへと退廃している。それを示しているのが、トランプや安倍の姿だろう。何の政治実績も挙げられないので「相手は嘘まみれだ」とだけ専門の政治家、トランプと、同じく「自らが国会で嘘ばかりついた上で、主権者を『こんな人たち』呼ばわりてきた」安倍と。

 

 さて、ここでも何回か扱ってきたが、2019年12月3日号の米週刊誌「ニューズウイーク」にこんな記事があって驚いた。題名と、書き出し一部を転載してみる。

『経済学 宗旨変えしたノーベル賞学者』

『その(ポール・)クルーグマンが突如、宗旨変えした。今年10月「経済学者(私も含む)はグローバル化の何を見誤ったのか」と題した論説を発表。自分をはじめ主流派の経済学者は「一連の流れの非常に重要な部分を見落としていた」と自己批判したのだ。

 クルーグマンによれば、経済学者たちはグローバル化が「超グローバル化」にエスカレートし、アメリカの製造業を支えてきた中間層が経済・社会的な大変動に見舞われることに気付かなかった。中国との競争でアメリカの労働者が被る深刻な痛手を過小評価していた、というのだ。

 ラストベルト(さびついた工業地帯)の衰退ぶりを見ると、ようやく認めてくれたか、と言いたくもなる。謙虚になったクルーグマンは、さらに重大な問いに答えねばならない。彼をはじめ主流派の経済学者が歴代の政権に自由貿易をせっせと推奨したために、保護主義のポピュリスト、すなわちドナルド・トランプが大統領になれたのではないか、という問いだ』

 

 彼らのこの「反省」の流れはアメリカの学者だけでなく大経営者たちも少なくとも口だけでは既に認めてきたところであって、2019年8月19日、主要企業の経営者団体『ビジネス・ラウンド・テーブル』がこんな声明を出していた。20日日本のある新聞の見出しである。

『株主最優先を米経済界転換 利害関係者全て尊重』

 

 何が「尊重」か? やってきたことは、自分らは「ブロック経済化」を進め、その罪などは棚に上げて「中国の管理通貨制度が・・・・?」とか、「ウクライナの次は台湾だ!」と叫んできただけではなかったのか? まるで、負け犬の遠吠えである。それも、「江戸の敵を長崎で」というような遠吠え・・・・。

 

 この負け犬の遠吠え関わってこそ、日本ではこのような「中国に労働を取られた、日本労働者の没落」などは世紀の移り目からもう起こっていたのである。それこそが、日本経済失われた25年の姿なのだが、ただただ中間層、正規労働者縮減にしわ寄せしただけで未だに何の反省も起こっていない情けない国である。これこそが、結婚できない50歳以上男子の急増、孫のいない老夫婦、大変な少子化の今の姿なのだ。

「次こそ台湾だ。日本再軍備、反撃力」??

 負け犬の遠吠え挙げた「江戸の敵を長崎で」に加勢する、9条の国日本の情けなさすぎる姿である。

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金融グローバリゼーションということ④ 常に妨害、その改革論議  文科系 

2023年01月02日 08時21分24秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 
 
ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書2012年6月第5冊発行)の終章第3章は改革論議であるが、計4節に分かれている。「国際協調」、「適切な報酬制度」、「現状維持に終わる金融改革」、「金融化は不可逆的か」。 これを、要約していきたい。サブプライムバブルが弾け、世界の大変なお金がバブルにふさわしく泡と消えて大迷惑、困難をもたらし、アメリカ自身の五大投資銀行すべてが親銀行などに吸収合併されるなどして消えていった後、G20のサミットでどんな改革論議がなされ、対立があって、ほぼ元の木阿弥に戻ったか。リーマン以降、ロンドンG20から、10年のソウルG20とそのサミットまで、世界の金融規制論議経過は省いて、書かれている改革の内容自身を観る。

 ロンドン大学政治経済学院の「金融制度の将来」には4つの目的がこう書かれているとあった。①実体経済を攪乱しないように。②破綻金融の税金救済の問題。③そんな金融機関の報酬が高すぎる問題。④高報酬により人材が集まりすぎる問題。
 また、2010年11月のG20ソウル会議でもっと具体的に4つの討論がなされ、抽象的合意だけが成されたと言う。①銀行規制。②金融派生商品契約を市場登録すること。③格付け会社の公共性。④新技術、商品の社会的有用性。
 以上から何が問題になってきたかをお分かりいただけたと思うから、G20ソウル会議の4項目の順に討論内容などを観ていきたい。

 ①の銀行規制に、最も激しい抵抗があったと語られる。また、現に力を持っているこの抵抗者たちは規制提案に対して「否」と言っていれば良いだけだから、楽な立場だとも。国家の「大きすぎて潰せない」とか「外貨を稼いでくれる」、よって「パナマもケイマンも見逃してくれるだろう」とかの態度を見越しているから、その力がまた絶大なのだとも。この期に及んでもなお、「規制のない自由競争こそ合理的である」という理論を、従来同様に根拠を示さずに押し通していると語られてあった。

 ②の「金融派生商品登録」問題についてもまた、難航している。債権の持ち主以外もその債権に保険を掛けられるようになっている証券化の登録とか、それが特に為替が絡んでくると、世界の大銀行などがこぞって反対すると述べてあった。ここでも英米などの大国国家が金融に関わる国際競争力強化を望むから、規制を拒むのである。つまり、国家が「外国の国家、法人などからどんどん金を奪い取ってきて欲しい」と振る舞っているから換えられないと、酷く暴力的な世界なのである。

 ③格付け会社の公準化がまた至難だ。その困難の元はこのようなものと語られる。アメリカ1国の格付け3私企業ランクに過ぎないものが、世界諸国家の経済・財政法制などの中に組み込まれているという問題だ。破綻直前までリーマンをAAAに格付けていたなどという言わばインチキの実績が多い私企業に過ぎないのに。ここで作者は「ワイヤード・オン」という英語を使っている。世界諸国家法制にムーディーズとかスタンダードとかの格付けランクがワイアーで縛り付けられているという意味である。この点について、こんな大ニュースが同書中に紹介されてあったが、日本人には大変興味深いものだろう。
『大企業の社債、ギリシャの国債など、格下げされると「崖から落ちる」ほどの効果がありうるのだ。いつかトヨタが、人員整理をせず、利益見込みを下方修正した時、当時の奥田碩会長は、格付けを下げたムーディーズに対してひどく怒ったことは理解できる』(P189)
 関連してここで、つい昨日の新聞に載っていたことを僕がご紹介したいのだが、こんな記事があった。先ず見出しは、『国際秩序の多極化強調BRICS首脳「ゴア宣言」』。その「ポイント」解説にこんな文章が紹介されていた。
『独自のBRICS格付け機関を設けることを検討する』
 15日からブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ五カ国の会議がインドのゴアで開かれていて、そこでの出来事なのである。ついでに、日本でこういう記事はまず大きくは見えないようになっているということも付け加えておきたい。なお、この会議宣言4つのポイントすべてにおいて「国連」が強調されていたということも何か象徴的なことと僕には思われた。国連を利用はするが無視することも多いアメリカと、国連を強調するBRICSと。
 とこのように、国連や、G7などではなくG20やにおいてアメリカ以外の発言力が強くなっていかなければ、金融規制は進まないということなのである。

 最後に「④新技術、商品の社会的有用性」について。金融商品、新技術の世界展開を巡る正当性の議論なのである。「イノベーションとして、人類の進歩なのである」と推進派が強調するが、国家の命運を左右する為替(関連金融派生商品)だけでも1日4兆ドル(2010年)などという途方もない取引のほとんどが、世界的(投資)銀行同士のギャンブル場に供されているというような現状が、どうして「進歩」と言えるのか。これが著者の抑えた立場である。逆に、この現状を正当化するこういう論議も紹介されてあった。
『「金作り=悪、物作り=善」というような考え方が、そもそも誤っているのだ』
 金融が物作りを「攪乱」したり、現代世界人類に必要な新たな物作りへの長期的大々投資を事実上妨げているとするならば、それは悪だろう。関連して、世界的大銀行は、中小国家の資金まで奪っていくという「罪」を史上数々犯してきたのである。そして、世界の主人公である普通の人人の生活、職業というものは、物(作り)とともにしか存在しない。

 この本の紹介はこれで終わります。ただし、この著作中に集められた膨大な数値などは今後の討論で折に触れて適宜ご紹介していくつもりです。「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」という書名をどうかご記憶下さい。

 ここまでお読み下さった方、お疲れ様でした、ありがとう。

(終わり)
 
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金融グローバリゼーションということ③ 金融は社会、政治をどう変えたか  文科系

2023年01月01日 02時39分33秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書、2011年10月初版)を要約している。その第二部は、金融化が社会、政治、教育、そして学者たちをどう変えたかという内容。これがまた4節に分けられていて、各表題はこうだ。①社会を変える金融化、人間関係の歪み、②金融化の普遍性、必然性?、③学者の反省と開き直り、④「危機を無駄にするな」(G⑦などでの改善の問題なのだが、括弧が付いている事に注意 文科系)。以上の四つに分けて論じられる。
①・「格差」では、06年のゴールドマン・トレイダーら50人のボーナスが、一人最低17億円だったという例を昨日のここで紹介した。こういう強食の背後には、無数の弱肉がいると解説を付けて。投資会社のゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーのトレーダーは、ハーバードの数学科ドクターなど超優秀な頭脳が集められていく。すると社会全体がそこへの近さなどに準じたようなヒエラルヒーへの人材配置になっていくのである。
・「不安の増大」では、こんな例が良かろう。日本の国民年金掛け金未納者が38%にのぼること。日本で新たに導入された確定拠出年金が、10年3月末の110万人調査で63%が元本割れとなっている発表された。これらの人々の老後はどうなるのだろうか?
・人材の金融集中では、2010年8月の日経新聞広告を上げている。
『野村、「外資流」報酬で新卒40人採用へ 競争率16倍 専門職で実績連動 11年春、初任給54万円』
 マスメディアのライターからも、大学人やフリーライターとかジャーナリストらがどんどん減って、金融アナリストが急増している。
・人間関係の歪みでは、情報の非対称性(情報量に大差がある2者ということ)を利用して起こる諸結果から、リーマン・トレーダーにだまされた社会において「人をみたら泥棒と思え」というような世界の移り変わりが説かれていく。

②「金融化の普遍性と必然性?」の要は、金融に特化する先進国に不当な世界的優位性を与えているということである。そこから、西欧がアメリカを追いかけ、今日本がつづき始めた、と。ただし、主要国の家計に占める株と証券との割合は05年でこうなっている。アメリカ46・6%の6・7%、ドイツ23・7%の9・7%、フランス28・0%の1・4%に対して日本15・0%の4・0%である。
 この程度でもう100年に一度のリーマンが起こって莫大な公金を注ぎ込まざるを得なかったとあっては、これで儲けるしかないアメリカがいくら頑張っていても金融立国はもう駄目だという文脈と言える。上記4国の証券%合計は21・8%となるが、1980年のこれは合計34・9%となっていた。4国で割れば、この25年で8・7%から5・5%へと家計における証券保有率は大幅に低減したという事になる。ただこれは家計に占める率であって、世界から金融業者に掻き集められた金はカジノばかりに膨大に投入されているということである。

③「学者の反省と開き直り」は省略させて頂く。ただし、この点の2022年現在まで、米主流体制の中で「重大反省」がいくつも起こって来た。この重大反省については、この書評とは別にこの連載でも、後で詳しく書こうと思う。
 
④すべて「金融危機を無駄にするな」に括弧が付いているのは、掛け声だけという意味である。アメリカの妨害でちっとも進まないからだ。
 リーマンショックが起こって、「100年に1度の危機」(これも2022年現在、後で今一度振り返っておきたい)と叫ばれた08年秋のころはアメリカも大人しかったようで、金融安定への不協和音はゼロだったとのこと(ただ、この「危機」の長期的根本的意味が一般には世界の為政者を除いては1%も理解できていたかどうかと、僕はそう思う。)ところが、国際機構をきちんとして罰則を入れるようなものは全くできなかった。決まった事は、少しの間G7よりもG20サミットが重視され始めて、保護主義を排し、経済刺激策を取ろうという程度だった。IMFとこれによる規制との強化とについて、新興国と西欧とがかなり主張して端緒についたはずだったが、その後はほとんど何も進まなかった。(そのうちに今現在では、ウクライナ戦争から、世界のブロック経済化に進んでしまった)

 ここで作者は、世界政府、国際制度作りの歴史などの話を起こすことになる。特定分野の国際協力機関は20世紀初めの国際連盟やILO設立よりも前に12もできていたと述べて、「万国郵便連合」などの例を挙げる。
 同じ理屈を語って日本人に大変興味深いのは、日本の戦国時代統一の例が語られている下りだろう。
『日本が16世紀の終わりに一つの国になったのは、信長、秀吉、家康の武力による統合と、幕府という統治制度の意識的な創出が決定的だった』(P132)
 アジア通貨危機やギリシャ危機は、大国金融が中小国から金を奪い取る金融戦争、通貨戦争の時代を示している。そんな金融力戦争はもう止めるべく、戦国時代の戦争を止めさせた徳川幕府のように、金融戦争に世界的規制を掛けるべきだという理屈を語っているのである。IMF(国際通貨基金)のイニシアティブ強化以外に道はないということである。


 金融の国際制度とこれによる執行力ある万国金融規制についてさらに、前大戦中から準備されたケインズの国際通貨、バンコール構想も解説される。が、これはドル中心にしようとのアメリカの終戦直後の実績と強力との前に脆くも崩れ去ったということだ。ドルが基軸通貨になったいきさつ説明なのである。
 以降アメリカは自国生産量より4~5%多く消費でき、日本や中国はその分消費できない国になったということである。それぞれ膨らんだドルを米国に投資する事になってしまった。その意味では、中国銀行総裁、周小川が09年に「ケインズ案に帰るべし、新機軸通貨、本物の国際通貨の創設を!」と叫び始めた意味は大きい。中国は今や8000億ドルの米国債を抱え、不安で仕方ないのであろう(この8000億は2015年ころには1兆2500億ほどになっている。文科系)。中国のこの不安は同時に、アメリカにとっても大変な不安になる。「もし中国が米国債をレバレッジ付きで(数%の見せ金で売買ができるという梃子の原理のこと)大量に売り始めたり、中国資金を引き揚げたりしたら。国家、家計とも大赤字の借金大国の『半基軸通貨』ドルは大暴落していくのではないか」と。周小川中国銀行総裁が「本物の国際通貨の創設を!」と叫ぶのは、そんな背景もあるのである。

 なお、これは私見の言わば感想だが、アメリカが中東重視から西太平洋重視へと世界戦略を大転換させたのは、以上の背景があると観ている。中国に絶えず圧力を掛けていなければ気が休まらなくもなるのだろう。
 
 
(あと3回は続きます)
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金融グローバリゼーションということ ② 金融化現象とは何か  文科系

2023年01月01日 00時24分41秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 
 中公新書、ロナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(2011年10月初版)の要約を行っている。同書が以下の3部に別れているのに合わせて。「金融化現象とは何か」、「これにより、社会、政治、教育などがどう変わるか」、「各国、国際機関による、これの弊害是正、金融改革の試み」である。今回はその第一部の要約とする。

 ただこの本、非常に難解である。最大の特長が21世紀日本経済(ある過渡期)の最新・最大テーマということなのだが、なんせ、日本語の達人と言っても外国人が書いた日本語。やはりどこか違うと言わざるを得ない。時に省略、時に冗長と、言葉の選択が普通の日本語とは違う。これに研究対象の難しさも加わったこの難物を、順不同、勝手に要約していく。

 第一部の目次はこうなっている。①金融化ということ、②資本市場の規模拡大、③実体経済の付加価値の配分、④証券文化の勃興、と。

 金融化について、ある人の要約が紹介される。『国際国内経済で、金融業者、企業の役割や、一般人の金融志向が増していく過程』。この「増していく」の中身は、こういうもの。社会の総所得における金融業者の取り分が増えたこと。貯蓄と企業との関係で金融業者の仲介活動が急増したこと。株主資本主義。政府がこの動向を国際競争力強化の観点から促進してきたこと

 米企業利益のうち金融利益の割合が、1950年代までは9・5%であったものが急増して、02年には41%と示される。その後非金融業の巻き返しがあってやや減少期があったものの、2010年度第一四半期はまた36%まで来たとあった。サブプライムバブルの膨張・破裂なんのそのということだろう。

 次は、こうなった仕組みとして、金融派生商品の膨張のこと。
 著者は先ず、シカゴ豚肉赤味の先物市場投資額を、急増例として示す。初めの投資総額はその豚肉生産総費用にもみたぬものであったが、これが、生産費用とは無関係に爆発的急増を示すことになる。1966年の先物契約数が8000だったものが、2005年に200万を超えるようになったと。そして、これも含んだ金融派生商品全体のその後の急増ぶりがこう説明される。2004年に197兆ドルだった国際決済銀行残高調査による派生商品店頭売り総額が、2007年には516兆ドルになっていると。この期間こそ、08年に弾けることになったサブプライム・バブルの急膨張期なのである。同じ時期の現物経済世界取引総額とのこんな比較もあった。同じ2007年4月の1日平均金融派生商品契約総額が3・2兆ドルだが、これは世界のこの月の1日実体経済貿易総額(320億ドル)の実に100倍であると。

 これほど多額の金融派生商品の売買は、証券化という技術が生み出したものだ。
 証券化の走りは売買可能な社債だが、『住宅ローンや、消費者金融の証券化、様々な方法で負債を束ね「パッケージ」にして、低リスク・高リスクのトラッシュ(薄片)に多様に切り分けて売る証券や・・』というように進化していった。リスクが大きいほど儲かるときの見返りが大きいという形容が付いた例えばサブプライム債券組込み証券(の暴落)こそ、リーマン破綻の原因になった当の「パッケージ」の一つである。
 そんな金融派生商品の典型、別の一つに、これに掛ける保険、クレディット・デフォルト・スワップ(CDS)という代物がある。この性格について、有名な投資家ジョージ・ソロスが「大量破壊兵器」と語っているとして、こう紹介される。
『ゼネラル・モータースなどの倒産を考えよ。その社債の持ち主の多くにとって、GMの再編より、倒産した場合の儲けの方が大きかった。人の生命がかかった保険の持ち主に、同時にその人を打ちのめす免許を持たせるようなものだ』
 まさに「(会社再建よりも)打ちのめした方が儲かる」というCDSの実際が、投資銀行リーマン・ブラザースの倒産でも、見事に示された。倒産時のリーマン社債発行残高は1,559億ドルだったにもかかわらず、その社債へのCDS発行銀行の債務総額は4,000億ドルだったのである。社債を実際に持っている者の保険と言うよりも、単なるギャンブルとしての約束事だけの保険のほうが2・5も大きかったということになる。約束事だけへの保険ならば、競輪競馬に賭けるようなもので、無限に広がっていく理屈になる。

 こうして、こういうギャンブル市場がどんどん膨張していった。政府も国際競争力強化と銘打って証券文化を大いに奨励した事も預かって。各国年金基金の自由参入、確定拠出年金・・・。これらにともなって、機関投資家の上場企業株式所有シェアがどんどん増えていく。1960年アメリカで12%であったこのシェアが、90年には45%、05年61%と。そして、彼らの発言力、利益こそ企業の全てとなっていった。
「経営者資本主義から投資家資本主義へ」
そういう、大転換英米圏で起こり、日本はこれを後追いしていると語られる。

 この大転換の目に見えた中身は語るまでもないだろう。企業から「金融市場への支払い」が、その「利益+減価償却」費用とされたキャッシュ・フロー全体に占める割合の急増。アメリカを例に取ると、1960年代前半がこの平均20%、70年代は30%、1984年以降は特に加速して1990年には75%に至ったとあった。
 彼らの忠実な番犬になりえた社長は彼らの「仲間」として莫大なボーナスをもらうが、「企業の社会的責任。特に従業員とその家族、地域への・・」などという考えの持ち主は、遺物になったのである。こうして、米(番犬)経営者の年収は、一般社員の何倍になったか。1980年には20~30倍であったものが、最近では彼の年金掛け金分を含んで475倍平均になっている。その内訳で最も多いのは、年当初の経営者契約の達成に関わるボーナス分である。全米の企業経営者がこうして、番犬ならぬ馬車馬と化したわけだ。

「証券文化」という表現には、以上全てが含意されてあるということだ。企業文化、社長論・労働者論、その「社会的責任」論、「地域貢献」論、「政治家とは」、「政府とは・・?」 「教育、大学とは、学者とは・・?」、そして、マスコミの風潮・・・。

 
 
(初出、当ブログ17年11月1日。あと3回ほど続けるつもりです。この書評から離れた内容も含めて。)
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