アフガン・イラク・北朝鮮と日本

黙って野垂れ死ぬな やられたらやり返せ 万国のプレカリアート団結せよ!

株価よりも国民生活の方が第一

2019年06月26日 18時03分33秒 | 貧乏人搾取の上に胡坐をかくな
 
 
先日、兄貴の家に遊びに行ったら、株式投資を勧められ売買実績のグラフや表も見せてもらった。兄貴は元銀行員で、脱サラ後はビデオ店を経営していたが、今はその店も畳み、株やFXへの投資で生計を立てている。それを聞いて、私も最初は「いつまでも働ける訳じゃないので、年金の穴埋めに自己責任で投資も有りかな」と思ったが、次第にバカらしくなって来た。
 
何故なら、ギャンブルで儲けるチャンスは誰にもある様に見えながら、実際にギャンブルに勝つのは資金力のある大金持ちに限られるからだ。確かに、数百年単位で考えれば経済発展に伴い必ず物価は上がるので、株価も上がり儲かる。しかし、その間には数百万円、数千万円の単位で株価変動の波がある。証券会社や機関投資家はその波を受けても次の株価上昇に備える事が出来るが、零細な個人投資家ではその波をしのぐ事は出来ず、資金ショートで破綻してしまう。
 
兄はまだ2500万からのストックがあるから次に備える事が出来るが、250万のポケットマネーしかない私がこんな物に手を出してしまったら、儲ける前に資金ショートで破産してしまう。競馬もギャンブルだが、まだ土日に数千円で馬券買うだけなので、仕事や趣味の合間に予想も立てられるのだ。ところが株取引は最低でも数十万円の元手がいる。実際は数百万単位で株の売買をする。ネットで売買するので毎日24時間、株価と睨めっこしなければならない。これでは依存症と同じだ。
 
国は公的年金の穴埋めに株や個人年金への投資を奨励しているが、国が損失を補填してくれる訳ではない。そもそも、国民を食わしていくのが国の仕事なのに、その責任を個人に丸投げして知らん顔では、「じゃあ何の為に国があるのか?」と言う事にしかならない。そんな無責任な国の姿勢こそ問題にしなければならないのに。そう考えると、何か株投資そのものがバカらしくなって来た。
 
 
現に経済評論家の荻原博子も言っているではないか。「年金だけでも暮らせます」(PHP新書)と。
 
確かに少子高齢化で年金財政が逼迫しているのは事実だが、それでも「腐っても鯛」。先進国で1億2千万もの人口を抱え、生産年齢人口もまだ6400万人以上いる日本で、そう簡単に年金制度が破綻する訳がない。もし日本の公的年金が破綻するなら、日本よりも更に人口が少なく、高齢化も進んでいる英・独・仏や北欧諸国は一体どうなる?もっと悲惨な事になっていなければいけない筈だ。
 
ところが、どこも日本みたいな大騒ぎにはなっていない。英国はかつて「揺りかごから墓場まで」と言われたほどの福祉国家だった。その後のサッチャー政権時代に大分骨抜きにされてしまったが。フランスも育児制度を充実させて少子化に歯止めをかける事に成功した。
 
翻って日本はどうか?折角、1961年に国民皆保険を実現しながら、長年に渡る自民党の悪政によって、福祉制度が骨抜きにされ続けた結果、「保険あって給付なし」とまで言われるようになってしまった。年金給付の伸び率を常に物価上昇率以下に抑えるマクロ経済スライド(注)の仕組みなぞ、その際たる物ではないか。
 
(注)マクロ経済スライドとは、ざっくり言うと次の様な物である。例として、ある年の物価上昇率1.0%、被保険者(将来の年金受給者)伸び率0.6%、平均余命の伸び率0.3%とすると、1.0−(0.6+0.3)=0.1%が、その年の年金給付額の伸び率となる。0.1%にも満たないマイナスの年は給付額は減らされず据え置きとなるが、次の年にプラスに転じる様なら、据え置かれた年の分も上乗せして差し引かれる。実際にはもっと複雑な計算式となるが、根底にある発想は上記の様なものである。(厚労省HP参照)
 
麻生が受け取りを拒否し、二階や菅がその存在すら無かった物にしようとしている例の年金報告書も、実際の中身は「認知症の老人にも投資させるにはどうしたら良いか」という事が臆面も無く書かれているトンデモな代物だ。報告書の6ページあたりに載っているので、少し長いが引用する。
 
 
「加齢とともに認知・判断能力が低下し、心身の機能が衰えていくことには個人差はあるものの誰にでも起こる現象である。これに起因する金融サービスにおける制限は多岐に渡るが、その一つに資産の管理が自由に行えない点が挙げられる。資金の自由な引き出しはもちろん、 これまで資産運用を行ってきた場合でも、認知・判断能力に問題があり、 本人意思が確認できないと判断された場合には一定の制限がかかりうる。
認知・判断能力に支障がある者や障害者の生活や財産を守ることを目的 とした制度の一つとして、成年後見制度がある。成年後見制度の利用は、同時期に制度がスタートした介護保険制度に比べると、 現状低調であるものの、国が策定した成年後見制度の利用を促進する計画に基づく 環境整備が進んでおり、認知症の人も含めて、今後、成年後見制度を利用する者が増加することが予想される。後述する個人の金融資産の大半を高齢者が保有する状況に鑑みれば、同制度の利用増加に伴い、同制度の枠組みに入る金融資産が大きく増加していくことが想定される中、これらをどう管理していく かは重要な課題の一つと言える。」
 
これが例の年金報告書の中で認知症患者に対する扱いに触れた部分だ。やんわりとオブラートに包んだ表現になっているが、「成年後見制度も活用して、認知症の人でも資産を引き出せるようにせよ」と、あからさまに書かれている。認知症老人を金づるとしか見ていない事がよく分かる。
 
 
国民を鴨ネギとしか思っていない安倍政権が、御用学者や金融業者に諮問して書かせた報告書なのだから当然だ。報告書の隠ぺいを図った政府も許せないが、報告書の中身も決して国民の側に立ったものではない事は、明確に抑えておく必要がある。
 
それでも、幾ら改ざんが得意な安倍政権でも、日本の総人口や生産年齢人口の数字まで誤魔化す訳にはいかない。少子高齢化自体はまぎれもない事実だ。それを国民本位に打開するにはどうすれば良いか?常識的に考えれば、欠陥戦闘機F35の爆買いや大企業優遇税制なぞ止めて、日本の福祉予算も西欧並みの比率に引き上げるしかないだろう。国民生活が上向いてこそ、初めて出生率も上がり景気も良くなるのだから。
 
ところが、安倍政権はそれをせずに、国民からもっと搾り取る事しか考えていない。その方向に沿って書かれたのが、あの報告書の中身だった。だから「成人後見制度も活用して、認知症の老人にも金融商品を売りつけろ」なんて中身になるのだ。それがバレそうになったので、大慌てで火消しに走っているのだ。
 
実は、過去に私も投資に失敗している。私だけでなく家族全員がその被害に被っている。兄貴がまだビデオ店を経営していた時に、商売で知り合いになったアダルトグッズ自販機業者に、自販機のオーナーになる様に誘われ、生協の退職金をそれにつぎ込んだのだ。最初の数年間は配当も順調に入って来て、出資した退職金の半分ぐらいは回収できた。ところが、風営法改正でラブホテルへの規制が強まり、自販機の設置もままならなくなる中で、自販機業者が夜逃げしてしまったのだ。
 
私の退職金なぞ大した額ではなかったので、数百万規模の損害で済んだが、親父や兄貴の損害はそんな物では済まなかった。幸い、自販機そのものはまだラブホテルの中に残っていた。そこで、兄貴はその責任を取る形で、夜逃げした業者に代わり、自分が直接経営に乗り出そうとしたが、ラブホテルにすっかり足元を見透かされてしまった。散々買い叩かれた挙句に、自販機も処分するしか無かった。
 
そういう事があったので、旨い儲け話にはもう一切乗らないようにしているのだ。株式投資も同様だ。幾ら堅いと言われる大企業の資産株でも、福島の原発事故みたいな事になれば、東電や東芝の株の様に、一晩で紙屑と化してしまうではないか。
 
また、経済的には幾ら優良株であっても、政府の悪政の為に、産業育成が阻まれ、逆に不良債権と化してしまう場合すらある。介護関連株がその典型だ。折角、少子高齢化で介護需要はあるのに、国が介護保険制度の充実を怠って来た為に、「保険あって介護なし」となり、低賃金で重労働の介護求人には誰も応募しなくなってしまったではないか。
 
本当に公的年金制度の存続を図るなら、単に少子高齢化に備えるだけでは不十分だ。制度の運用を見直す中で、制度設計も立て直さなければならない。しかし、安倍政権がそんな事をする筈がない。あいつらの頭の中は、「国民からいかに搾り取るか?」しか無いのだから。
 
そして、株式投資にもそんな変革の発想はない。勝ち馬に乗る事ばかり考え、「どの馬も生きていける様にするにはどうすれば良いか?」なんて事は一切考えない。競馬ならまだそれで良いだろう。しかし、国の政治や経済もそんな発想では、大多数の国民が飢え死にしてしまう。国民は競走馬ではない。たとえ「条件馬」や「未勝利馬」クラスの人間であっても、人間である以上、基本的人権があり、生活の営みがある。それを一部の支配者の都合で食い物にされて堪るか!

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