たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

「3.11石巻復興祈念ゼミ合宿」報告書からの引用(4)

2014年04月20日 14時57分42秒 | 東日本大震災
「向き合う、ということ Iさん


2014年4月15日からの続き

 夜まで話し込んではいたが、熟睡したせいか、それとも貰った元気のおかげか、さわやかに2日目は始まった。旅館らしい朝ご飯に、見慣れない肉。不思議な味だったが、聞けばクジラのベーコンだったそうだ。珍しいものをいただいた。夕食もそうだが、いかにも港、というものを出していただけるのは本当に嬉しかった。これまで学生の貧乏旅行ばかりの身であったから、これが心からのもてなしというものか、と何もかもありがたかった。今日は、安藤さんが自宅を中心に当時のことを語ってくれるという。海にも入れるそうだ。


 海パンを下に履いて、荷物をまとめる。2日目は別の民宿に移るのだ。次の宿は、被災地に新築したそうで、一か月前にオープンしたのだと言う。本当にピカピカの宿だった。最初はこちらの宿に2日という予定だったようで、その方が良かったかな、とも思いかけたが。それぞれの背景がある2つの宿に泊まれてラッキーだったと思い直した。どんなときでも得したと考えるのが僕のやり方だ。どちらの宿も本当に居心地が良かった。

 港から少し歩く。宿のある小さな丘を越えるようにして歩くと、隣の浜がすぐ見えた。リアス式海岸を足でも感じた。すると、安藤さんが足を止めた。「あれが、仮設住宅」少し奥まったところに、豆腐が並んだようにプレハブが見える。「あの家の壁、あの緑の線まで水がきたんだよね。」今下りてきた丘の中腹、しかもその2階を越える部分にその線はあった。全く色が違っていた。想像してまた、水の底に沈んでいるような気持ちになった。昨日からあれほど感じ入っていたはずなのに、それでも風景として眺めてしまっていた。遠くからでも傷は見えるだろうが、間近で、注意深く見なければその傷がどれほどか、何によるものかはわからないだろう。いわんや癒し方をや。そう考え、目を見開いて歩いた。」

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まだまだ続きます。