新国立美術館で2つの絵画展が開催されてる。実はセザンヌ展を見に行ったのだが、見終わったらエルミタージュ展もやっているので珍しい絵画展のはしごとなった。
セザンヌ展は「パリとプロバンス」という副題が付いているように初期から晩年までのセザンヌの絵の進展が見られ、初めて気がついたことも多かった。私のセザンヌ観はもっぱら晩年のエクサンプロバンスにおける風景画とくにセント・ヴィクトワール山の題材からのものと、静物画はリンゴやオレンジのものの印象が強かった。
今回、若い時代の人物画や静物画は画風にはこれといっった特徴は見られず、これは出資者である父親(セザンヌが画家になることに反対した)に理解できる絵を目指したからだろう。確かに、晩年と違って厚塗りの静物画は重厚で迫力があるが、晩年の静物画はまるで昨日描いたような新鮮差が目に飛び込んでくる。これは写真では判らない実物を見ていると不思議な感覚で、エクサンプロバンスのアトリエにいるかのような錯覚に陥る。アトリエの再現模型が設けられているせいかもしれないが
それにしてもよく世界中からセザンヌを集めたものだ。日本国内では鹿児島から山形の美術館、世界からはオルセーなどフランスからが多いがメトロポリタン、ボストン美術館などの作品もあり、多くの大企業スポンサーが付いただけのことはある。昨日、スカイツリーが開業したけどそこはいつかは行ける。しかしこれだけのセザンヌ展はこれっきりで、見逃せない。
エルミタージュ展は古典派のイタリア巨匠ティツィアーノに始まり、ルーベンス、レンブラント、モネ、ルノワール、セザンヌ、マティス、ピカソら83作家の作品、全89点、「まさに400年にわたる西欧絵画の歴史をたどる豪華ラインナップ」と自慢している。この中で売りは、マティスの最高傑作の一つである《赤い部屋(赤のハーモニー)》だ。企画展といえばいえないことは無いが一人一品といったメニューは何となく物足りない。ましてエルミタージュには日本人の好きな印象派の作品が山のようにある。ごっそり持ってくるとエルミタージュを訪れた人ががっかりするからこうした安易な企画になったのだろう。