政府も働き方改革と生産性向上を政策の重点に置いている。人口減少社会では生産性の向上無しにはGDP潜在成長率は0.5から1%に留まるだろうから政策自体は間違っていない。日本では製造業に比べ非製造業の生産性は近年低下してる。日本生産性本部によると1995~2015年の実質労働生産性(就業者1時間当たり)は製造業で74%増えた一方、非製造業では運輸・郵便業が9%減、宿泊・飲食サービス業が5%減、建設業が2%減とそれぞれ落ち込んでいる。非製造業は国内総生産(GDP)の約8割を占めることを考えると、焦点は非製造業ということになる。
平均賃金が40万円と高いスイスでの経験を紹介すると、スイスでは郵便配達に黄色の車体にホルンのマークを付けたバスを使っていて、どんな山奥でも1日1便はバスが有るわけで、ついでに人間も乗せてきた歴史がある。現在では郵便とは関係ない観光バスまで運行している。その観光バスで氷河巡りをした。ドライバーは運転をやりながら、英語でガイドをし、かつ参加者から料金(44フラン)を集金、さらに乗車記念グッズまで配るマルチワークには感心した。日本では長時間運転が問題になっているが、高生産性のドライバーの勤務形態はかなり余裕のあるものなのだろう。
欧州最大の滝と言われるラインの滝でも、遊覧船の船長は1人で、切符の販売から、ガイドまでしていた。つまり、生産性を上げるということは1人1人の労働者がマルチワークをこなせる教育を受け、意識付けが必要だ。
宿泊・飲食サービスでは日本のお持てなしを強調しているだけに、ITを駆使して目に見えないところで生産性を上げることが必要だ。間違えるとサービス低下に繋がる。ロボットを利用したホテルが登場しているが注目すべきトライだ。
マルチワークは日本の製造業が実施してきた生産性向上の主因だ。反対に欧米の工場ではマルチワークは伝統的に否定されてきたが、今では単純労働を克服する手段としてマルチワークが導入されている。日本ではこのところ日産、スバル、神鋼、東レと製造現場で品質管理面で不祥事を起こしている。納期短縮、原価低減等生産性向上をあまりにも強調しすぎたこともその一因ではないかと思う。