1ドル=129円へ急落、まさに歴史的な円安転換で大騒ぎとなっている。ここへ来て米国や欧州は金利を引き上げ、日銀は金融緩和を続けると宣言したことが直接の引き金になった。日本のエネルギーは輸入に頼っているのでガソリン、電力、ガス、だけでなく小麦粉、食用油などといった生活に直結するものの値段が上昇し、春闘での賃上げを帳消しにしてしまうことになる。
昔話になるが、私の現役時代1970年代から1995年ぐらいまでは日本経済は円高との闘いだった。
1971年8月15日、ニクソンショックで、金とドルがリンクした通貨体制(金・ドル本位制)を維持できなくなり、1ドル360円の時代はこの日に終わり、1ドル=360円→308円に円高、会社では激震が走った。やがて固定相場制は維持できず1973年に、先進国は相次いで変動相場制に切り替えた。
1985年、プラザ合意で1ドル235円から約20円下落し、1年後にはドルの価値はほぼ半減し150円台、その後日本は世界の製造業の中心としてドイツとともに歩み、貿易黒字は累積し、1994年には1ドル75円に急騰した。当時金属労協の事務局長として、輸出産業はダメージを受けるということで日経連の永野会長と村山首相へ空洞化対策を要望しに官邸を訪れたのを今でもはっきり覚えている。
円高の結果、予想どおり電機や自動車は海外へ製造拠点を展開し、グローバル化に拍車を賭けた。2021年の貿易収支は赤字となり、歴史的な円安への構造的な要因となっている。
初体験の円安対策としては海外生産を国内に切り替えるべく産業政策が必要となるが、労働人口の減少もあり、DXの利用や外国人労働者の導入も必要で、日本企業の頑張りが鍵を握っている。
年金生活者への影響は、物価の上昇の他、ユーロに対しても1ユーロ=138円と円安になり、海外旅行は割高になった。メリットとしては所有している米国や欧州関連の投信や株が円換算すると残高が増加することだ。