1980年代後半、私は原発から出る使用済み燃料など高レベル放射性廃棄物の処理に関する研究会の一員として、米国ネバタ砂漠のユッカマウンテンやスイスアルプスのグリムセルなどの実験施設を訪ねた。環境に如何に影響を与えないで放射性廃棄物を保管するかが大きなテーマだった。放射性物質が保管場所から万が一でも漏れることがあるとすれば、水によって外部に運ばれると考えられた。従って砂漠のように水のないところか、岩石や粘土で水を閉じ込められるところが保管場所の適地とされた。
一方、原発では水は原子炉の中で蒸気となりタービンを回す主役であり、緊急時には緊急冷却システムで原子炉を冷やす(今回これが働かなかった)。また水は放射線を遮るので使用済み燃料プールはホウ酸水で満たされ、かつ高温の使用済み燃料を一定期間冷却する。(今回これも作動しなかった)
ところが今回のように、燃料が溶解し、かつ高レベルの放射性物質が冷却水に混ざり、外部へ流れ出したとたんに水は悪役になる。こうなると原発内での水溜まりには放射性物質が混じっていると考えるのが普通で、先ずこうした水を漏れないタンクとかに隔離する作業が必要だ。タービン建屋での3人の作業員が被曝したが、水の中での作業をやらせた放射線管理者の責任が問われる。この労災は軽傷で済んでほっとしたが、何故起きたのかまだ釈然としない。普段の安全管理を愚直にやってほしい。
東京の水道でもヨウ素が検出されたが、これは原発では何回か水素爆発があり放射性微粒子が風に流され、雨水によって地上にもたらされたと推測できる。40歳以上なら、ヨウ素は飲んでも大丈夫と専門家が言っているので何もペットボトルの水を買う必要はないし、幼児用に給すべきだ。
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