行雲流水

阿島征夫、一生活者として、自由に現代の世相を評す。時には旅の記録や郷土東京の郊外昭島を紹介する。

ウィグルの悲劇

2009-07-10 11:51:57 | Weblog
新疆ウィグル自治区、ウルムチの暴動についての日本の新聞、テレビにおける報道ではウィグル人への弾圧に重点を置いたものが多い。しかし今回の犠牲者156人では漢民族も含まれており、その悲劇が昨日のニューヨークタイムスで概略次のように報じられている。

漢民族の新疆地区への移民は国家政策として奨励され行われてきた。1949年にはこの地方で6%だった漢民族は2000年には40%にまで増えた。こうした政府の奨励で貧しい河南省の農村から移り住んだある漢民族の一家が今回の悲劇にあった。仕事は果物や野菜を売ることで毎日屋台を引いて市場に通った。その市場で暴徒化したデモ隊に襲われ、逃げ遅れた一人息子が撲殺された。

こうした報道を見ると、私は日本のかつての満州政策を思い浮かべる。国家政策で貧しい農民が満州に渡り、敗戦後棄民の状態の中で塗炭の苦しみを味わった歴史だ。中国政府の資源確保という政策のもと、1990年代新疆だけでなくチベットにも漢民族が移民しているが地元民族との融和がおろそかにされ、新疆でも漢民族が来なかったら現在の発展はなかったなどと言っている。

自治区であるなら漢民族の数で圧倒するやり方は民族の対立を生み、上記のような悲劇を生むだけだ。中国発展の陰の部分で、その重要性を認識しているからこそサミットを欠席して急遽胡錦濤主席が帰国したのだろう。今の指導部で今回の暴動を力でなく、世界から指を指されることなく解決できるか注目したい。
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